搭載するべき機能は何か「消去法」で振り分けていく
製品開発はアイデアだけでは成り立たない。大きさや搭載すべき機能など仕様も考えなくてはいけない。
「まずサイズですが、あまり大きいといつでも持って歩けることができなくなってしまうし、小さすぎるとプチプチの数が少なくなりすぎる。飽きない病みつき感が欲しいから、材質はシリコンがよいだろう。ボタンを押したら他のゲームができるというのはどうかなど、ありとあらゆる可能性を考えました。つまり考えられるだけの案をひねり出して、後は搭載した方がよいものと、必要ないものを選別していきます。製品の詳細を決める過程では、この『消去法』で考えることが多いですね」
この方法で考えられたのが完成版の∞プチプチだ。ギミックとしては、100回ごとに「プチ!」以外の音が鳴る機能が残された。単純な遊びの中で、レア感のあるアクセントとなっている。
また、仕様で最大の悩みとなったのは、プチプチの一番のキモとなる押しつぶす感触だと言う。本来のプチプチは圧力をかけていくまでは軟らかく、最後に抵抗が大きくなって弾ける。シリコンの無垢だと、ボタンをクリックしているような味気ない感覚になってしまい、また中空のゴムでは軟らかすぎた。
「メーカーの担当者と、プチプチの感触をどうリアルに再現するか話し込んでいるうちに『ボタンを2重の構造にしたらどうか』という方向性が見えてきたんです。それで最初の軟らかい段階を受け持つ部分を外側に、『プチ!』と気持ちよく鳴るパーツをその中に入れることにしました。これで格段に感触を本物に近づけることができました」
すでに流行っているものでは、もう古い
前述のように∞プチプチのアイデアが出されたのは2006年の暮れごろ。そこから今年9月のリリースという開発期間は他製品に比べ短い方だったそうだ。通常、玩具のアイデアを出してから発売に至るまでは1年ほどかかるという。この時間の経過は玩具開発おいて非常に難しい点だと話す。
「現在売れている各社の製品の動向や知識、ヒット作の方向性を知ることは、開発者にとって最低限必要なことです。私も雑誌やテレビ、Webなどあらゆる媒体にアンテナをはり、おもしろい情報があればアイデアに取り入れたいと考えています。しかしすでにヒットしているものに乗ろうとすると、製品化される1年後には、そのアイデアはすっかり古くなってしまっている可能性が高く、製品の成功にはつながりません」
以前、テレビ番組『トリビアの泉』の「へえボタン」という玩具があった。この時は、開発者が番組が深夜帯だったころから目を付けて、商品化プロジェクトが走り出していたため、人気番組になったときにタイミングよくブレークしたと高橋さんは分析する。このように消費者が次に何を求めて、何が楽しいと感じ出すのかなどの「ちょっと先を読む力」を身に付けることが大切なのだ。
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