まだ終わっていなかったOptane Memory
Optane Persistent Memory 300
連載678回で、Optaneビジネスが終焉という話をしており、これはおおむね間違いではないのだが、1つだけあった例外がOptane Persistent Memory(PMem)である。
「Optane Memory事業の縮小にも関わらず、既存の顧客との契約は継続される見込みである」とあったわけだが、この対象はすでに投入されているPMem 200シリーズだけでなく、これに続くPMem 300シリーズにも適用される、というのは少しだけ驚いた。
この300シリーズはもともとPMemだけではなくCXL向けにも提供予定だったわけだが、こちらはおそらくキャンセルである。
なぜか? というと簡単で、すでにPMemに対応したアプリケーションが多数存在しており、顧客も多数利用している。したがってSapphire RapidsでもPMemに対応させないと、こうした顧客をSapphire Rapidsに移行できないためだ。
実際のところPmemとCXLはほぼ同じ機能を提供できるが、例えばメモリーマッピングのアドレスであるとか操作のためのI/Fはまったく異なる。あるいはCXLではホットスワップや動的なメモリーの追加/削減などが可能だが、これはPMemではできないことである。
あるいはスループットやレイテンシーなどが異なるため、既存のPMemに対応したアプリケーションは、CXLに対応するための作業時間がしばらく必要であり、今すぐPMemの代わりにCXLメモリーというわけにはいかない。したがって、短期的にPMem 300を提供して時間を稼ぎ、その間にアプリケーションをPMemからCXLメモリーに移行するといった対応になると考えられる。
要するにPMem 400シリーズは、今のところ考えていないと思われる。おそらくこの300シリーズがPMemの最後の製品となるだろう。
これに絡むのが、CXL 1.1でのType 3 Deviceの未サポート問題だ。CXLには3種類のプロトコル(CXL.io、CXL.cache、CXL.memory)があるが、それぞれ必要なプロトコルとされている。
Type 1 Device(NICなど):CXL.io
Type 2 Device(FPGAやアクセラレーター):CXL.io/CXL.cache/CXL.memory
Type 3 Device(メモリー):CXL.io/CXL.memory
Type 2 Deviceをサポートしているのであれば、Type 3 Deviceをサポートできない技術的な理由がわからない。これについては直接質問したところ「技術的には動くはずだ。ただ市場には(検証の済んだ)Type 3 Deviceが存在しないので、検証できない。そのためサポートから外した」(Senior FellowのRonak Singhal氏)という返ことだった。
ただこれもやや無理があるというか、現実問題としてSamsungなどは昨年製品を出荷しているし、SK HynixやMicronもサンプルをリリースしている現状では、言い訳でしかない。現実的な理由は、ここでCXL Memoryをサポートしてしまうと、PMem 300シリーズと思いっきりバッティングするためだろう。
おそらくCXLメモリーは次のEmerald Rapidsの世代で公式にサポートが表明され、その頃には現在PMem対応を謳っているアプリケーションのCXLメモリーへの移行計画が明らかになっているといった具合に収束していくものと思われる。
![](/img/blank.gif)
この連載の記事
-
第776回
PC
COMPUTEXで判明したZen 5以降のプロセッサー戦略 AMD CPU/GPUロードマップ -
第775回
PC
安定した転送速度を確保できたSCSI 消え去ったI/F史 -
第774回
PC
日本の半導体メーカーが開発協力に名乗りを上げた次世代Esperanto ET-SoC AIプロセッサーの昨今 -
第773回
PC
Sound Blasterが普及に大きく貢献したGame Port 消え去ったI/F史 -
第772回
PC
スーパーコンピューターの系譜 本格稼働で大きく性能を伸ばしたAuroraだが世界一には届かなかった -
第771回
PC
277もの特許を使用して標準化した高速シリアルバスIEEE 1394 消え去ったI/F史 -
第770回
PC
キーボードとマウスをつなぐDINおよびPS/2コネクター 消え去ったI/F史 -
第769回
PC
HDDのコントローラーとI/Fを一体化して爆発的に普及したIDE 消え去ったI/F史 -
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ - この連載の一覧へ