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MSより高信頼性、オラクルよりオープン、そしてVMwareより包括的!

3年半ぶりのRed Hat Enterprise Linux 6は、仮想化を強化

2010年11月17日 20時30分更新

文● 渡邉利和

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11月16日、レッドハットは「Red Hat Enterprise Linux 6」を発表、同日提供開始した。3年以上の年月と600人年もの開発工数を投入し、「あらゆる面を強化・改善」したという。

エンタープライズ向けの機能強化

 Red Hat Enterprise Linux 6では、Linuxカーネル2.6.32をベースに、2.6.33、2.6.34の機能を一部バックポートする形で実装している。製品体系の見直しも行なわれ、パッケージングがややシンプルになり、仮想化環境で活用する際には従来よりも安価になるような価格の見直しも行なわれた。

 製品バリエーションは、

  1. Server
  2. Desktop/Workstation
  3. HPC
  4. IBM Mainframe
  5. IBM Power

 の5種類が用意されるが、従来のような規模や機能によるサーバのバリエーションは用意されず、機能拡張はアドオンを導入して行なう形になった

 なお、現時点で用意されているアドオンは、「Scalable File System(XFS)」「Resilient Storage(GSF)」「Extended Update Support(18 month update lifecycle)」「High Availability(クラスタリング)」「Smart Management(RHNモジュール)」「Load Balancer(Network/Web Server)」「High Performance Network(RoCE)」の7種類がある。

 価格決定のパラメータは大きく3つで、「CPUソケットペア数(2、4、8)」「仮想化ゲスト数(1、4、無制限)」「サービスレベル(Standard、Premium)」のそれぞれから必要なレベルを選択することで価格が決まる。仮想化を利用しないベアメタルでの運用で、アドオンの追加もない場合の価格はRed Hat Enterprise Linux 5と同額の9万6800円に据え置かれている。一方、仮想化ゲスト数を無制限にした場合には23%、ベアメタル環境にクラスタリングのアドオンを追加した場合には24%、それぞれ以前に比べて価格が下がっている

仮想化関連では値下がりをしている

MSやオラクル、VMwareを超える高信頼、オープン、包括的

 同日行なわれた発表会で、まず概要説明を行なった同社の代表取締役の廣川 裕司氏は、Red Hat Enterprise Linux 6のキャッチフレーズとして“MORE RELIABLE THAN MICROSOFT”“MORE OPEN THAN ORACLE”“MORE COMPREHANSIVE THAN VMWARE”というメッセージを紹介した。「マイクロソフト(Windows Server)より信頼性が高い」「オラクルよりオープン」「VMwareより包括的」ということで、攻撃的なメッセージングとなっている。

レッドハットのメッセージを力説するレッドハット代表取締役の廣川 裕司氏

 製品の完成度に対する自信の表われか、同氏は次々と強気のメッセージを語った。たとえば、「Red HatはITの市場で“小さな巨人”になった」「仮想化のリーダーになった」「UNIXとメインフレームはもはやニットになった」「Red Hat Enterprise Linux 6はMicrosoft Windows Serverに真っ向から対抗する選択肢になった」といった具合だ。

廣川氏よって語られた事業方針

 IT市場における話題の中心がOSのレイヤから仮想化/クラウドに移行している状況をふまえてか、仮想化に関する言及も目立った。仮想化に関しては、Red Hat Enterprise Linux 6では遂にXenに対するサポートが打ち切られ、標準提供される仮想化プラットフォームはKVMに一本化されている。そのKVMにもさまざまな機能拡張が行なわれており、同氏は仮想化機能に関しても「VMwareをしのぐ」と語っている。

仮想化を中心に拡張性の向上

 続いて登壇した同社のマーケティング本部 部長の中井 雅也氏は、具体的な機能拡張のポイントについて紹介した。「あらゆる面を強化・改善」したと語られる通り、多岐に渡る機能強化が行なわれているが、仮想化技術を前提としたサーバ統合用途を想定した拡張性の向上が目立つ。前バージョンでは最大192CPUだったプロセッサ(コア)数は、理論上限値で4096CPUに拡張された

機能拡張のポイントを解説するレッドハット マーケティング本部 部長の中井 雅也氏

 ここで理論上限値といっているのは、実際にこれだけのコア数を単一サーバに集積したハードウェアがまだ市場に存在していないため未検証なことによる。ただ、現時点でもSGIのHPC向けシステムで実際にOSが認識するコア数として2048コアのシステムでの検証が行なわれているという。また、メモリ搭載量は前バージョンの最大1TBから理論上限値で64TBにファイルシステムは最大100TB(XFS/GFS、Ext4では16TBまで)にそれぞれ拡張されている。

 

Red Hat Enterprise Linux 6の位置づけとは

 また、仮想化環境でのQoS/SLA実現のための機能として、新たなリソース管理インターフェイス“cgroup”(Control Groups)が実装された。これは、プロセッサやメモリの割り当てに留まらず、ネットワークやストレージI/Oの帯域などに対しても利用可能な上限値を設定できる機能で、これによって重要なアプリケーションに十分な帯域を確保し、優先度の低いアプリケーションがリソースを使いすぎないように制限することが可能だ。

仮想化向けの機能が大幅に強化されている

 cgroupは内部的にはプロセス単位でリソース割り当てを制御する機構となっているため、KVMで仮想化されたOSインスタンス上で稼働するアプリケーションに対しても適切な制御が可能となっている。これは、KVMがLinuxカーネルに組み込まれた仮想化プラットフォームであり、ゲストOS上で稼働するアプリケーションもプロセスとして正しく認識できることによる。

 なお、仮想化プラットフォームにXenなどを利用した場合には、ゲストOS上のアプリケーションをホスト側からプロセスとして認識することができなくなる。cgroupによるリソース管理が実現できたのも、仮想化プラットフォームのサポートがKVMに一本化されたことで得られたメリットの1つだという。

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