少し間が空いてしまったが、消え去ったI/F史の今回の話はIDEである。IDEの生みの親はConner Peripheralsであり、同社のCP341が最初のIDEを利用した製品である。
Conner氏が開発したI/Fを
COMPAQが採用して業界標準に
Conner Peripheralは連載374回で取り上げたが、簡単に説明するとSeagate Technology創業者の1人であるFinis F. Conner氏がSeagateを退社後に立ち上げたConner Peripheralsで3.5インチHDDを開発する。
この際にHDDのコントローラーとI/Fを一体化したものを開発。これのプロトタイプをCOMPAQに持ち込んだところ直ちに採用が決まり、大量出荷が始まった。競合メーカーも互換製品を製造、結果的に業界標準になったというものだ。
ちなみにConnerがIDEのプロトタイプをCOMPAQに持ち込んだのは1986年頃で、1987年にConnerが出荷したHDDの9割はCOMPAQが買い取っている。とはいえ、まだ従来のST-506 I/Fやその改良型のESDIのI/Fを搭載した製品も少なくはなかった。
下の画像はPC Magazine 1990年5月15日号に掲載されたHARD DRIVE Internationalというショップの広告であるが、まださまざまな方式のHDDが販売されていたのがわかる。ただ筆者の記憶で言えば、1992年頃からはもうHDDと言えばIDEとSCSIがメインで、ST-506やESDIのHDDは入手不能とまでは言わないまでも、かなり数を減らしていたように思う。
さて、IDEはIntegrated Drive Electronicsの略である。SASIやST-506、ESDIといったI/Fは、ホストとのI/FとHDDのコントローラーは別々になっており基板が2つ必要だった。これを簡単化し、1つの基板でホストとのI/FとHDDのコントローラーをまかなえるようにしたので"Integrated"という名前がついたわけだ。
ちなみにSCSIは最後までホストとの接続のためのI/Fに留まっており、HDDなどのコントロールは別の制御基板が必要になっている。それに比べて安価に実装できる、というのがIDEの売りだったわけだ。これを実現するために、IDEでは本来HDDのコントローラーが担っていた処理を、一部バスプロトコルに持ち込んだ。それがCHSと呼ばれる場所指定の方式である。
前回のSASIの時も少し書いたが、SASIやSCSIはバスプロトコルには「どんなデータを流すかは一切関与していない」。したがって「HDDのどこからどういうふうにデータを読み出すか、あるいはデータを書き込むか」に関しては、そのSASIなりSCSIの上位プロトコルで解決していた。
要するにコントローラーに対してホストから「HDDのここからこういう具合に読み/書きせよ」と命令を送る形になっていた。
これに対してIDEでは、当初からCHS(Cylinder/Head/Sector)というパラメータを送る仕組みや、明示的にRead/Writeのコマンド、さらに転送速度などがバスプロトコルに組み込まれた。IDEの配線は下表のとおり。
40本の配線をフラットケーブルで接続するという形になっている。うちPin 20は逆挿し防止のキーになっており、冒頭の画像でもここだけピンがないのがわかる。データ幅は16bitで、当初のサイクルタイムは600ナノ秒ほど。つまり3.3MB/秒であった。これはのちにPIO Model 0と定義される。
ちなみに上の表は、当初Connerが策定したIDEの仕様そのものではなく、続くATA-1として標準化される予定のモノである。なにが違うか? というと、当初の仕様にはDMA転送が含まれていない。DMA REQUESTやDMA ACKNOWLEDGEの信号は、後で追加されたものである(HOST 16 BIT I/Oも怪しいが、これが当初の仕様にあったかどうかは確認できなかった)。
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