ハードウェアにおけるコア事業と成長事業
残ったハードウェア事業は、プロセスオートメーション、メディアエンターテインメント、アビオニクス、モバイルソリューションズの4つである。
「ハードウェアは、基本的にはコモディティ化のリスクがある。それを前提に徹底的に議論した結果、アジアの新興国との直接対決や力の勝負をしない分野、参入障壁を築ける分野、日本の企業としてハードウェアを研ぎ澄ませていける分野に絞った。それがこの4つの事業であった」とし、「EBITDAが常に10%以上か、10%を狙うことができる事業である。4つの分野では、徹底的にハードウェアを磨き、オペレーションエクセレントを追求する。これ以外のハードウェアはやらない」と言い切る。
パナソニック コネクトでは、これを「コア事業」と位置づける。
コア事業とともに両輪を担うのが、「成長事業」だ。ここでは、Blue Yonder単体での事業成長、Blue Yonderとパナソニックのシナジー創出、現場ソリューションカンパニーの3つに取り組む。成長事業には、経営資源を集中投下し、Blue Yonderの機能を強化、補完するためのM&Aも視野に入れる。
Blue Yonderでは、中核となるLuminate Platformの進化により、業務特化型、業務横断型のソリューションを強化。約7割という高いリカーリング率を生かし、2024年度には、SaaSの年間経常収益で10億ドル以上を目指す。すでに、パナソニックが持つセンシングテクノロジーとの組み合わせなどによる約60のユースケースを特定しており、2022年度には、このなかから2つのユースケースにフォーカスして、ソリューション化を行うという。また、2023年度以降には、パナソニック全社へのBlue Yonderの本格導入を行う計画であり、「日本では、サプライチェーン分野における標準ソフトウェアの導入はこれからである。パナソニック自身が、Blue Yonderのショーケースとなり、パナソニックが持つ顧客基盤、人材、インフラ、ブランドを総動員して、日本におけるBlue Yonderのビジネスを推進していく」と意気込む。樋口氏自らがBlue Yonderジャパンの代表取締役会長を兼務し、日本市場開拓の陣頭指揮を執る。
大リーグボール養成ギブスを脱ぎ、筋肉質な身体を
新会社になった様子を、樋口社長兼CEOは、「大リーグボール養成ギプスを脱いだ状態」と比喩する。大リーグボール養成ギプスは、漫画「巨人の星」の主人公である星飛雄馬が、身体を鍛えるために幼少期に装着していたもので、その後、魔球と言われる「大リーグボール」の誕生につながっている。
5年間に渡る企業改革で、筋肉質な体質になったパナソニック コネクトが、新会社となり、どんな魔球を投げるのか。その進化が楽しみだ。
この連載の記事
-
第594回
ビジネス
自動車工業会は、今年もJapan Mobility Showを開催、前身は東京モーターショー -
第593回
ビジネス
赤字が続くJDI、頼みの綱は次世代有機EL「eLEAP」、ついに量産へ -
第592回
ビジネス
まずは現場を知ること、人事部門出身の社長が続くダイキン -
第591回
ビジネス
シャープが堺のディスプレーパネル生産を停止、2期連続の赤字受け -
第590回
ビジネス
生成AIに3000億円投資の日立、成長機会なのか? -
第589回
ビジネス
三菱電機が標ぼうする「サステナビリティ経営」、トレードオフからトレードオンへ -
第588回
ビジネス
富士通の子会社でDX専門のコンサルティングをするRidgelinez -
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? - この連載の一覧へ