格好良くカーブが引けると、冷却性能もよくなる?
湯川氏の手により、リアシャーシが外されると、内部が露わになってCPUを覆うヒートシンクが見えてくる。
湯川 CPUは、実はけっこう簡単に取り替えられます。ヒートシンクを止めるネジ4本を外すだけですから。
GPUはCPUの次に大きな熱源になりますので、これらをなるべく分散配置させようと、裏面に配置しました。
――CPUの真裏にあるんですね。
湯川 そのまま載せては厚みが増してしまいますので、ヒートパイプで上に引っ張って、ファンを一体にして冷やしています。
――なるほど……これは一体型を作り慣れている方でないと、設計できませんね。
湯川 type Rはデスクトップ流とも違い、ちょっとノート流のところがありますね。厚みを最小にしながら熱源を分散させ、冷やすエンジンに持ってくる。こうしたヒートパイプの配置などは、設計面では面白いところになっています。
――エアフローの設計に当たって、難しかったポイントはどこでしょうか。
湯川 一体型は今まで、チップセット内蔵GPUしかやっていませんでした。それがtype RではディスクリートGPUを採用した。CPUよりもトレンドが読めないGPUの熱を、どれくらいにすればいいのか? それと熱源を分けるという点ですね。マザーボードの表と裏に、CPUとGPUを分けた。
熱源を分ける一方で、ファンの数は最小にしたい。そこで、ヒートシンクでCPUを冷やす必要分とGPUを冷やす必要分を足し算して、おおまかにどれくらいの熱を冷やすのかを計算する。このコンセプトに至ったところがキーだったと思います。
GPUはMXM風カードで実装
type RのGPU「GeForce 9600M GT」は、CPUの裏側にサブ基板で搭載されている。サブ基板の形状やコネクターは、ノートパソコン向けのGPU専用インターフェース規格「MXM」をベースにした、独自のものだという。ディスプレーとマザーボードの間にあり、ヒートシンクでがっちり覆われているので、仮にMXM規格どおりの基板でも、ユーザーが交換するのはまず無理だろう。
湯川 こちらがGPUを載せたMXMカード。ピンアサインなどを微妙に変えていますので、正確にはMXMそのものではありませんが。
近藤 形状とコネクターだけはMXMですね。MXMカードがちまたで手軽に買えて、ユーザーがどんどん交換する、という状況にはなっていませんので。
湯川 MXMカードがもっと広がってくると、スリムな一体型でもGPU交換という流れが出てくるかもしれませんね。我々としても、そういうものが流行ってくれると、GPUの異なるバージョンを用意するのが楽になる面があります。
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type Rやtype Aでは、動画の再生画質を向上させる技術として、「Motion Reality HD」を導入している。ノイズリダクションやDVDのアップコンバート、高画質I/P変換などを、GPUを使って行なう独自技術だという。
――type Rなどで導入される「Motion Reality HD」ですが、これはNVIDIA GPUが持つ高画質化機能「PureVideo HD」に加えて、シェーダー上で動く高画質化プログラムで実現される、ということでしょうか。
近藤 PureVideoにもアップスケーラーやノイズリダクションの機能がありますが、そうした重なる部分を独自プログラムで置き換えます。ソニーの動画のノウハウを活かして、置き換えた部分はよりきれいで明瞭感のある映像になっています。一方でPureVideo HDが持つAVCデコーダーなどは、そのまま使っています。
――NVIDIAはCUDAによるソフトウェアソリューションで、GPUによるエンコードの高速化をアピールしています。しかし、type Rは別途AVCトランスコーダーを搭載している。type Rが搭載するGeForce 9600M程度では、まだ専用チップを使った方が高速ということでしょうか。
近藤 現時点ではまだAVCトランスコーダーの方が優っていると判断しました。9600Mを採用する時点では、まだ時期尚早であると。
CPUメーカーもGPUメーカーも、今回のような専用チップのメーカーも、みんながAVCエンコード/トランスコードに注目しているのは間違いない。「今までパソコンで重かった処理で、次に速くしなくてはならないのはここだ」と。そういう時代の流れにあるのは、我々にとってもいい勝負どころができたと思います。