日本オラクルは7月23日、「Oracle Database 12c」のインメモリデータベース(DB)オプション、「Oracle Database In-Memory」の国内提供を開始した。既存のOracle DBとの互換性を持ち、アプリケーションの改修なしで大幅な高速化を実現するのが特徴。
Oracle DB In-Memoryは、Oracle DB 12c Enterprise Editionのオプション製品として提供される。オプション価格は「1CPUあたり250万円」(日本オラクル 専務執行役員 データベース事業統括 三澤智光氏)。
日本オラクル 代表取締役社長 兼 CEOの杉原博茂氏は、クラウドと大量のデータにより社会活動が支えられるようになった現在、企業には大量のデータをリアルタイムに分析、活用していく「リアルタイム経営」の実現が求められていると指摘。今回発表するインメモリDBが、リアルタイム経営を実現していくうえで重要な役割を果たすことを強調した。
また三澤氏は「ITベンダーの役割は、顧客の持つ『データ』を『価値』に変えていくことだ」と述べ、インメモリDBによって大量のデータを価値に変えるスピードを高めることで、幅広い業種におけるビジネス変革をサポートしていくと抱負を述べた。
アナリティクスもOLTPも大幅に高速化、の理由
発表会に出席した米オラクル Oracle DBプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのティム・シェトラー氏は、同製品の開発にあたっては「3つの誓いを立てた」と述べた。それは、高速な“リアルタイム”の分析(アナリティクス)を可能にすること、従来からのOLTPを透過的に処理すること、既存アプリケーションとの完全な互換性を保つこと、の3つである。
同製品では、ロー(行)型とカラム(列)型の両方のDBをメモリに保持する「デュアル・フォーマット・データベース」を採用。処理内容に適したロー型/カラム型を自動選択するとともに、ロー型DBの更新内容は常にカラム型DBに同期され、整合性を維持する。この仕組みにより、あらかじめいずれかの型を選択することなく、同一DBに対してOLTPでも分析処理でも高速な処理が期待できる。
特に分析クエリに関しては、“Software on Silicon”対応CPU(SPARC)の各コアが並列処理でインメモリカラムをスキャンする仕組みにより、従来比で「100倍以上」の高速化が図られる。その結果、分析クエリ用に多数のインデックスを保持する必要もなくなり、OLTPの処理も高速化される。
さらに「Oracle RAC(Real Application Clusters)」によるスケールアウトにも対応しており、複数サーバーを利用したインメモリクエリの並列実行を行える。なお、可用性の面では、サーバー間でインメモリデータを複製する「インメモリ・フォールト・トレランス」機能を利用することで、サーバー障害時のダウンタイムを削減できる。
既存DB/アプリケーションからの容易な移行が優位点
日本オラクルの三澤氏は、Oracle DB In-Memoryの競合優位性として、顧客の既存資産であるデータやアプリケーションを完全に保護/継承できる点を強調した。「すでにOracle DBを使っている顧客に対し、アプリからの透過性を提供する。これはとても重要」(三澤氏)。
国内では累計約24万人の「ORACLE MASTER」認定技術者と約1000社のパートナー、約2万8000社の顧客企業があり、これが「SAP HANA」など競合製品との「圧倒的な差別化ポイントになる」と三澤氏は語る。
国内市場への展開施策として、今年中に、自社およびパートナー技術者1000名を「インメモリDBエキスパート」として育成するとともに、既存顧客やISVに対する無償インメモリアセスメントの実施、パートナー各社によるインメモリDB検証センター設立の推進などを明らかにした。
「オラクルの抱える既存顧客のインメモリDBへの移行に併せて、インメモリDBの能力を使い切るような、次世代のアプリケーション開発も支援していく」(三澤氏)