このページの本文へ

最新データセンターに最適!魅惑の4コイチサーバー 第2回

データセンター事業者との二人三脚で生まれた「前面保守」

ラックサーバーと同じ運用を重視した「Express5800/E120d-M」

2012年09月19日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

NECのマルチノードサーバー「Express5800/E120d-M」で重視したのは、ラックマウントサーバーと変わらぬ運用・保守性だという。NEC プラットフォームマーケティング戦略本部 主任 谷長 薫氏に開発コンセプトを聞くとともに、実機を紹介してもらった。

電力、重量、搭載密度の黄金比を探る

 7月に出荷開始されたばかりの「Express5800/E120d-M」(以下、E120d-M」)は、データセンターでの利用を前提とした“ECO CENTER”ブランドのマルチノードサーバー。2ソケット対応のサーバーモジュールを2Uエンクロージャーに4台搭載できる、いわゆる「4コイチサーバー」である。

2Uエンクロージャーに4台のサーバーモジュールを搭載するExpress5800/E120d-M

 NECでは、こうしたデータセンター向けのサーバー開発において、ユーザーとの意見交換を特に重視しているという。「基本的には新製品のイメージをお客様にお持ちし、これをたたき台に、運用で困っているところや、将来のサーバー像などをヒアリングし、製品開発に活かしています」(谷長氏)とのこと。ラックの前後に1台ずつサーバーを差し込めるハーフサーバーを始めとして、近年のデータセンター向けサーバーはこのサイクルを繰り返してきたという。

 今回紹介するE120d-MもCPUのリリースも、開発や製品企画の担当者が実際にユーザーの元に足を運び、約2年前から着々とリリースの準備を進めてきたもの。谷長氏は、製品企画のサイクルが、ちょうど都市から郊外へのデータセンター移転が始まった時期と重なったと説明する。「今まで、大手の通信事業者の施設を借りて開設していたデータセンター事業者が、郊外に自前のデータセンター、ファシリティを持つようになってきたんです。自前で持てば、電力やスペースをコントロールできるので、製品選択の幅が拡がるんです」(谷長氏)。たとえば、ラックあたりの電力供給が4kVAや6kVAという従来型データセンターであれば、既存のラックサーバーが最適。一方で、10kVAまで供給できる最新の郊外型データセンターであれば、搭載密度の高いサーバーもチャレンジできるわけだ。

NEC プラットフォームマーケティング戦略本部 主任 谷長 薫氏

 こうした中、ラックサーバー以外の製品として省スペースと省電力にこだわったモジュールサーバーとして生まれたのが、E120d-Mのコンセプトだ。谷長氏は、「われわれがデータセンター向け製品の開発でポイントにしているのは、電力と重量、搭載密度のバランスです。データセンターの場合、電力と耐荷重が決まれば、あとはどれだけ尖ったスペックを載せられるかが勝負でした」と語る。2年後に来る郊外型データセンターの隆盛を見越し、データセンターサーバーで重視される黄金比を事業者とともに模索していくのが、製品開発のキモだったわけだ。

ラックサーバーと変わらない運用・保守を重視

 さて、E120d-Mのフォームファクターに関しては、3Uに4サーバー、1Uに2サーバーなど、いろんな案が出た結果として、2Uに4サーバーという構成に落ち着いた。「本当は3Uに4サーバーのようなスペースに余裕のある設計の方が冷却面では好ましいのですが、電力供給とのバランスを考えて、搭載密度を優先しました。あと、奇数のU数をいやがるお客様も少なからずいらっしゃったので」(谷長氏)。2Uに4台搭載するため、サーバーモジュールには小口径のファンを採用せざるをえなかったが、NECには対向するファンをそれぞれ逆回転させることで、小口径でも効率的な冷却を行なうノウハウがあったため、問題なかったという。

 また、Atomプロセッサー搭載サーバー「E110b-M」のように縦型に挿入する形態も案としては出たが、エンクロージャーの剛性が必要となるため、横型挿入を選択した。共用パーツも電源のみに絞り、サーバーモジュールで2Uのエンクロージャーを貫く形で4台搭載できるようにした。この結果、単一のラックに搭載できるサーバーは、一般的な1Uのラックサーバーの2倍となった。

サーバーモジュール間での共用は電源ユニットのみ

 谷長氏は、ハードウェア面のこだわりとして、「ラックサーバーと変わらない運用・保守性」を挙げた。E120d-Mでは、サーバーモジュールの増設やHDDの抜き差しは、すべて前面から行なえる。また、USBやグラフィックなどのポートも前面に配置し、背面はLANポートや電源のみ。まさに高密度になったラックサーバーとして扱えるのが特徴となっている。「ブレードサーバーのほうが搭載密度は高いですし、スイッチなども内蔵できますが、運用面が大きく変わってしまいます。データセンターのお客様はネットワークも自前で用意していますし、メーカーが規定した効率的な運用までの変化を求めているわけではありません。ラックマウントと同じように扱えるサーバーじゃないと購入しませんとおっしゃるお客様もいました」(谷長氏)と、こだわりを持って開発した部分だという。

前面にHDDやUSB、ディスプレイポートを用意

背面は基本LANポートのみの構成

 内蔵サーバーモジュールには、Xeon E5シリーズを2基搭載できる。「CPUに関しては性能の高いE5 2600番台か、省エネ性能の高いE5 2400番台のいずれか迷いましたが、お客様のニーズとしては電力消費削減のニーズが高かったので、エントリのE5 2400番台を採用しました。実際、お客様のほうで検証してもらうと、性能面でも2600番台と比べて遜色ないというコメントをいただいたので、選択は間違ってなかったと思っています」という。

サーバーモジュールの全景。右が前面、左が背面でエンクロージャーを突き抜ける形で挿入される

 また、メモリは12のスロットにRegistered DIMMを最大384GBまで搭載。また、内蔵ディスクは2.5インチのSAS/SATA HDDのほか、SSDも選択可能だ。内蔵ディスクは最大4TBという容量になるが、「大きいところは外付けにするケースが多く、サーバーのディスクはキャッシュに近い感触です。仮想マシンもハイパーバイザーのみをサーバーに載せ、ストレージから持ってきている使い方が多いです」(谷長氏)という。

運用性と省エネが差異化ポイント

 他社製品との差異化ポイントは、ラックサーバーしか知らなくても使えるという「保守性」になる。前面保守で、電源のみをノード間で共有するE120d-Mは、富士通「PRIMERGY CX400」やHPの「HP ProLiant DL2000」などの競合に比べて、明らかに異なったコンセプトといえる。

 もう1つはNECサーバーの十八番ともいえる「省エネ」である。同社では、サーバーの40℃動作保証を進めているが、本製品でもサポートされている。「密度を高めても、40℃動作保証を守れました。小さい工夫ですが、差異化要因になっています」(谷長氏)という。これらの差異化ポイントに共感できるユーザーであれば、最新機種のE120d-Mは有効な選択肢といえる。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード