鉄道系カメラマンの筆者が、鉄道写真の魅力と、実際の撮影テクニックを解説する本連載。鉄道写真にもいろいろあるが、ここでのテーマはずばり「海外での鉄道写真」の撮り方だ。舞台は斉藤氏が20代の半分を過ごした微笑みの国「タイ」。異国情緒あふれる景色を背にした鉄道写真は、鉄道ファンはもちろん、そうでない人でも楽しめる魅力がある。
お詫びと訂正:掲載当初、「12系客車」と記述していいましたが、「14系客車」の誤りです。ここにお詫びすると共に訂正いたします。(2007年10月15日)
9ヵ月ぶりにタイへ戻ってきた。アパートで日本から運んできた荷物の整理を終えると、雨季ながら雲の切れ間に青い空が見えた。時計を見ると16時過ぎだ。急げばJR西日本から無償供与された24系寝台客車(ブルートレイン)を編成に組み込んだ、トラン行き急行列車を見送れる。急遽、クルンテープ駅(バンコク中央駅)まで出かけてみた。
タイにはまった20代後半
タイはボクが1996~2000年までの約5年を過ごした常夏の国。西のミャンマー、北のラオス、東のカンボジア、南のマレーシアと接する東南アジアの一国だ。マレー半島を初縦断した時に、マレーシアからタイへ入国した瞬間に「何か好き!」と強烈なインスピレーションを得て、そのままバンコクの出版社に就職してしまった。これがきっかけとなって、旅行系のカメラマン兼ライターとして出版業界にデビューして現在に至るわけだ。不思議な縁である。
ボーリング球の様に転がり続けるのがボクの人生の特徴だが、単に好きなだけだったら20代後半という人生の中でも最も大切な時期を、微笑みの国「タイ」へ捧げることはなかっただろう。
しかしボクは、タイでディーゼル機関車が牽引する夜行列車の大群に出会ってしまったのだ。タイでなら、エアコン寝台車のプチ豪華で快適な夜汽車旅だけでなく、日本ではほぼ不可能になった三等客車の開けっ放しの車窓を楽しむ夜汽車旅まで思いのままに楽しめる。これが帰国の最大の妨げになった。
さらにタイ在住者となる決め手になったのが、カンチャナブリーにおける日本製蒸気機関車との出会いだ。蒸気機関車牽引観光列車の定期運行が、「アメージングタイランド」という観光キャンペーンに合わせて1998年に始まったのだ。タイの大地を走るD51形やC51形のスケールダウン版といえるタイ蒸機の勇姿は、少年期にSLブームを体験したボクの心をわしづかみにしてしまった。
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