auモメンタム」の回復には、スマートフォン拡大が鍵になる
「ようやくこの日を迎えることができた」──。日本マイクロソフトの樋口社長は、2011年7月27日に開催された、Windows Phone 7.5の発表会見でこう切り出した。
Windows Phone 7.5は「Mango」(マンゴー)の開発コード名で呼ばれていたもので、Windows Phone 7としては初めて、日本語対応したスマートフォン向けOSとなる。Mangoの開発コードネームは、リンゴ(Apple)よりも糖度が高いということで名付けられたと言われることからも明らかなように、iPhoneを強く意識したものであることが分かる。
Windows Phone 7.5を搭載した第1号端末は、富士通東芝モバイルコミュニケーションズが開発。KDDIおよび沖縄セルラー電話を通じて販売されることになる。
KDDIの田中孝司社長は「これまでは“Android au”というメッセージで展開してきただけに、Windows Phoneを投入する今後は、これをどうしようか迷っている」とジョークを飛ばしながら、「多くのユーザーに、スマートフォンを選ぶ楽しみを提供したい」と、Windows Phone 7によってスマートフォンのラインアップを拡大。これがauのスマートフォン事業の拡大につながるとみる。
KDDIは、2011年度第1四半期(2011年4~6月)に、66万台のスマートフォンを販売。「東日本震災の影響によって、一部機種で発売時期が後ろ倒しになったものの、それでも需要が集中する2010年度第4四半期(2011年1~3月)の61万台を超える販売台数を確保したことは大きな成果だといえる。第1四半期においては、販売した全端末台数に占めるスマートフォンの構成比は20%であるが、直近では4割程度にまで増加している。年間400万台、構成比33%という計画は、十分に達成可能な数字である」と、スマートフォンの販売が加速していることを示す。
さらに、「2011年度のauの課題は、『auモメンタム』の回復。そのためには、スマートフォンの拡大が重要なポイントになる」と語り、「重視しているKPIは、解約率、MNP、純増シェア、データARPUの4点。データARPUはスマートフォンが増加すれば回復する。また、スマートフォンの販売増加が解約率の低減につながっている」などとコメントする。まさに、スマートフォン事業の拡大が、auモメンタム回復の原動力となる。
同社では、Facebookとの協力や、定額制の音楽配信サービスであるLISMO unlimitedの開始、アプリケーション開発者に対する支援体制としてKDDI ∞ Laboを整備するなど、スマートフォンシフトを取り巻く環境整備にも余念がない。
Android auのプロモーション戦略の浸透もあり、スマートフォンにおけるブランドメイージも定着。HTC EVO WiMAXでは、WiMAXの利用デザリング機能が高い評価を得ており、54%のユーザーが新規購入となり、80%のユーザーがWiMAXを利用しているという新たな需要を創出している。さらに、INFOBAR A01では、女性の購入比率が55%を占めるというこれまでのスマートフォンには見られなかった結果も出ている。ここでも新たな需要層の獲得に成功している。
こうした動きに加えて、Windows Phoneでも新たな需要を創出できるスマートフォンになると期待しているのだ。
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