1週空いたが、バス技術について解説する4回目は、最近まで主流だった「PCI」系列をまとめて説明しよう。
インテル主導で作られたPCI Bus
規格化時期も商品戦略に左右される?
連載107回でも説明したとおり、EISAは当初期待されたほどは普及せず、また性能的にも不十分であった。その一方で、VL-Busは広く普及して性能も高かったものの安定性に著しく欠けており、長期的に使い続けるのは難しい状態だった。もっとも、こうなる可能性は当初からある程度予期されていた。
インテルはこうしたことに備えており、1990年ころから「ADL」(Architecture Development Lab。後にIntel Architecture Labに改称)で新しいバスを開発して、1991年に「Local Glueless Bus」として業界に提案した。Microchannel(MCA)での失敗を目の当たりにしていたためか、インテルはLocal Glueless Busを特許やライセンスで保護することはせずに、業界標準規格として提案した。
PCI規格化のために1992年に設立されたのが、「PCI-SIG」(Peripheral Component Interconnect Special Interest Group)である。以後の標準化作業はPCI-SIGに移管され、インテルのみならず主要な業界各社を交えて、仕様策定が進められることになった。
その最初の成果が、1992年6月に策定された「PCI Local Bus Revision 1.0」である。ちなみに本文では「PCI Bus」と表記しているが、正式な名称は最終版となるRevision 3.0まで、すべて「PCI Local Bus」である。
さてこのPCI 1.0だが、実は発表時点ではまだマザーボード上の内部バス、つまりチップセットと周辺回路などをつなぐバスとしてしか利用できず、拡張カードの仕様などは一切定まっていなかった。これらが定まるのは、翌1993年にリリースされた「Revision 2.0」からである。「どうせ10ヵ月なのだから、そこまで待てばいいのに」と思わなくもないのだが、このあたりの事情は製品動向に密接に関係していた。
インテルは1993年3月に、初のPCI対応チップセットである「Intel 430LX」をリリースした(関連記事)。だが、もしPCIの策定が1993年4月まで伸びていたら、このチップセットの投入が遅れることになってしまう。もちろん430LXには、PCI 2.0で策定されたものと「ほぼ同じ」拡張スロットを搭載していたし、バスプロトコルも一応PCI 2.0に「かなり近い」ものになっていた。それでも430LXそのものは「Revision 1.0準拠のPCI Busを搭載」となっており、実際1993年~1994年に市場投入されたPCIの拡張カードの中には動作しないものがあったりしたのは、致し方ないところか。
先に「主要な業界各社を交えて」とは書いたものの、その中でインテルが一番存在感が大きいのは間違いない。また標準化策定作業への貢献度も一番大きいわけだから、結果としてインテルチップセットにあわせるような標準化を急ぐ結果になったのも不思議ではない。
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