開発者に聞く、type Zのビジネスノート進化形
このVAIO type Zについて、担当者に話を聞くことができた。話をしてくれたのは、ソニー株式会社のVAIO事業本部 Notebook 第1事業部課長の林 薫氏と、同事業本部企画戦略部門企画部の金森伽野氏である。
type Zのコンセプトは「持ち歩けるデスクトップ」!?
―――type Zのコンセプトとはなんでしょうか?
金森氏(以下敬称略) 一言でいうと「パフォーマンスとモビリティの融合」です。このクラス(13インチ液晶搭載機)でこのパフォーマンスがあり、これだけの軽量化を追求しているマシンは、ほとんどありません。ビジネスで利用することを考えると、電源が使えるオフィスでの使用では、デスクトップ並の高いパフォーマンスが利用でき、かつモバイルでの利用でも必要なパフォーマンスが得られる、ここにフォーカスしたのが、type Zです。
林氏(以下敬称略) この機種を企画したときのターゲットは、ビジネスマンで、かつ重責を担っているような人でした。VAIOシリーズには、モバイル用として「type G」という機種もあるのですが、あちらはいつも移動しているような人をターゲットにしていて、外を出歩くほうが多いという使い方を想定しています。それに対してこのtype Zは、オフィスの中にいることも多いけれども、出張も多いし、持ち歩くこともある。もちろん、そうでない日も多いという用途を想定しているマシンです。
超低電圧系CPUを使ったB5サイズのモバイルマシンは、場合によってはパワー不足を感じることがあります。また我々としては、type Gというモバイルマシンが別にあるので、この機種ではモバイル利用に最適化する必要がありませんでした。そこで、デスクトップ利用でもパワー不足を感じないようにこだわったのです。たとえば、CPU性能や、HDDは(1.8インチタイプより)高速な2.5インチタイプを採用するといった点にこだわりました。また、SSDを利用できる構造にもしてあります。
―――VAIOシリーズでのビジネス向けマシンというのは、コンセプト段階から明確に分けているのでしょうか?
金森 コンセプトを決める場合の立ち位置にもよるのですが、ビジネス向けとそうでないものは分けて考えることが普通です。ただ、このtype Zの場合には、ビジネスを考えてはいるのですが、コンシューマー寄りの領域もカバーできるようなコンセプトになっています。たとえば、企業のエグゼクティブの方はビジネスとプライベートをきっちりと分けることができるのでしょうが、個人事業主などの場合にはビジネスとプライベートの領域が必ずしも明確にならないことがあります。その間を埋めるハードウェアとして考えています。
林 「この要素があるからビジネスだ」、というわけではなくて、製品をパッケージとして作り上げる際に、どんなユーザーにどう使われるのかを考えたときに、ビジネス用とそうでないものが分かれてくるのです。
たとえばこのtype Zでは、「堅牢性」を非常に重視しています。落下試験の社内規定をパスできる筐体の構造などです。これは、スペックではなく作り方であって、たとえばHDDを保護するなどの対策も行なっているのです。これはコスト面にも大きく影響してくる部分です。部品や筐体などの違いだけでなく、シミュレーションや落下試験などを行なって設計しています。そのため、設計に要する手間も全然違ってくるのです。すべての状況を試すことはできませんが、可能性の高い状況についてはいろいろと試験を行ないます。
それで、こうした部分を考慮していくと、筐体のサイズなどにも変化がでてきます。技術的にはtype Zと同じスペックで、もっと「尖った」仕様も考えられるのですが、堅牢性を重視すると、たとえばHDDを保護するためのダンパーを入れる場所が必要となり、そのために本体の厚みなどに制限が出てきます。技術的にもっと薄いマシンも作ることはできるのですが、それはtype Zでの目標ではありませんでした。type Zは、人を驚かすような「薄さ」を狙うのではなく、安心して使ってもらえる機種を目指したのです。
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