このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

SaaS・デバイス管理を手がける2社が情シスの現状を本音トーク

情シスが向き合うSaaSとデバイス管理の課題 ジョーシスとマネーフォワードiが語り合った

2024年05月22日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 SaaSとデバイス管理を提供するジョーシスとマネーフォワードi の二人が、企業の情報システム部の課題や現状について語り合った。コロナ禍で増え続けるSaaS、ビジネスのスピードに追いつかないデバイス、事業者が提供できるノンコア業務の効率化、そして情シスにとってのコア業務とは? (モデレーター ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

一人情シスからエンプラまでを支援するジョーシス グローバル展開も

ASCII編集部 大谷(以下、大谷):まずはジョーシスさんの事業説明と高山さんのプロフィールを教えてください。

ジョーシス SVP of Japan Business 高山清光氏(以下、高山):ジョーシスは2022年2月に設立したばかりの会社で、当初はスモールビジネスの1人情シスを助けるという目的で、SaaS管理を手がけるサービスを開始しています。その後、それだけだと情シスは助けられないということで、デバイスのキッティングなどを含むITアウトソーシングやヘルプデスクなども展開しています。現在は中小企業の1人情シスにとどまらず、大手(エンタープライズ)企業の課題解決に向けてサービスを提供しています。

ジョーシス SVP of Japan Business. 高山 清光氏

私自身は大手製造業の常駐SEからキャリアをスタートし、その後はB2B SaaSのビジネスを長くやってきました。本社でも100人くらいの規模から入社して、日本法人を立ち上げるところから始めていました。5社くらいやっているのですが、一番長かったのはBoxですかね。一方で、15社くらいの社外取締役や顧問を兼任しており、ジョーシスもその流れで事業展開に関わらせてもらいました。その後、資金調達の目処が立ち、事業にアクセルを踏む段階で、フルコミットさせてもらうことにしたのが2022年ですね。

大谷:外資系企業の経歴が長いと思うのですが、なぜ日本のスタートアップに飛び込んだのですか?

高山:長らく日本人として海外に飛び出す日本のスタートアップに関わりたいと思っていました。その流れでいろいろな会社の社外取締役や顧問を務めていたのですが、どうしても規模が小さい。数十億円規模の資金調達は確かにすごいけど、どこまでできるかという限界もわかってしまうんです。

でも、(ジョーシスがシリーズBで実現した)135億円規模の調達になると、見える視座がけっこう違う。海外の事業計画も本気度が見えました(関連記事:135億円を資金調達したジョーシス、企業のITガバナンス崩壊を食い止められるのか?)。日本の事業を世界規模で展開するという僕の夢も叶うかもと思い、フルコミットさせてもらうことにしました。

大谷:高山さんは日本事業を見てらっしゃいますが、ジョーシスとしてはグローバル展開も進めているんですね。

高山:もともと英語版も用意されており、英語圏でも使われていますが、現在はアジア・パシフィック40カ国の展開を重視しています。現地パートナーと連携して、日本企業の現地法人だけじゃなく、ローカル企業の情シスの課題に応えたいと思っています。

300以上のSaaSを使っていたマネーフォワードの課題解決をユーザーへ

大谷:次にマネーフォワードiの今井さん、「マネーフォワードAdmina」(以下、Admina)についても教えてください。

マネーフォワードi 代表取締役社長 今井 義人氏(以下、今井):Adminaの立ち上げは2021年11月で、ジョーシスさんと同じく、SaaS管理プラットフォームとしてスタートしています。ほぼ同時期に同じようなことを考えていたのかもと思い、とても親近感が湧きました。開発も海外メンバーが多いので、そういう部分でも近いのかなあと。

マネーフォワードi 代表取締役社長 今井 義人氏

大谷:もともとはマネーフォワードのSaaS管理からスタートしているんですよね。

今井:はい。2020年当時のマネーフォワードって、300くらいのSaaSを使っており、もはや何かどのくらい使われているのか、訳がわからなくなっていました。これをなんとか管理しようということで、CIO室主導でSaaS管理のプロジェクトがスタート。そして、他社も同じ課題を抱えているはずだから外販しようということで、マネーフォワードiという子会社としてスピンアウトしました。

私自身は外資系企業の日本法人からキャリアをスタートさせたのですが、自らプロダクトを作りたいということで、マネーフォワードに転職してきました。5年前くらいまでは経費精算のプロダクトを立ち上げ、3年前からマネーフォワードiでAdminaを手がけています。

大谷:Adminaの最新動向を教えてください。

今井:SaaS管理からスタートし、昨年からはデバイス管理もスタートさせました。最近では「Vendorプラン」でコスト削減プランを始めたり、デバイスのキッティングや棚卸しプランも追加したりと、情シスの管理OSみたいなポジションで攻めていこうという流れです。

コロナ禍と新規事業の増加でスピードを求められるようになった

大谷:まずはお二方が現在の情シスが直面している課題をどのように把握しているか教えてください。

高山:現在注力をしているマーケットの1つで引き合いを多く頂くのが1,000名以下の企業でIT管理者が一人という規模感の会社だと、やはりコロナ禍でITが大きく変わったという実感をお持ちです。テレワークが普及し、マルチデバイスに対応するという点もあるのですが、コロナ禍でスピードや迅速性を要求されるようになったというのは大きいと思います。

今までは中央集権的にIT部門が半年かけてすべてのデバイスやサービスを検証し、現場に卸していくという感じでしたが、もはやそれだと市場の移り変わりに乗り遅れてしまう。現場のニーズにクイックに対応するためには、スピードを優先して、現場でのSaaS利用を許容していくという流れはあると思います。

大谷:従来型の手堅い進め方だと、どうしても迅速さに欠けてしまうんですね。

高山:あと多くの企業が本業以外の新規事業を手がけなければならないという現状です。人口減少で国内の市場がシュリンクし、海外でも激しい競争にさらされる時代なので、たとえば鉄道会社でも駅ナカの小売ビジネスやWebコマースは必須となっています。新規事業を立ち上げでは、ビジネスにあったシステムを構築するのに時間がかけられないので、事業部単位でSaaSの利用を許可していく必要があります。

この結果、SaaSがどんどん増えてしまい、誰がなにを使っているのかわからない状況が生まれてしまった。しかもコロナ禍で転職も増え、デバイスのキッティングや返却、回収などの手間も増えるようになり、さらに管理が漏れるようになってきました。こうしてSaaSやデバイスの管理カオスが蔓延した結果、そのニーズを踏まえたわれわれのようなプロダクトが生まれたのだと思います。

大谷:今井さんは情シスの現状をどう捉えていますか?

今井:先日、情シスをメインにしたユーザー会を実施したのですが、すごく印象的だったのは、「会社の御用聞きになってしまっている」という声でした。電気が通っているものはすべて情シス担当みたいな感じで、コピー機から、パソコンから、なんでも任されてしまうと。

私は情シス向けのAdminaの前に担当していたのが、経理向けのサービスだったので、経理の方の話はよく聞いていました。経理のようなバックオフィスって、間接部門なのでコストも厳しいし、売上を立てていないという引け目を感じている方もいます。でも、情報システム部門はもっと引け目を感じている人が多いと感じます。軽視されがちな情シスのポジションを、なんとか改善したいなと思う気持ちは強いです。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード