Core i7の本格普及は2010年!?
Q7 消費電力は上がった? 下がった?
A7 動作状況によりけりだが、上がる可能性が高そうだ。TDP(熱設計時消費電力)がCore 2 Duoより高いためだ。
Core i7は現行のCore 2 Duo/Quadより強化された電力制御機能を備えている。PCU(Power Control Unit)と称する電力管理用のマイクロコントローラーが内蔵されており、センサーを通じて消費電力や電圧、CPUの温度などをリアルタイムに計測。動作周波数や電圧を変動させるほか、動作状態に応じて個々のCPUコアを完全にオフにもできる。先述のターボ・ブーストも、新しい電力管理機能によって実現できたものだ。
また、45nm世代のCore 2 Duo/Quadで実装された、新しい省電力用動作モード「C6ステイト」にも対応。各コアが電源オン状態でもCPUの電力消費を極限まで下げている。
これらの工夫により、負荷が低い状態でのCore i7の消費電力は、Core 2 Duo/Quadに劣るものではないはずだ。問題なのは高負荷状態の消費電力となる。Core i7のTDPは130W。Core 2 Duoの65W、Core 2 Quadの95Wと比べても、かなり大きい。HTやターボ・ブーストなども、CPUコアを激しく働かせる分だけ、消費電力が高い状態が続きやすい。
ヘビーなアプリケーションを多用する状況では、Core i7搭載パソコンの消費電力は上がる可能性がありそうだ。
Q8 メインストリームデスクトップ向けはいつ頃でる?
A8 2009年後半から、場合によっては2010年前半になる模様。
現時点のCore i7は、コード名「Bloomfield」(ブルームフィールド)と呼ばれていたハイエンドデスクトップ向けの製品だ。現在のCore 2 Duo/Quadのように、幅広いジャンルを狙ったものではない。一般コンシューマー(メインストリーム)向けのCore i7は、クアッドコア版が「Lynnfield」(リンフィールド)、デュアルコア版が「Havendale」(ヘブンデール)と呼ばれており、どちらも2009年後半の投入を予定されている。ただし、Havendaleは遅れる可能性もある。
Lynnfieldは4つのCPUコアと内蔵型メモリーコントローラーを備えるほか、QPIの代わりにPCI Express 2.0 x16を内蔵する。現時点のCore i7とX58チップセットの組み合わせでは、Core 2 Duo/Quadと同じようにグラフィックスカードはチップセット側に接続される。これがLynnfieldでは、CPUに直接グラフィックスカードが接続される形に変わる。
グラフィックスカードの接続がCPU側に移ることもあり、対応チップセットは1チップ型の「Ibex Peak」(アイベックスピーク)に変更される。自作派ユーザーや拡張性を重視するユーザーにとっての本命は、このLynnfieldになるだろう。
HavendaleはCPUコアが半分の2つ。その代わり、CPUパッケージ内に別の半導体ダイで、GPU機能を内蔵する。CPUコア側とGPU側は、QPIで接続される。また、メモリーコントローラーや外部グラフィックスカード用のPCI Express 2.0 x16もGPU側のダイに搭載される。つまり、Havendaleは単にLynnfieldのコアを半分に削ったのではなく、別の設計になっているわけだ。GPUをCPU内に内蔵することで、システム全体のコスト低減が可能になる。Havendaleはコストパフォーマンスを重視するローエンド~ミドルクラスのパソコンに適したCPUと言える。
しかし、Havendaleの登場時期について、ジャーナリストの後藤弘茂氏は「2010年第1四半期まで遅れる」と述べている(PC Watchの該当記事)。インテル側からの公式なアナウンスはないものの、特に否定していないこともあり、現在ではHavendaleは2010年に遅れるとの見方が支配的だ。そうなると、比較的安価なパソコンでCore i7が採用されるのは、2010年の春商戦か、あるいは夏商戦ということになるかもしれない。
Q9 ノート向けはいつ頃でる?
A9 デスクトップ向け同様、2009年後半から2010年前半になる模様。
ノート向けのクアッドコア版Core i7は「Clarksfield」(クラークスフィールド)、デュアルコア版は「Auburndale」(オーバーンデール)と呼ばれている。構成はデスクトップ版と同様で、Clarksfieldは4CPUコア+メモリーコントローラー+PCI Express 2.0 x16を1チップで内蔵する。こちらはノートパソコンの中でもハイエンドの製品に採用される。
一方のAuburndaleは、2CPUコアとGPU+メモリーコントローラー+PCI Express 2.0 x16を2チップで搭載する。ローエンド~ミドルクラスのノートパソコンで採用されるだろう。
登場時期についてもデスクトップ版と同様で、どちらも2009年後半とされている。ただし、Havendaleと同様に、Auburndaleも2010年に遅れるのではないかという見方が多い。そうなると、ノートパソコンに広くCore i7が採用されるのも、やはり2010年の春~夏商戦になるかもしれない。
Q10 Core i7の搭載製品にはどんなものがあるの?
A10 エンスージアスト向けハイエンドゲームマシンから、15万円以下のリーズナブルなマシンまで、幅広くラインアップされている。
今まで述べたとおり、現状のCore i7とX58チップセットは、いずれもハイエンドデスクトップ向けの製品である。しかし、CPUが3種類あり、価格帯も10万円以上から3万円弱まで幅広いこともあって、採用したパソコンの価格バリエーションも意外に幅広い。
詳しくはこちらの記事を参照していただきたいが、Core i7-965 Extremeを採用する製品は、電源も強力なものを積み、グラフィックスカードの2枚差し構成に対応するハイエンドなものが多い。
それに対して、Core i7-920を採用するモデルでは、14万円を下回る製品もある。ホワイトボックス系ベンダーの場合、同クロックのCore 2 Quad Q9400搭載マシンが10万円強。3GHzのCore 2 Quad Q9650搭載マシンが15万円弱で販売されている。最新CPUとハイエンドチップセットを搭載したマシンとしては、かなりのお買い得価格と言えるのではなかろうか。
メインストリーム市場向けのCore i7が登場するのが半年以上先であることを考えると、Core i7に期待する自作派/拡張好きのパソコンユーザーなら、半年待たずにCore i7-940/920とX58でリーズナブルなマシンを購入・自作してしまうのも、悪い選択ではなさそうだ。