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エヌアセットが街づくりの一環として取り組むシェアオフィス「nokutica」

“怪しい空き家”を人が集う街のランドマークにリノベ、川崎市・溝の口から始める挑戦

2024年01月10日 10時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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nokuticaを“溝の口から始める”“溝の口から発信する”場所に

 現在のnokuticaは、平日はオフィス利用を中心に20~30人、また休日はコーヒースタンドを目当てに40~50人が訪れる場所になっている。レトロモダンな建物の風合いを生かし、レンタルスペースはハンドメイド作品の展示やワークショップなどのイベント、アパレルメーカーの撮影などに使われているという。

 基本的には受付スタッフが常駐しているが、シェアオフィス施設なので契約利用者は365日、いつでも出入りできるようにしたい。また、コワーキングスペースではドロップイン利用(一時利用)のほか、早朝や夜間だけ、あるいは土日祝日だけ利用したいというニーズにも対応したい。そこで採用されたのがスマートロックのAkerunだった。

 nokuticaでは、施設利用者をグループ分けしたり、利用プランに応じて全日だけでなく早朝/夜間だけ、あるいは土日祝日だけ入館可能にしたりするといった、細かな権限設定が必要だった。山下さんは「ほかのスマートロック製品も検討しましたが、われわれが望む使い方ができたのはAkerunだけでした」と語る。

nokutica 溝の口のシェアオフィス

契約利用者はスマートフォンアプリやICカードで解錠、入館できる

 ちなみにエヌアセットでは、nokuticaの立ち上げに合わせて、システム会社と共同でコワーキングスペースの顧客管理システムを開発している。このシステムとAkerunをAPI連携させることで、オンライン決済したドロップイン利用者にはワンタイムパスワードを付与して、鍵の運用管理を自動化、無人化している。

* * *

 エヌアセットでは、nokuticaの運営で培ったノウハウをベースに2020年、溝の口に新たなシェア型複合施設「one(ワン)」をオープンさせた。こちらはレンタルオフィスやコワーキングスペースだけでなく、貸し会議室やパブリックスペース、食堂などを備え、より多くの地域住民が立ち寄れる施設となっている。さらに、新たな個室タイプのレンタルオフィス施設も現在計画中だという。

 「nokutica」という施設名は、溝の口の愛称「ノクチ」から取られている。街の人が集い、交流が進むことで“溝の口から始める”“溝の口から発信する”場所にしたい、そういう思いが込められているという。

 山下さんは、nokuticaのシェアオフィス事業そのもので得られる利益はわずかだと明かす。土地の収益性だけを考えれば、古い建物を取り壊してマンションに建て替えてしまうほうがはるかに利益が上がるはずだ。ただし、それが街全体としての魅力につながるかどうか、中長期的に見て利益をもたらすのかどうかは別の話である。“街づくりの最適解”はそう単純ではない。

nokutica 溝の口のシェアオフィス

 冒頭に挙げたコメントにもあるとおり、エヌアセットでは溝の口で実践してきた街づくりのモデルを、空き家問題や遊休不動産活用で悩む全国の地方都市に広げ、日本全体の活性化につなげたいと考えている。エヌアセット自身が全国展開するのではなく、各地で地域に密着した事業活動をする企業と“横のネットワーク”を作っていく方針だと、山下さんは語った。

 「われわれの本業は不動産ですから、良好な住環境をご提供するのは当然のミッションです。ただしそれだけでなく、街に人を集める、街に働く場所を増やす、街で頑張っている人を応援する、そうした取り組みも進めていく。実際、nokuticaのオフィスで働いている方の半数以上は、溝の口の外からここに来ていただいているので、そういう意味でも街に貢献できているのかなと考えています」

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