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エヌアセットが街づくりの一環として取り組むシェアオフィス「nokutica」

“怪しい空き家”を人が集う街のランドマークにリノベ、川崎市・溝の口から始める挑戦

2024年01月10日 10時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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“怪しい空き家”だった洋館をリノベーション、人気のシェアオフィスに

 nokuticaで展開しているシェアオフィス運営も、こうした「街の価値を高める」取り組みの一環と位置付けられている。地元・溝の口の次世代不動産オーナーと共に、エヌアセットグループの新会社「のくちのたね」を立ち上げ、空き家や古民家の再生を通じて溝の口や高津区の価値向上を図っていく、その第1弾プロジェクトとなる。

 そもそもは、現在nokuticaになっている建物のオーナーから、遊休不動産の活用について相談を受けたことがきっかけだったという。相談当時、この建物は利用されておらず「言い方は悪いですが、高いブロック塀に囲われた“怪しい空き家”でした」と山下さんは笑う。ただし建物の造りとしてはしっかりしており、レトロモダンな内装の質感も良かった。

 マンションへの建て替えなどもすぐには考えていないというオーナーの意向を受け、エヌアセットから提案したのが、建物のリノベーションを行い、人が集まる街のランドマークとして活用することだった。オーナーとひとまず10年間の賃貸契約を結び、nokuticaのプロジェクトがスタートした。

nokutica 溝の口のシェアオフィス

nokuticaプロジェクトの狙い。不動産の収益性だけを考えるとマンションへの建て替えが最適解かもしれないが、“街づくりの最適解”はそれだけではない

 なぜシェアオフィスとして活用することにしたのか。山下さんは、溝の口でもシェアオフィス/コワーキングスペースの「需要」が生まれていたものの、「供給」がなかったためだと説明する。

 「当時、都心部ではコワーキングスペースが増え始めていましたが、溝の口にはまだ1つもありませんでした。(溝の口を拠点とする)フリーランスの方にどこでお仕事をされているか聞いてみたところ、自宅やカフェ、あるいはわざわざ時間をかけて渋谷や三軒茶屋のコワーキングスペースまで出かけていると。そういうお話を聞いたタイミングだったので、やってみようということになりました」

 ただし当時の不動産業界では、不特定多数の利用者に場所を時間貸しするコワーキングスペースの発想が浸透しておらず、エヌアセットにも運用ノウハウはなかった。そのため「すべて手探りで始めることになりました」と、山下さんは振り返る。

 ちなみに、建物の活用プランとして最初に決まったのは「エントランスにスタンドコーヒー店を誘致すること」だったという。「人がふらっと立ち寄って、ゆっくり時間を過ごせる場所にしたい。そう考えたときにコーヒー屋さんのイメージが浮かびました」(山下さん)。知り合いをたどったところ、「いつかコーヒー店を始めたい」と考えていた女性が見つかり、その女性は勤めていた会社を辞めてnokuticaでコーヒー店「二坪喫茶 アベコーヒー」を起業することになった。

 そのほか、溝の口を拠点に活動する会社やフリーランサーに声をかけて、レンタルオフィスやコワーキングスペースの利用を増やしていった。現在、個室タイプのレンタルオフィスは満室で、「個室の空きができたら入居したい、というキャンセル待ちのお客様が10組以上います」(山下さん)という人気ぶりだ。

nokutica 溝の口のシェアオフィス
nokutica 溝の口のシェアオフィス
nokutica 溝の口のシェアオフィス
nokutica 溝の口のシェアオフィス

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