インテル「Core Ultra 7 270K Plus」「Core Ultra 5 250K Plus」を発表!270K Plusは同コア数のCore Ultra 9 285Kより250ドルも安い
文●加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII
2026年03月11日 22時00分
2026年3月11日、インテルは「Core Ultra 200Sシリーズ」の後継となる「Core Ultra 200S Plusシリーズ」の投入を正式に発表した。製品は「Core Ultra 7 270K Plus」、「Core Ultra 5 250K Plus」、「Core Ultra 5 250KF Plus」の3モデル。ソケット形状は前世代と共通であるため、既存のインテル800シリーズチップセット搭載マザーボードに搭載できる。
北米における予想価格はそれぞれ299ドルと199ドル(いずれもK付きモデル)、発売日は2026年3月26日。現時点で国内価格や発売日についての発表はないが、Core Ultra 7 270K Plusが5万5000円、Core Ultra 5 250K Plusが3万5000円前後程度になるだろうと(筆者が勝手に)予想している。
インテルの報道資料より。Core Ultra 200S Plusシリーズは「インテル最速のゲーミング向けデスクトッププロセッサー」であると記載があるが、重要な点は右端。エンスージアスト向けではあるが「ドルあたりの性能」を向上させたと言っている。筆者の記憶違いでなければ、今までコンシューマー向け製品でインテルがこういった文言を使ったことはない。つまり、インテルは今自分が“青コーナー”にいることを自覚しているのだ。【筆者注:Xで「Cascade Lake-X発表時にPerformance per dollarという文言を使っている」というご指摘を頂戴した。これは反駁の余地のない事実であるため、上の画像に対するキャプションは誤りである。なお、自分への戒めとして削除せずこのまま残しておくことにする】
Core Ultra 200S Plusシリーズの開発コードが「Arrow Lake-S Refresh」であることからも、基本設計は先代Core Ultra 200Sシリーズ(Arrow Lake-S)と同じであるが、ただのクロック増モデルにわざわざ「Plus」と付けるわけがない。
そこで、本稿ではインテルの発表資料をベースに、Core Ultra 200S Plusシリーズでは「何がプラス」されたのか解き明かすことにしよう。
Eコアがプラス、メモリークロックもプラス
Core Ultra 200S Plusシリーズ最大の「プラス要素」はEコアクラスターの増設だ。Core Ultra 7 270K PlusのEコアは16基。Core Ultra 7 265Kの12基に比べて、Eコアを4基追加している。つまり、Eコアクラスターが1基増えた計算になる。同様にCore Ultra 5 250KはEコアが12基で、Core Ultra 5 245Kの8基に対し、4基増加している。
ここで注目したい点は、Core Ultra 7 270K PlusはCore Ultra 9 285Kのスペックにほぼ並んでいるが、最大ブーストクロックはかろうじて後者が勝っているという点だ。Core Ultra 9 285Kの発表時価格は589ドル、現在でも北米において550ドル前後で流通しているところに、それと遜色のないスペックのCore Ultra 7 270K Plusを299ドルで投入したことになる。
今回インテルがCore Ultra 9 290K Plusを出さなかった理由は、Eコアがこれ以上増やせないためである。Core Ultra 9 285KのEコアを増やすには、コンピュートタイルそのものの設計変更が避けられないため、クロック増などで対応するしか手がないからだ。後述するプラス要素を含めても、クロックを上げたCore Ultra 9 290K Plusでは厳しいと判断したのだろう。
さらに追加要素として、Core Ultra 200S Plusシリーズではダイ間(D2D)クロックが最大900MHz向上。Core Ultra 200SシリーズのK付きモデルのD2Dクロックは2.1GHzで、200S Plusシリーズは3GHzだ。Core Ultra 200SシリーズのK付きモデルでは「Intel 200S Boost」を有効にすると3.2GHzにオーバークロックされる。対して、Core Ultra 200S PlusシリーズはIntel 200S Boostを使わなくてもD2Dクロックが相当高速化されていることになる。
Core Ultra 200S PlusシリーズはEコアが4基増加しただけではなく、D2Dクロックが最大900MHz向上。Intel 200S Boostを使わなくても、それに近い効果を得られることが期待される
もう1つのプラス要素はメモリーまわりの強化だ。Core Ultra 200SシリーズではDDR5-6400が定格最大クロックだったが、Core Ultra 200S PlusシリーズではDDR5-7200に引き上がっている。ここに関しては、CPUが安くなったのにDDR5モジュールが高額なのでトータルではあまり安くなった感じはしない。
しかし、Intel 200S Boost+高クロックメモリーで性能(特にゲーム)が改善することを考えると、Intel 200S BoostなしでD2Dクロックを引き上げ、高クロックメモリーもサポートしたCore Ultra 200S Plusシリーズの性能はそれなりに期待できるだろう。ちなみに、Core Ultra 200S PlusシリーズにおいてもIntel 200S Boostはサポートされているが、DDR5-8000までの対応という点に変更はない。
さらに、Core Ultra 200S Plusシリーズでは4ランクのCUDIMMモジュールもサポートされる。4ランクCUDIMMはモジュールあたり最大128GBの容量を確保できるため、メモリーを山のように積みたいエンスージアスト(そのような人はXeonやRyzen Threadripperを選ぶのではないか、というツッコミはさておき)にとっては良いニュースだ。
なお、4ランクCUDIMMは既存のインテルZ890チップセット搭載マザーボードでサポートしているが、今の情勢を考えると4ランクCUDIMMの入手性は決して良くないだろう。
ゲーミング性能は平均13〜15%の向上
肝心の性能はどうなのか? まだレビュー段階にも入っていないため、公式の資料を引用するしかないが、それによるとCore Ultra 200S Plusシリーズのゲーミング性能はCore Ultra 200Sシリーズよりも平均13〜15%向上しているそうだ。
また、ブランディングで競合するRyzen 7 9700XやRyzen 5 9600Xに対し、Core Ultra 200S Plusシリーズはマルチスレッド性能において最大2倍。この点においてゲーマーはもちろんクリエイターにもお買い得なCPUであるとインテルは主張している。ただし、Ryzenとのゲーム比較データは出ていないため、このあたりは今後のレビューで明らかにしていきたい。
Core Ultra 7 270K Plusと265Kのゲームによる比較。新しめの「Assassin’s Creed Shadows」では4%しかフレームレートが伸びないが、「Shadow of the Tomb Raider」や「Hitman 3」といった古めのタイトルでは大きく伸びている
こちらはCore Ultra 5 250K Plusと245Kの比較。ここでも「F1 25」などの新しめのタイトルでは10%以下だが、やや古めの「Borderlands 3」や「Far Cry 6」では20%以上伸びている
Ryzen 7 9700XやRyzen 5 9600Xとの比較。これはゲームでなくCGレンダリングにおける性能比較である。この分野であれば当然コア数の多いCore Ultra 200S Plusシリーズが圧勝。ゲーム比較を出していないことはさておき、クリエイティブな処理も考えているなら、Core Ultra 200S Plusシリーズだよね? というインテルのメッセージは読み取れる
新たな最適化機能「Intel Binary Optimization Tool」
インテルは第12世代Coreプロセッサー(Alder Lake-S)以降、PコアとEコアを混在するハイブリッドデザインを採用。そして、「Intel Thread Director」によって、PコアとEコアの使い分けを支援する(最終的にはOSが決定する)という方針だ。大抵の場合においてIntel Thread Directorの判断は妥当だが、特定の古いゲーム(「Metro Exodus」など)では非効率的な使われ方をする場合がある。
これをソフトウェア的に是正する解決策が「Intel Application Optimization」(Intel APO)だ。これは当該ゲームが起動するとOSのスケジューラーに介入して、適切な振り分けを実施させるもの。AMDの3D V-Cache Optimizer(ゲームと判断されたら3D V-Cache側のコアの優先度を上げる)のアイデアに通じる機能だ。
そして、インテルはさらなる最適化ツール「Intel Binary Optimization Tool」(Intel BOT)の提供を開始する。これがいかなる理屈で最適化しているのかは一切説明がないが、インテルいわく「インテルの40年にわたるワークロード最適化の実績を活用した画期的な最適化技術であり、プロセッサーのサイクルあたりの命令(IPC)とユーザーパフォーマンスを向上させる」としている。
Intel BOTでは「インテル以外のx86プロセッサーに最適化されたゲームや(x86ベースの)家庭用ゲーム機に最適化されたゲーム、あるいは更新の止まったゲームでパフォーマンスを最適化する」とのこと。アーキテクチャーが進化すると古いアプリの動作が思ったように性能が出ないケースがあるが、Intel BOTはこのギャップを埋めるものとなる。
次のイメージ図からは、パイプラインに隙間なく処理を詰め込む技術のように見えるが、そこに小さく「Intel BOTがサポートするワークロードを備えたソフトウェアのみ」と注釈がある。つまり、Intel BOTはどんな処理でも最適化できるわけではない。さまざまな理由で非効率的な処理しかできなかった特定の処理に対し、Intel BOTは効果を発揮するというわけだ。先のゲーム性能比較で古いゲームほど20%以上の伸びを記録していた理由は、Intel BOTの効果である可能性もある。
「テトリス」で例えると、今までは特定処理においてピースが雑に積み上げられていたためムダが多かった(中央)。だが、Intel BOTを利用するとなるべくムダ(隙間)が出ないようにキッチリと積むことができるため、処理効率が上がると読み取れる(右)
また、このIntel BOTはCore Ultra 200S Plusシリーズ限定の機能なのか、第12〜第14世代のCoreプロセッサーにも遡って利用可能なのかは明言されていない。さらに、どのようなゲームやアプリがIntel BOTの恩恵を受けられるのかも不明だ。少なくともアーキテクチャーが共通のCore Ultra 200SシリーズではIntel BOTが使えると思われるが、どうだろうか?
Core Ultra 9 285Kユーザーは怒ってよい
以上がインテルの発表資料に基づくCore Ultra 200S Plusシリーズの概要だ。Core Ultra 200Sシリーズは発売当初は残念な評価が多かったが、BIOSなどの熟成により最近はバランスのよいCPU(特にCore Ultra 7 265K)に仕上がっている。それをベースにEコアの追加や対応メモリーの高速化などを加えたCore Ultra 200S Plusシリーズは、これまで以上に優等生なCPUに仕上がっていると期待できる。
しかし、今回の新CPUはCore Ultra 9 285Kユーザーにとって噴飯ものだ。なぜならCore Ultra 7 270K PlusはCore Ultra 9 285Kと同じコア数なのに、250ドル前後も安い値段だからだ。最大ブーストクロックはCore Ultra 9 285Kが上回っているものの、その差はたった200MHz。
対応メモリーのクロックやデフォルトのD2Dクロックを考えると、Core Ultra 9 285Kの優位性はどんどん小さくなる。Core Ultra 9 285KはTSMC N3Bの選別品である可能性もあるが、それにしたってスペックを近づけすぎではないだろうか?
とはいえ、そのあたりはCore Ultra 200S Plusシリーズのレビューが解禁した時にもう一度考えてみたい。おたのしみに!
【お詫びと訂正】(2026年3月12日10時55分):記事初出時に4モデルの発表を報じましたが誤りでした。正しくは3モデルになります。お詫びして訂正いたします。
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