MS「Surface Go」日本だけ高く

文●盛田 諒(Ryo Morita)

2018年07月11日 18時00分

 「いや、いいんですけど、値段ですよねぇ……」

 PC/IT業界に長いジャーナリストはそう残念がった。日本マイクロソフトが11日に開催した、同社の2in1パソコンSurfaceシリーズ新製品「Surface Go」発表会でのことだ。Surface Goは重さ522g、薄さ8.3mmというシリーズ最薄最軽量にあたる10型のコンパクトモデル。日本では8月28日に発売する。

 小さなパソコンは日本人好みだ。

 同社でも日本はSurface Goにとってとくに重要な市場という位置づけで、発表会を開催したのも日本だけだった。同社代表取締役の平野拓也社長は製品の出来に自信を見せ、「昨年は正直かなり右肩上がりにきた」というSurfaceの販売において「去年の1.5倍にあたる50%増しの売上をめざす」と息巻いていた。

 ただし発表されたSurface Goの市場想定価格は一般向けが6万4800円からだった(教育向けは4万7800円から、企業向けは5万2800円から)。米マイクロソフトは前日、北米などでの一般向け市場想定価格を399ドル(約4万4300円)からと発表していたため「なぜ日本だけ高いの?」と疑問がられた。

 同社は値つけの根拠の1つに、日本だけ「Office Home & Business 2016」をプリインストールしていることをあげた。Surface Goのキャッチコピーは「Surfaceの特長はそのままにより薄く軽く」。小さなSurfaceでも、日本人が買ってすぐExcelやPowerPointを使えるようにしたという配慮のようだ。

■モデルのちがいは用途のちがい

 Surface Goは一般消費者・現場作業者・教育関係者をターゲットとした入門層向けの製品だ。ラインナップは「メモリー4GB/ストレージ64GB」の通常モデル、1万8000円差の「メモリー8GB/ストレージ128GB」の2種類がある。

 容量のちがいは処理内容だ。説明員によると4GB/64GBは主に現場作業者(ファーストラインワーカー)や小学生・中学生など、単一のアプリを主に使う利用者向け。8GB/128GBは会社員(オフィスワーカー)や高校生・大学生など、複数のアプリを同時に使う利用者向けだ。なお4GB/64GBモデルのストレージには、一般にSSDより消費電力が低い代わりにデータ転送速度が劣るeMMCを使っている。

 CPUはモバイル向けのIntel Pentium Gold 4415Y(1.6GHz)。液晶画面は解像度1800×1200ドット(217ppi)、アスペクト比3:2のPixelSenseディスプレイ。ガラスは堅牢なゴリラガラスだ。バッテリーは9時間駆動。フロントカメラは5メガピクセル、リアカメラは8メガピクセル。インターフェースにはUSB-C端子、3.5mmイヤフォン端子、microSDXCカードリーダー、専用端子のSurface Connectを備える。ペン入力には上位機Surface Pro用のペンが使える。Surface Go専用のキーボードカバー、マウスも用意した(いずれも別売)。年末にはLTEモデルも発売する予定という。

 キーボードカバーとマウスはSurface Goのために新開発した。キーボードカバーは従来とおなじペコペコとした触感をそのままに小型化したもの。キーピッチは16mmで、手がそれほど大きくなければふつうに打ちやすい。

■Surface GoはiPadに対抗できるのか

 Surface Goは発表時アップルiPadの対抗機とみなされた。実際発表会場にiPadを持ちこみ、サイズ感を比較している人も見かけた。

 iPadとのちがいはOSだ。iPadはパソコンとOSがちがうが、Surface GoはパソコンでもタブレットでもおなじWindows 10が使えるため、データを移したり、おなじアプリケーションを使ったりという点で利便性がいい(ただし出荷時はモバイル向けのWindows 10 Home Sモードをプリインストール。通常のWindows 10 Homeに無償アップグレードできる)。拡張性も大きなちがいだ。iPadにはUSB端子もなければSDカードリーダーもなく、プリンターをつなぐのも一苦労だ。

 その上399ドル(約4万4300円)で買えるなら、税抜き6万9800円のiPad Pro 10.5型と比べても十分勝機があるのはないかという論調もあった。だがいざフタを開けると、価格差は大きくひらかなかった。あえてクラウド型のOffice365ではなくソフトをプリインストールする形をとったのは日本市場で長らくOfficeつきパソコンが受け入れられてきたからだろう。しかし価格のインパクトを保つためには直販限定でも「Officeなし」を用意すべきだったのではないか。

 企業向け、教育向けはともかく、一般向けの価格が「北米3割増し」でも「日本で売上5割増し」は狙えるか、同社の販売力が試される。



書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。赤ちゃんの父をやっています。育児コラム「男子育休に入る」連載。Facebookでおたより募集中

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