業務を変えるkintoneユーザー事例 第127回
kintoneは「積極的な人生を支援するプラットフォーム」
コロナ禍で大打撃の製氷工場 kintoneでピンチをチャンスに変えた
2021年12月01日 09時00分更新
「kintone hive Nagoya」では、中堅中小企業や小規模組織にも広く浸透するkintoneの導入事例が紹介された。中勢製氷冷蔵もその1社だ。飲食店やイベントの中止で大きなダメージをコロナ禍をバネに、改革を断行。働き方を変えるべくパートナーの協力を得て導入したのがkintoneだ。
コロナ禍で次の成長のため改革を断行
三重県に本社と工場を持ち、中部や関西圏に製氷した氷を出荷している。3代目の現社長である長野浩也氏は、現在49歳。新卒で同社に入社したわけではなく、当初は地元のスーパーで働いた。その後、27歳で同社に合流し、当初家族経営で業績が行き詰まっていた同社を建て直し、長野氏が40歳のときに最新鋭の工場も建設。業績を順調に伸ばした。現在の従業員数は25名であるが、工場内部は自動化が進み、中部圏では最大規模の製氷能力を誇っている。
順調に業績を拡大してきた同社だったが、2020年からのコロナ禍で再び危機に見舞われた。氷は飲食店やスポーツイベント、野外フェスなどで多く使用されるため、ほとんどのイベントが中止され、飲食店の営業も自粛する状況下で苦戦を強いられた。
ここで長野氏は、「起きてしまったことは仕方がない」と覚悟を決めた。そして、今こそ、日ごろの忙しさで放置されてきた課題に取り組んでみようと考えた。「やりたかったことは何だろうと考えたときに、2つのことを思いついた」
1つめが、社員の情報共有のスピードアップだ。「当社は大量の手書き書類が業務で使われていた。フォーマットもバラバラで、書類が回ってくるまで時間がかかり、その間業務が止まっていた。また、社員から業務改善報告が上がってくるが、せっかくの改善内容が全員に伝わらない。社内の壁に貼り出していたが、そのための労力もかかってしまい、元も子もない状態だった。これらをスピードアップして、情報共有をスムーズにできないかと思った」
2つめが、社員が柔軟に働く環境づくりだった。「事業を継続していくためには社員が生き生きと働くことが重要だが、生活スタイルはいろいろで、仕事へのモチベーションは高いけども家庭の事情で短い時間しか働けない人もいる。そういう人を戦力として活用していくのが、これからは非常に重要だろうという思いがあった」
2つの課題をどうやって解決すればいいかと模索するなかで見つけたのがkintoneだった。早速導入を決めたものの、調べると自社だけではやはり難しい部分も多い。何とか導入をスムーズに進めたいと考えていた長野氏は、サイボウズオフィシャルパートナーでもあるリコージャパンとコムデックの力を借りることにした。
最初に作るアプリは、社員全員が使うものがいい
kintoneをどこから導入するかについても、知恵を絞った。最初は社員全員が触れる必要がある業務がいいと考えた長野氏は、有給休暇の申請業務から始めた。「結果的には大成功だった。日付の自動計算や重複の排除など、コムデックさんの工夫によって素晴らしいアプリができた。もう、昔の仕組みには戻れないと社員全員が思っている」
長野氏は、もし、すでに勤怠をシステム化している企業なら、今であれば社員の健康チェックのアプリなど、全員に関係するステージを作って、そこに参加してもらうのがいい、と話す。
これに続く社内情報共有アプリも、順調に稼働している。「これまでは、社内のホワイトボードに書き込んだ情報が1時間後には古い情報になり、社員間で誤解を生む原因にもなっていた。アプリでは書き込んだ情報は瞬時に共有できるため、スムーズで間違いのない業務ができるようになった。こちらも、もう元の手書きには戻れない」(長野氏)。スマートフォンで入力できるため、在宅でもほとんどの業務ができるようになった。
このシステムのトップページを見れば、社員の状況がすべてわかるため、長野氏自身も会社の状況が把握しやすくなったという。
会議の時間を週5時間から1時間に削減
まだ、稼働してから6ヵ月ほどだが、目に見える効果が表れている。まず、社内会議の時間が週5時間から1時間に大幅に削減できた。「対面でのコミュニケーションはもちろん大事だが、ほとんどの業務がkintone上で連携し、承認から情報共有まで全部できてしまうため、毎日社員を集めて会議をやる必要がなくなった。また、従業員がどんどん新しい情報に触れることで、精度の高い仕事ができることが大きなポイント。かなり大きな効果だと思っている」
今後の展開としては、工場内のさまざまな設備のメンテナンス情報を共有、管理するためにkintoneを活用したいと長野氏は語る。「過去の情報を共有して、次世代につなげていきたい。また営業や事務関係の業務も体系化して、皆がすぐに共有できるようなクオリティに持っていきたいと思っている」
長野氏は最後に、「当社にとってkintoneは、『積極的な人生を支援するプラットフォーム』だと思う。ワークライフバランスが叫ばれているが、その実現には、正確な情報をスピーディに、しかも気軽に共有できるコミュニケーション基盤が必要。kintoneがその役割を果たしてくれる」と語った。
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