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Linux Conference '99で、XFree86の過去から将来までを総括した特別講演「XFree86 Past - Present - Future」レポート

1999年12月23日 08時01分更新

文● 沖中 弘史

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 次にHohndel氏は、現在リリースされている3.3.xシリーズとXFree86 Projectの現状、そしてオープンソースの有効性について語った。

現在のリリース

 現在リリースされている3.3.xシリーズについては、

  • 8月末リリースされた3.3.5はメインテナンスリリースであり、バグフィクスと対応ビデオチップの追加以外に大きな変化はない
  • 3.3.6はすでにリリースされているはずだったが1999年末になった
  • Linuxが重要な存在になってきたために、各ビデオカードベンダーがドライバをメインテナンスするようになってきた。そしてこれこそが先に挙げたXAAの開発理由であり成果である

という。

XFree86 Projectの現状

 XFree86 Projectの現状を、

  • XFree86 Projectというのは分散型開発組織である
  • 私達のコアチームは16名から成り、メンバーは北米、オーストラリア、ヨーロッパにいて、日本からも2人参加している
  • 全体では650人のデベロッパがいて、この人達は「投票権のないメンバー」と呼ばれ、我々が(X.Orgとの)非開示契約にサインすることによってX.Orgのドキュメントにアクセスすることができるようになる
  • 多種多様な国や人種の人達が開発に参加していて、その中で作業を円滑に進めるために、メーリングリストを維持。メールアドレスや新たなカントリーコードの管理などをしている
  • デベロップメントチームは、給料をもらっている人達によって作られているのではなく、「良好なXの実行」という目的を共有している
  • ビデオカードベンダーからお金をもらって、フルタイムでXの開発をしている人もいるが、ほとんどの人は「楽しいから」「エキサイティングだから」という理由から開発している

と紹介し、「知らない人から『私のグラフィックハードはうまくいっているよ』といわれるのはとても嬉しいことです」、「こういった開発によってこそ私達のやっていることに意味を見出すといったことができる」と自らの仕事のやりがいを語った。

オープンソースの有効性

 オープンソースについて、

  • OSの開発やインフラ開発にはとてもいい方法だと思う
  • ソースコードが評価され続けるために、ソフトが安定して信頼できる
  • システムにおいて一番の悪夢はコンピュータをコマーシャル環境で走らせるということだ。問題が生じたときにそれを直せるということはとても重要である

と、その有効性を語り、問題点として

  • 商用の、特に知的資産についての懸念が高い会社などにおいて開発が難しくなる
  • デベロッパがボランティアなので締め切りを押しつけることができない

を挙げたが、後者については、「締め切りを決めると不完全なコードのリリースにつながりかねないので、問題は単純ではない」とした。 また、ビデオカードベンダーへの実際の対応として、まず市場の状況を

  • ビデオカード市場というのはとても競争的な環境
  • ビデオカードの寿命は短い
  • 最低でも年に1回のリリース

と分析し、ベンダーには「競争相手に自社の中身、構造を知られてしまうことへの懸念」があるので、それを払拭するために、「ソースコードをリリースする頃はもうすでに次世代のビデオカードの時期であるから、ソースコードのリリースにマイナスの影響はない」ことを説明するのだという。

 そして「これらのチャレンジで7年が過ぎた」と語ったが、現在サポートされているビデオチップとベンダーの数を見れば、その成否は明らかといえる。

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