3DMark06&Unreal Tournament 3 Demo
次は3D描画性能のに及ぼす影響をチェックしてみよう。「3DMark06」は1280×10241設定のみ、「Unreal Tournament3」は、解像度を変更しつつ2つのマップでFlybyモードでのFPSを比較してみた。HT3.0が太くなれば、その分だけ多量のデータがグラフィックボード側に流れやすくなるはずだ。
実験の結果は少々残念なものになった。3.6GHzと4GHzの差は非常に小さく、誤差範囲であるともいえる。HT3.0が4GHzになったことよりも、単純に動作クロックが高くなったから速い、と考えるべきだろう。このテストでも「9900」とDDR2-1066は良好な結果を残している。
PCMark Vantage
最後にPCの総合的なベンチマークテストである「PCMark Vantage」でも比較してみたい。テストの分類は非常に細かいが、総合性能を見る「PCMark Suite」とメモリ性能を見る「Memories Suite」の2つをピックアップしている。なお、PCMark側の設定はデフォルトである。
HT3.0を3.6GHzに絞ると「9600」相当になるというこのテストの結果はやや理解に苦しむものがある。グラフィックボードよりもHDD等のI/O周りのアクセス時に差がつくということだろうか。とにもかくにも、4GHzに達したHT3.0にはアドバンテージを感じられる局面がある、と評価すべきだろう。
電力の豪快な食いっぷりに感動
では懸念される消費電力面をチェックしてみよう。予備検証でDDR2-800と1066モードで消費電力に意義のある差は見いだせなかったので、ここではDDR2-1066モードでのみの結果を示す。
テストは「Watt Checker」を使い、システム全体の消費電力で比較している。測定ポイントはCineBenchのMulti-CPU Renderingテスト実行時とアイドル時の2つ。また、BIOSレベルでCool'n'Quietを無効にした状態でもアイドル時の消費電力を測定している。
Cool'n'Quietを切るだけで60W近く跳ね上がるのも驚きだが、「9600」との電力差も非常に大きいことがわかる。クロックが300MHzしか違わないのにピークで60Wも違うのはどうかと思うかもしれないが、これはコアが4つあることを考えれば致し方ないところだ。もちろん製品版では改善されている可能性があるが、ES品を見るかぎりパワー性能比はあまり改善されていない感触だ。
発熱も……とっても凄いです!
さてここまで消費電力が高いと、一体どの程度の熱を持つのかが気になる。本来は製品版「9900」に付属するリテールクーラーでテストすべきだが、ES品だけにクーラーは用意されなかった。そこで、あえて「9600」のクーラーを使い、9600と同じ環境に置いた場合どの程度発熱するようになったかを比較することにした。
消費電力テストと同じ条件でテストしたのが下のグラフだ。温度測定にはマザー付属の「ASUS PC Probe II」を使い、CineBenchテスト終了時の温度と、テスト終了から10分放置した状態の温度を計測している。なお、このテストでは外部からの強制冷却は停止している。
ご覧の通り、「9900」に「9600」のアルミ製ヒートシンクの組み合わせでは、高負荷時に70℃近くまで上がる。テスト中盤からは60℃超えのアラートが出まくるのは流石に怖い……。Cool'n'Quietを切った途端に14℃上がるのも凄い話だ。
まあ、最近は低TDPを武器にしたCPUが増えたおかげで、オーバークロックでもしない限り“いかにして冷やすか”を考える事が少なくなってきた。その意味では「9900」は久々に“冷え”に対する情熱をかきたててくれるCPUになった……と好意的に解釈しておきたい。もっとも、製品版の「9900」にはTDPの上昇に合わせた高性能クーラーが添付されるだろうから、そんな事はあまり考えなくてもいいのかもしれないが……。
Spiderの売りはドコへ行った?
パフォーマンス志向ユーザーに向けたクアッドコアCPUとしては、「9900」になってようやく評価できる性能に達したといえるだろう。HT3.0の速度アップによる性能向上は極めて限定的である点は少々残念だが、スペックアップは単純に嬉しいものだ。
だが、消費電力や発熱の大きさを考えると、評価はプラマイゼロになるだろう。元々SpiderプラットフォームはCPUからGPUに至るまで「パワー性能比」が売りの1つだったはず。高クロック化による消費電力等の増大は避けられないものだが、先のテスト結果を見る限り、強引に高クロック動作にして出してみましたという感じが否めない。
この状態はステッピングがB3になれば改善するのか、それとも45nmプロセスの「Deneb」コアになるまで改善しないのかは定かではないが、少なくとも今のままでは「Phenom 9900」は“AMDファンのためのハイエンドCPU”という位置づけになりそうだ。我々の欲しいのは、そんなニッチなモノではなく、もっとAMDイズムを感じさせてくれるCPUなのではないか?
ではPhenomはもうダメか? と言われればNOだ。Denebコアにも期待したいし、コア数を減らしたPhenomがコストパフォーマンス面で勝利! というシナリオも残されている。まだまだPhenomからは目が離せないのだ。
今回検証した「Phenom 9900」はあくまでもエンジニアサンプル品。製品版の「Phenom 9900」が発売され、それに最適化したBIOSがアップデートされれば、さらなるパフォーマンスアップが期待できるかもしれない。Phenomを使おうかなと考えるユーザー予備軍もワクワクするような、AMDの来年の奮闘に期待したい。
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