今じゃ、革のジャケットを着てます
―― 監督としてデビューしてからと今では、変わりましたか?
FROGMAN 蛙男商会としての認知は広まったと思います。いろいろな所で、「ファンなんです」と声をかけていただいたり、取材に来ていただいた方にサインを求められたりするようになりました。映画を公開したことで、全国区になったということもあります。おかげで島根県でも有名になれました。
―― 最初にインタビューさせていただいた時は、「生活が楽じゃない」というお話をされていましたが、今の生活ぶりは変わりましたか?
FROGMAN そうですね。去年の春までは単身赴任の状態でしたが、今はかみさんと子どもも来てくれて、家族一緒にいます。年収60万円だった頃に比べれば、数十倍になりました。
椎木 (FROGMAN監督のジャケットを指差しつつ)なんたって「革」ですよ(笑)。
―― 制作のスタイルは変わりましたか?
FROGMAN あまり変わっていませんが、当初は素人に毛の生えた程度だったアシスタントが、演出補というところまで育ちました。3Dなどの表現にしても大胆な使い方になりましたね。
椎木 今までは1人でやってるとか、時給がいくらだとか言っていましたが、今はクリエイティビティーが売りにできるようになりました。
FROGMAN 「早くやれます」とか、「ウェブと親和性があります」というところに(ウリ文句が)変わってきましたね。
―― これまでのように公開直前まで制作は続くのですか?
FROGMAN ええ、まだ作っています(笑)。コフィーちゃんの方が、まだシナリオが承認されていませんし。
―― また“劇中広告”(プロダクトプレイスメント)もいっぱいあるのですか?
椎木 たくさん入りますよ。まだ〆切になっていません!
FROGMAN 前回と出稿数はそう変わらないと思いますが、スポンサーの中にはシナリオに絡んでくるところが増えています。そのあたり気を使いますね。
―― FROGMAN監督のように、作品のクリエイティブと営業的な面を同時に見られる監督ってあまりいないのでは?
椎木 彼はプロデューサー的、営業マン的な部分にも長けているんです。ネーミングライツとかアイデアも凄いし。観客に対する愛も強いのですが、スポンサーへの愛もあるんです。お客さんもスポンサーも喜ばせたいんですね。
総統やデラックスファイターの姿に泣ける!?
―― “NY国際インデペンデント映画祭”で受賞されたそうですね。
FROGMAN はい。NY国際インデペンデント映画祭で、アニメーション最優秀作品賞と国際アニメーション最優秀監督賞の2つの賞をいただきました。
椎木 監督の描くものは、従来のアニメと違って絵で売るのではなく、コンセプトやホン(脚本)の面白さにあるのですが、映画祭での評価にはそういう意味があるのではないかと思っています。これまで日本のアニメは「絵の素晴らしさ」や「技術」が評価されていたと思います。ところが監督の作品は、「絵はなんともないけど、脚本は素晴らしい」、という評価をいただいたのだと思います。
―― なるほど。でも、僕は絵も好きですけどね(笑)。
FROGMAN あれだけ違ったキャラクターが一緒に出てくるものもないですけどね(笑)。
―― 会見の最後に「今回は泣ける」とおっしゃっていましたが。
FROGMAN すごく真面目な話なんですが、社会に出たばかりの時や結婚した直後は理想や信念があったと思うのですが、私たちくらいの年齢になると、家族や現実に悩まなければならないことがたくさんあって、信念や理想って見失いがちになると思うんです。それで変に若い子たちや政治家のことに対してぶりぶり怒っていたりとか。今の大人は理想や信念を明確に持っているのか? 大人が信念を貫いている姿を見せていないから、子どもたちが希望を失ってしまうのでないかと。
貧乏でいつもだらしがない“総統”なんですが、信念は捨ててない。「ボロは着てても心の錦」を捨てていないんです。総統の姿を通じて、信念について語っていこうということなんです。もちろんそれを鷹の爪らしく、ばかばかしくしながらも語っています。
―― 総統の「世界征服して世界平和」は、変わりはないということですね。
FROGMAN デラックスファイターの場合は、正義の味方でありながら、信念を持っているかというとそうでもない。ただデラックスボンバーが出せるから、正義の味方であるアイデンティティーがあるんですが、今回はそれが出せなくなってしまい、自分を見失ってしまうんです。デラックスファイターが自分を取り戻し、自己再生していく物語でもあるんです。
椎木 とは言いながらも、その辺が大きな柱になっているようには見えなくて、全編大笑いなんですけどね。お笑いを期待した人には、十分お応えできると思います。
―― あれだけ大笑いしているのに、なぜか泣ける落ちが必ずあるんですよね。
FROGMAN そういう意味では、ポジティブに元気になってほしいし、「泣いちゃったけど、すげー気持ちよかった」「すっきりした」、という映画にしたいんです。ぜひ、早くみなさんにお見せしたいです。
[作品データ]
「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE~私を愛した黒烏龍茶~」
公式サイト:http://www.takamovie.jp/
5月24日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて先行公開、5月31日より順次全国ロードショー。
監督・脚本・キャラクターデザイン・録音・Flash・編集・声の出演など:FROGMAN
企画・制作:DLE
製作:「秘密結社鷹の爪 THE MOVIEⅡ」製作委員会(DLE、テレビ朝日、電通、東宝、MBS、ソニー・ミュージックエンタテインメント、メ~テレ)
音楽:manzo
主題歌:the HOOSiERS「Goodbye Mr A」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
配給:DLE
配給協力:東宝
テレビ、ゲームに事業を拡大するDLE
DLEはさらに続けて会見を開き、テレビ東京で放送されて好評だった「ファイテンション」シリーズの第3弾「ファイテンション☆テレビ」の4月放送開始を発表した。毎週土曜朝7時、テレビ東京系6局ネットにおいて放送される同番組の新MCは吉本興業のお笑いコンビ「ペナルティー」に決まった。身体能力の高い芸人である2人が、体や表情を使った爆笑ミニコントを展開する。さらにアニメパートでは、蛙男商会の新作だけでなく、サンプラザ中野くん氏による「本マグロトロ太郎TV」が放映されるとのこと。サンプラザ中野くん氏も自ら登壇して、「トロ太郎は頭はトロ、体は湯のみ、足はガリ」とキャラクターを紹介した。また、以前爆風スランプのレパートリーだった「ちゃんちゃらおかP音頭」もアニメ付きで復活するということだ。
続いてDLEは、ヨーロッパで会員数700万人を誇るMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)「Dofus」など、独自の世界観を持った作品を数多く手がけている、フランスのネットワークゲーム企業ANKAMA社との業務提携を発表した。DLEはANKAMAと手を結び、ドフスのデザインからストーリーに至るまで、日本市場に向けた制作を請け負う。4月から「ファイテンション☆テレビ」のいちコーナーとして、TVアニメ「ドフス・アンド・フレンズ」を放送。7月には国内でゲームのβ版を発表し、9月に正式サービスインする予定だ。