米国時間の9月28日から、米サンフランシスコのモスコーニセンターにおいて開幕した「Oracle OpenWorld San Francisco 2014」では、先日CEOの辞任を発表したラリー・エリソン氏が登壇した。ここでは今回のオラクルの人事から戦略を読み解いていく。
人事がなかったのようなOOWの会場
創業者であるラリー・エリソン氏のCEO辞任が9月18日に発表されてから、わずか10日目というタイミングでの開催となった。それでも、基調講演の予定などにはまったく変更がなく、エリソン氏の2回の基調講演は予定通り実施。新たなCEOに就任したマーク・ハード氏と、サフラ・キャッツ氏の2人も当初予定通りの講演スケジュールをこなした。
ハード氏は、記者の質問に「肩書きは変わるが、戦略は変わらない」とコメントしたが、自ら進んで新たな役職については語らないまま。エリソン氏も基調講演において人事に関わる唯一のコメントが、新製品として発表した「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」という長い製品名が自ら命名したものであることに触れ、「2人のCEOが昇格する前に私が決めたもの」と語り、会場の笑いを誘ったに過ぎなかった。「会長」としての挨拶はひとつもなかった。
つまり、Oracle OpenWorldの会場では、今回の人事がまるでなかったかのように感じるほどなのだ。それほど経営陣、そしてオラクルの社員は、Oracle OpenWorldの期間中、トップ人事をまったく意識していないようだった。
昨年秋に開催されたOracle OpenWorldは、国際ヨットレースであるアメリカズカップの開催時期と重なり、オラクル・チームUSAが大逆転を果たして優勝。決勝戦ではエリソン氏が、予定していたOracle OpenWorldの基調講演をキャンセルするという一幕もあり、その点では、昨年の方が波乱のOracle OpenWorldだったともいえ、今年はむしろ粛々とスケジュールが進んでいった。
初のCTO、2人のCEO、CFO不在
今回の新たな人事体制になって起きたことは、「オラクル初のCTOの誕生」、「2人のCEO体制」、そして、「CFO不在」という点だ。
これだけをみると、いびつな組織体制のように聞こえなくもない。米国時間の9月18日に発表したオラクルのトップ人事は、ラリー・エリソン氏が、取締役会経営執行役会長(Executive Chairman)に就任するとともに、同社初のCTO(Chief Technology Officer)に就任。これまで10年間に渡って取締役会会長を務めてきたジェフ・ヘンリーは副会長に就任した。
また、製造、財務、法務部門を担当してきた社長のサフラ・キャッツ氏と、営業、サービス、業界別グローバル・ビジネス・ユニット部門を担当してきた社長のマーク・ハード氏の2人がともにCEOに昇格。それぞれの部門を引き続き担当することになる。そして、ソフトウェアおよびハードウェアのエンジニアリング部門についても、今後も継続的にエリソン氏が指揮を執ることになる。
エリソン氏は発表したリリースのなかで、「今後、サフラ、マークの両氏は、私の指揮下ではなく、取締役会の直属となるが、その他の経営体制はこれまで通り変更はない。この数年間、3人の連携はとてもうまく取れており、当面、この体制を継続していく。この経営体制をうまく機能させることが、私にとってはつねに最大の優先事項である」とした。
そして、エリソン氏は、引き続きフルタイムで働き、製品エンジニアリングおよび技術開発、戦略の実行に全精力を傾ける意思を示したことも明らかにされた。
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