キーボード・タッチパッドの操作性も十分。ストロークは浅めだが、タッチ感が悪いわけではない。配列面でも申し分ない。タッチのことを気にせず、普通に「薄型Ultrabook」と評価しても問題ない範囲だ。タッチ機能があるのにモバイルノートとしての使い勝手にほとんど変化がない、ということが、TAICHIの最大の魅力といえるかもしれない。
発熱は大きめだ。少々寒くなってきた現在の室温で、底面をかなり暖かく感じるのだから、夏などは少し不快に感じるかもしれない。発熱源は主に底面中央と底面右側で、パームレストはさほど発熱しない。テーブルの上で使うのであればまったく問題にはならないだろう。この辺は、いろいろ詰め込んでいる形状でありながら、Ultrabookらしい薄さを実現するための、ある意味の割り切りかもしれない。
割り切りという意味では、バッテリー駆動時間が短いのも気になる。これは間違いなく、本体重量を増やさないために、搭載バッテリー容量を少なくしたのが原因だ。
カタログ上の表記は「約5.2時間」(JEITA 1.0測定値)となっているが、バッテリーベンチマークツール「BBench」のテストでは、最長でも約3時間40分。これは、バッテリー容量を多く搭載する最近のUltrabookの中では、ちょっと少なめだ。特に、タブレットのように使うことも想定するならば、もう少し長い方がありがたい。
BBenchによるバッテリー駆動時間テスト | |
---|---|
バランス | 省電力 |
約2時間29分 | 約3時間39分 |
おそらくは、ディスプレーを2枚搭載し全体の重量が増えたことから、トータルでより重くなるのを避けたのだろう。その判断はわかるが、実用的な、インターネット接続を併用した使い方でも5時間を越える程度にしてほしい、とは感じる。
他方で、そういった面をカバーするためか、ACアダプターがとても小さく、軽くなっている。コンセントに差し込む部分は折りたたみできるので、真四角にして鞄に入れておける。同様の機構はアップル製品でも取り入れられているが、TAICHI付属のものも小さくて好ましい。
EthernetやアナログRGB接続は外付けアダプター経由になるが、そうしたアダプター類が付属のケースに収納できて、持ち歩きやすい点は高評価だ。ただ端子類としては、SDメモリーカードスロットが欲しかったと思う。まあ、USBで簡単に外付けできるものだが……。
TAICHIは「持ち歩く薄型のノート、しかもWindows 8世代はどうあるべきか」を真剣に考えて作られた製品だ、と感じる。バッテリー駆動時間の点など、自分が買うと考えると気になる点はあるが、タッチと一般的なパソコンとしての使い勝手の両立という面で、なるほど納得できるやり方ではある。
次には、両面タッチと駆動時間の延長に挑戦してもらいたいと感じるが、この方向は伸ばしていくだけの価値はある。変形はしないが、それと同等の価値がある、新しい方向性として注目してもらいたい。
- お勧めする人
- ・クラムシェルでもタッチでも妥協したくない人
- ・人が驚くようなパソコンを持ち歩きたい人
ASUS TAICHI 21 の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-3517U(1.9GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 11.6型ワイド 1920×1080ドット |
ストレージ | SSD 256GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェース | USB 3.0×2、micro HDMI出力、アナログRGB出力(アダプター経由)、10/100BASE-T(アダプター経由)など |
サイズ | 幅306.6×奥行き199.3×高さ3~17.4mm |
質量 | 約1.25kg |
バッテリー駆動時間 | 約5.2時間 |
OS | Windows 8 64bit |
価格 | 13万9800円から |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。 最新刊は「ソニーとアップル 2大ブランドの次なるステージ」(朝日新聞出版)。
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