業務を変えるkintoneユーザー事例 第212回
現場を取り残さない、大山乳業農協・新生・長谷川鉄工のDX事例を見る
kintoneがつなぐDXのラストワンマイル 牛舎でも、工場でも、屋外でも
2024年01月09日 09時00分更新
2023年11月8日と9日、サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2023」が幕張メッセにて開催された。今年はマジカルDXツアーと題して、DXへの魔法を学ぶためのさまざまなセッションや展示が繰り広げられた。
本記事では、ノンデスクワーカーのkintone活用が披露された「現場データの転記不要!ユーザーが語る、紙、LINE、専用アプリ起点のkintone活用術」のセッションを紹介する。各事例に共通するのは、現場の業務やメンバー、データを取り残さず「DXのラストワンマイル」をつないだことだ。
大山乳業農協:onboard×kintoneでつなぐ酪農ヘルパーのDX
まずは「白バラ牛乳・白バラコーヒー」を主力とする鳥取の大山乳業農業協同組合から、酪農指導部 指導次長の今吉正登氏が登壇した。今吉氏の日々の業務は、酪農家への指導で、生乳生産量の確保や良質な生乳の生産、飼養環境の改善などに取り組んでいる。もちろんシステム運用に携わる部署ではないが、デジタル技術を活用して業務改善につなげる、部門横断の「業務改善チーム」に所属する。
同チームでは、アジャイル的な動きで変革を進めており、これまで役員会のペーパレス化やYouTubeでの外部説明会、ウェブアンケートなどを実施してきた。「チームでは、“誰も取り残さないDXサービス”を重要視している。誰でも簡単に使えるシステムを開発するという想いで動いている」と今吉氏。
大山乳業農協では、かねてからkintoneを活用。役員の出張時でも稟議決済が迅速になり、精算の事務作業は簡素化、巻き戻し機能でリアルタイムな協議も可能になったなど成果も出ており、もう導入前には戻れないと今吉氏はいう。
kintoneで次に取り組んだ変革が、酪農ヘルパーの業務改善だ。酪農ヘルパーは、酪農家が休みをとれるよう作業を代行する仕事で、県内全域の牧場が出勤対象となる。直行直帰が通常で、勤務時間も不規則、そのために事務所には月1、2回しか来られないという。
こうした環境のため、酪農ヘルパーからの紙の報告書はリアルタイムに回収できず、集計や、請求・支払いの作業は遅れがちに。また、集計用Accessへの転記作業は属人化し、手作業によるミスも発生していた。
そんな中、ALCONTAの提供する「onboard」とkintoneの連携を発見。本連携では、専用のペンとボードで紙に記入するとデータが送信され、スマホ側による確認を経て、kintoneのアプリにデータが反映される。「酪農ヘルパーさんへの教育を鑑みても、これならいけそう!」と確信し、導入に踏み切ったという。
onboard連携のために、まず取り組んだのがシステムに合わせた報告書の記入内容の見直しだ。onboardでの読み取りを前提として、必要項目を数字やチェック欄に変更。マス目も大きくし、正確に情報を反映できるレイアウトにした。残業や手当などの計算は、すべてkintone側に任せる仕組みだ。
onboardのクラウド上では、サムネイル画像や日付や牧場名といったファイル名が確認できる。onboard上でのデータ保存は一か月までだが、連携プラグインによりボタン1つで、kintoneにデータが同期され、kintoneが次の工程に必要な部分が数値化する。この一連のプロセスの構築で、業務の時間短縮に繋がり、起票から集計までの手作業はゼロになった。
実際に、集計担当者の作業時間は、月15時間ほどから15分ほどに大幅に削減。記載ミスもなくなった。また、酪農ヘルパーの報告書提出のための訪問も不要になった。
今吉氏は「起票方法を“紙”から変えなかったことで、酪農ヘルパーさん達の不安を解消し、教育もうまくいった。特に紙のレイアウトを見直したことにより、得られる報告情報の“精度”が上がった」という。チームが掲げる“誰もが簡単に使えるシステム”を創りあげている。
今後、大山乳業農協では、工場内においてもonboard×kintoneを活用し、紙を残したままでのDXに挑戦する予定だ。
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