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業務を変えるkintoneユーザー事例 第125回

大事なのは「仲間のために、という想い」 ヒントは「give」

ユーザーのときめきを大切に!課題に立ち向かうエン・ジャパン流kintone活用術

2021年10月29日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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「kintoneに向いている」かつ「改善効果が大きい」課題に集中した結果

 社内にkintoneを拡散するためにも、いろいろと工夫したという。まずは、kintoneの改善で成果を出したら、誰もがわかるように数値化した。そして、社内表彰を行い、ノウハウを共有してもらった。すると、他の事業部にいる「志ある人たち」に勇気を与え、後に続く人たちが歩みやすくなる。実績を出すことで、「kintoneでなんとかならない?」という課題が集まるようにもなった。

 高橋氏はみんなの日報を読み、業務フローの悩みをピックアップして、「これkintoneでいけるよ」「これMicrosoft 365でいけるよ」とアドバイスしました。そして課題を集めたらプロットし、kintoneで勝てるゾーンを検討する。「kintoneに向いている」かつ「改善効果が大きい」課題に集中するようにしたのだ。

 そんな課題が解決できない場合、高橋氏は「この課題に直面するのは、自分たちが「人類初」なわけがない」「同様の課題を抱えており、解決策を模索した人たちがいるはず」と考えた。

 kintoneの開発事例などを調べて似た事例が見つかったら、自社の課題に合わせてカスタマイズする。見つからない場合は、自分たちの課題が特殊すぎると判断し、業務フローをもっとシンプルにしてからkintoneを使おうと考えた。この徹底したkintoneファーストの考え方はスゴイ。

kintoneを適用する課題は戦略的に絞り込んだ

 見事にkintone+情報公開ツール「kViewer」(トヨクモ)がはまった活用法として、2つの事例を紹介してくれた。

 エン転職では企業に独自取材をしているが、そのインタビュアーの自己紹介ページを用意し、あらかじめ送っているそう。そのページの内容をkintoneに登録し、kViewerで表示しているのだ。

 転職して入社した後の活躍を大事にしているのだが、社内でその成功事例を共有しているそう。そのナレッジサイトにもkintoneとkViewerを利用している。

 どちらもkintone上でユーザーがリアルタイムに編集できる。デザイン部門に投げたり、ホームページ開発会社に依頼しなくても、自分たちで対応できるのがメリットだ。

自己紹介ページと社内ナレッジサイトもkintone化した

開発したアプリは1600個超、年間で2万6000時間を削減

「2019年、私は事業全体の企画を担うセクションである企画部に異動したのですが、基幹システムとkintoneをどう棲み分けようかと悩みました。それまでの納品系と営業系はkintoneでいけそうです。しかし、何十万社もある顧客データや請求書を発行する販売管理などをkintone化するかは結構悩みました」(高橋氏)

 情報システム部とディスカッションを重ね、最終的に顧客と接点のある部門はkintone化し、事業部でどんどん改良していくことになった。そして、安定性・堅牢性が求められる基幹系システムは情報システム部門が中長期的にしっかりやっていくことにしたという。

 事業サイドの役割が決まり、kintoneでは早く作って出すということが明確になったので、コロナの中でも業務改善をがんがん進めらたそう。コロナ禍では追加費用は出しにくかったが、定額費用のkintoneならシステムは作り放題。色々な部署から色々なシステムを導入したいという要望が上がってくるが、そのたびに、とりあえずkintoneを作りましょうと口説いたそう。

「そうして、事業変化に応じたスピーディーなシステム開発をしていきました。どのくらいスピーディーかというと、ある日の朝9時半に営業数百名に対してExcelオンラインでアンケートするというのを発見しました。これ、kintoneでできますよと企画者にチャットし、10時10分に業務フローをヒアリングし、20分後にkintoneと「krewSheet」(kintoneをExcelライクにするグレープシティの連携サービス)でサンプルを作って出しました」(高橋氏)

 ぴったり1時間で新システムの開発が完了してしまった、驚くべき事例と言えるだろう。

 コロナ禍にぴったりな開発事例としては、申請書のワークフローを紹介してくれた。従来は紙の申込書で押印していたものをウェブ化したのだ。これもフォームブリッジとkViewerを組み合わせて開発し、上司はログイン不要で承認できるようにした。

 その結果、なんと月間800時間もの削減を実現できたという。入力したデータはkintoneに溜まるので、企画部で管理できる構造になっているのもポイントだ。

「このアプリは内製しました。トヨクモさんの公式ブログにあったレシピの1つを転用できるのではないかとデモを作ってみたら、うまくはまって展開できました。コロナ禍の情シスはやることがたくさんあるので、承認ワークフローは事業部で進めました」(高橋氏)

紙の申請書をkintone化して大幅な業務効率改善を実現した

 2017年にkintoneを導入し、ノウハウを共有し、拡散し、お節介と思うくらいに支援を行なった。他事業部でも活用が進み、仲間が増え、全社的な課題にも立ち向かえるようになった。そこから4年、デモ版も含めると開発されたアプリは1600個を超えている。

 2020年、コロナ禍の中業務改善を推進し、高橋氏のいる企画部だけで、年間2万6000時間の削減を実現したという。とてつもないkintone導入効果と言えるだろう。

 kintone普及のコツとして、高橋氏が最後に表示したスライドが「仲間のために、という想い」だった。

「身近な人の課題を解決することを大事にしました。その輪を広めていくヒントは、先に「Give」することです。組織が大きくなると、対立しそうなところが出てきますが、根っこの課題は一緒です。一緒に立ち向かえる共通のゴールを設定すると、敵の敵は味方になります。味方が多いほど、強敵と戦えます。その時の相棒になるのがkintoneになると思います」と高橋氏は締めた。

kintoneを普及させることはまずは自分からGiveすることだと高橋氏

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