ビジネスモデルは「サブスク」と「ライセンス」の2本軸?
問題はStability AIが、SDXLでどうやって儲けていくのかということですね。昨年10月に1億100万ドル(約140億円)の資金調達をした後、追加の資金調達に苦戦しており、6月に2500万ドル(約30億円)未満の転換社債を発行したと報じられています。
1つあるのはサブスクリプションです。SDXLが対抗馬として意識したのはMidjourney。オープンソースタイプにもかかわらずほぼ互角に戦えることを目指しており、技術レポートでは互角に達したとしています。
日本では意外に感じるかもしれませんが、アメリカのGoogleトレンドを見ると、関心度としてはMidjourneyの方が上なんです。ローカル環境のユーザーが多い日本ではStable Diffusionが人気なんですが、アメリカではクラウドのほうがコストが低く、高品質な画像が出るということもあってか、Midjourneyのほうが人気を集めています。
そう考えるとStable AIの最新のStable DiffusionモデルをDream Studioのようなサブスクリプションモデルに誘導したいという気持ちがあるのではないかと思います。SDXLは標準的な動作環境がNVIDIA GeForce RTX 20シリーズ以上、ビデオメモリーも8GB以上というかなり厳しい仕様なので、SDXLが使えるならお金を払ってクラウドサービスを使ったほうがいいと考えるユーザーも出てくるんじゃないかということですね。ただ、現状は10ポンド(約1400円)で約1000枚のプランしかないので、月額30ドルで使い放題のプランも用意しているMidjourneyに比べると見劣りする面もあります。こうした面の改善があるかは注目です。
もう1つは企業に対してライセンスを出していくのかなというところです。SDXLは積極的に他社との提携を進めているようです。
たとえばAI動画生成サービスのピカラボ(Pika Labs)は、SDXLを使った動画を生成していますが、Stablity AI社から技術提供を受けて共同制作をしているようなんですね。
Hi Pika pals,
— Pika Chu (@pika_labs) July 11, 2023
we received so much love in the past week that we decided to activate our Twitter account and talk to more friends! 🩷
We'd like to proudly announce our new feature: image-conditioned video generation. You can now upload an image, and the model will animate the… pic.twitter.com/mu7QBlGAOy
こうした生成AIの動画生成は大きく成長が始まっている分野ですが、これをローカルでやろうとすると計算パワーをすさまじく食い、20秒程度の動画を作るだけでも2時間はかかるため、なかなか一般人には手が出ないと思います。そうなればローカルのPCでは生成が難しいので、クラウドに課金させる形でSDXLの採用を進めることで、収益を分配するようなビジネスモデルにしたいんじゃないかと。
ただ、今のところオープンソースであるがゆえに、多くのユーザーは無料で構築できる環境に流れてしまい、Stability AIは確実な収益源を持っていないため、ビジネスモデルは不安定です。
この連載の記事
-
第67回
AI
アドビの画像生成AI機能がまた進化 白黒3Dモデルがリアルな都市に -
第66回
AI
有名人そっくり、増え続けるAI音声 “声の権利”どう守る -
第65回
AI
画像生成AIに照明革命 日本と世界で同時に“神ツール”登場 -
第64回
AI
自分好みのAIチャット相手を簡単に作れる「Dify」が面白い -
第63回
AI
まるで“いけない話ができるChatGPT” ローカルAI「Command R+」の爆発的な可能性 -
第62回
AI
動画生成AI、映像制作の“民主化”目指して研究進む -
第61回
AI
画像生成AI“児童ポルノ”学習問題、日本では表現規制の議論にも -
第60回
AI
3Dアニメーション技術の革新が止まらない -
第59回
AI
政府、生成AI推進に向けて議論を加速 -
第58回
AI
画像生成AIで同じキャラクターが簡単に作れるようになってきた -
第57回
AI
日本発のリアルタイム画像生成AIサービスが熱い 大手にとっては“イノベーションのジレンマ”に - この連載の一覧へ