「iPhone 14 Pro」か「iPhone 14」か現地発表会で触って考えた(西田宗千佳)
文●西田 宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII
2022年09月09日 12時45分
9月8日、3年ぶりにスティーブ・ジョブズ・シアターで開催されたアップルの新製品発表会は、ハンズオンイベントに関しては「完全にコロナ前のやり方に戻った」と言って差し支えない。写真を見ると、日本的な感覚でいえば「うわ、密だ」と思うのではないだろうか。だが、少なくとも、表面上、現地でそのことを気にしている人はほぼいない。相変わらずプレス同士での「静かな戦い」が繰り広げられていた。
特にiPhone 14および14 Proシリーズに絞って感想をお届けする。
Pro搭載「Dynamic Island」の使い勝手は?
プレスの注目が集まっていたのはどのiPhone 14か? 筆者の感覚では、やはり注目は「iPhone 14 Pro」だった、と思う。
今回の製品はカラーバリエーションこそ変わったが、デザインに大きな変更はない。そうするとどうしても、「Dynamic Island」という新機能の搭載されたProシリーズの方をちゃんと試したい……という気持ちになるのは自然なことかと思う。ハンズオン会場には14 Pro Maxのテスト機材が若干少なめであったようで、こちらのチェックが大変だった……ということもある。
では、Dynamic Islandについての筆者の感想はどうか? 正直、動きはおもしろいと思った。黒い領域のサイズとしては、ノッチより少し小さくなったくらいだと思う。単純に面積を減らすなら、パンチホール+短いバー、というやり方もあっただろう。
実際、黒いバーの上に何かが表示されるわけではなく、左右や下にポップアップするだけなのだが、Dynamic Islandは「黒い部分をデッドスペースと感じづらくなる」のがおもしろい。
従来、ノッチはあくまで「ノッチ」であって、そこは意識の中で無視するような場所だった。iOS15までは通知が上から表示されていたので、「ノッチを無視しつつ、通知が下に出る」感じだった。
だがiOS16では、基本的な通知は「画面の下側から出る」ようになり、ノッチの部分はあまり見なくなる。さらにDynamic Islandだと、音楽再生やタイマー、ライドシェアの到着タイミングなど「比較的長く注視し続ける情報」はDynamic Islandの方にコンパクトに表示されることになる。
正直なところ、画面に「穴が開く」のはコンテンツを楽しむ上でまったく好きではない。パンチホールであろうがDynamic Islandであろうが、あくまで「これで我慢するしかない」というレベルの存在だ。ノッチがDynamic Islandなったからといって、それだけでiPhone 14 Proを選ぶ理由にはなりづらい。
とはいえ、無視するくらいしかなかった黒い領域にちゃんと機能を与えた、という意味ではDynamic Islandはアリだと感じている。iPhoneの変化としては「あっていい」ものだ。
問題は、アプリの対応がどこまで進むかだ。アップル説明員の話によれば「そこまで難しく、大規模なものではない」ようだ。単に表示されるだけなら特にアプリの変更は必要なく、特別なアニメーションや表示を加える場合、今後公開される開発情報を活かして作り込む必要がある、という形になるという。
iPhone 14 Proの「4800万画素カメラ」の価値は
iPhone 14 Proシリーズは、メインカメラ(これまで「広角」と呼んでいたもの)が4800万画素のセンサーになり、暗所性能と解像感を中心に画質向上が見込める、という。とはいえ、カメラなどの画質は、ちょっとハンズオン会場では判断しかねる部分がある。操作上はやはり、「2倍」が増えた点が大きい。
これは4800万画素のセンサーの中央を切り取ることで、画角を2倍に拡大するもの。デジタルズームなどではない。食事を撮影する時などに「光学2倍が残っていればよかったのに」という声があったが、Proシリーズでは「0.5倍」「1倍」「2倍」「3倍」になるわけだ。
4800万画素のセンサーを使っているが、通常はいわゆるピクセルビニングの技術を使い、画素を組み合わせて「1200万画素分のデータ」として撮影する。ほとんどのシーンではその方がデータサイズも小さくて使いやすく、画質も満足できることだろう。一方でとにかく解像度を上げたい時のために、「ProRAW」の4800万画素モードが用意されていた。これはRAW撮影なので後からソフトなどで現像することが前提となるが、作品を作りたい人にはありがたい要素かと思う。
ただし、4800万画素のProRAWデータはかなり大きいようで、シャッターを切ってから記録し終わるまでに2秒程度時間がかかっていた。連写するようなシーンでの利用には向かないし、大容量のストレージを搭載したモデルの方が使いやすいだろう。だから「設定変更して使うもの」という扱いなのだ。
iPhone 14は「改良されたスタンダードモデル」
「とはいえProは高い」——そう思う人は多いと思う。今年は「ドル一強」の状況を反映してか、アメリカ以外での売価は上がっている。ドルベースでの価格は去年までと同じに維持したのだが、円安の日本を含む各国ではそうもいかなかった。
iPhone 14は11万9800円からで、iPhone 14 Plusが13万4800円から。iPhone 14 Proは14万9800円から、iPhone 14 Pro Maxは16万4800円からなので、どちらも同じ画面サイズで比べると「Proは3万円高い」という計算になる。(全てアップル直販価格で比較)
iPhone 14は昨年と同じ「A15 Bionic」搭載で性能向上が見えづらいのは事実だ。一方、14及び14 ProのA15 Bionicは、iPhone 13 Proに搭載されていたものと同じであるという。iPhone 13用と比較すると、GPUが4コアから5コアになってゲームなどの性能が上がっている、とのことだ。
設計も変更されているという。放熱性能がさらに高くなって長時間高い負荷をかけても性能は落ちづらくなった。また、iPhone 13では背面ガラスを割った時にハウジング全体を交換する必要があったが、ここも設計変更によって、背面ガラスだけの交換で済むようになったという。
iPhone 13からiPhone 14に買い替える、というひとは少ないと思う。そういう意味では、2年以上前のモデルからの買い替えが基本だろう。そう考えると、iPhone 14は改善されたスタンダードモデルとして選ぶモデルになった、と感じている。
そこで大きい「Plus」を選ぶかどうかは好みの問題だ。現在の場合、Plusとスタンダード、Pro MaxとProの違いは「画面サイズとバッテリー容量」だけだ。
筆者紹介――西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。
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