これはスマホ周辺機器だ! モバイルライターが「Honda e」を衝動買い

文●石川 温 編集●ASCII

2022年01月29日 12時00分

 2021年春、ホンダ初となる量産EV「Honda e」を衝動買いした。

国内では1000台限定発売となっているホンダ「Honda e Advanced」

 Honda eが「なんとなくスマホっぽい」というのが、購入した動機だ。普段は「スマホジャーナリスト」としてアスキーなどで記事を書いているが、Honda eがまるでスマホの周辺機器のように見えてしまい、「これはスマホと同じく買ってレビューしなくては」という人柱精神が芽生えてしまったのだ。

 Honda eには様々な特徴があるが、走りやEVに関するレビューはほかの人がさんざん記事化しているので、ここでは割愛したい。

5枚のディスプレイは圧巻!

 まず、目を引くのがダッシュボード周りだ。5枚のディスプレイが横一列に並んでいるのが壮観だ。左右の端はドアミラー代わりのモニターとなっており、左右の背後を約170万画素のカメラで確認できる。普段、スマホのレビューをしていると「170万画素なんて、しょぼすぎる」と思ってしまうのだが、とりあえず夜間や雨の中でもしっかりと背後を確認することが可能だ。ただ、もうちょっと高解像度だとさらにくっきりと見えるじゃないか、ホンダは部材をケチったのか、という気がしなくもない。

 中央にある2つのディスプレイにはカーナビやアプリなどを表示することが可能だ。

ダッシュボード部分にディスプレイが並ぶ。Fire TV Stickの出力ができる

サイドミラーは鏡ではなくカメラとなっており、モニターに出力されている

 Honda eにはAIパーソナルアシスタントが備わっており「オッケー、ホンダ」と声をかけると、パーソナルアシスタントが起動。ナビの目的地設定やバッテリー残量などを声で教えてくれるようになっている。まさに「オッケー、グーグル」や「ヘイ、Siri」のホンダバージョンなのだ。

 音声の認識率はそこそこ高めなのだが、カーナビ自体の性能がイマイチのような気がして「オッケー、ホンダ」と呼びかけることはほとんどしなくなってしまった。

iPhoneもAndroidもHonda eで使える

 Honda eでは「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応する。スマートフォンで使っているアプリを、クルマのディスプレイに表示して利用できるのだ。クルマに合わせた画面構成、ユーザーインターフェースになっているので使いやすい。

 自分がメインで使っているのは「Apple CarPlay」だ。あらかじめ、iPhoneでGoogleマップを使い、目的地などを検索。その後、Honda eに乗り、Apple CarPlayのGoogleマップを開くと、履歴の中に検索した目的地が残っている。あとはそこをタッチするだけで目的地設定が行なわれ、道案内をしてくれる。Googleマップであれば、渋滞情報がリアルタイムに反映されており、すぐに迂回ルートを教えてくれる。

 1年弱、Honda eでGoogleマップを使っているが、首都高の霞ヶ関あたりのトンネルを走行するとズレまくったりして困ったりもするが、それ以外の場所であれば極端に自走位置がズレるということもなく、ほぼ問題ない感じだ。

 また、Apple CarPlayではアップルの音楽配信サブスクリプションサービス「Apple Music」も利用している。子供が好きそうな曲をプレイリストにして流しておけば、5歳児も大満足してくれる。電話の着信もディスプレイやハンドル部分のスイッチで応答できるし、メッセージの着信も確認できる。メッセージの返信も音声で入力できるなど、視線を前から外すことなくスマートフォンを操れるのが便利だ。

 Honda eで気に入っているのが、HDMI端子がついている点だ。HDMIケーブルでスマートフォンやタブレットを接続すれば、スマートフォンの画面をHonda eのディスプレイに出力できる。

 Honda eは電気自動車なので、出先で急速充電をするということが多い。急速充電は1回30分がほとんどで、その間、待っているのが結構退屈だ。地上波テレビも見られるのだが、HDMIケーブルでスマートフォンを接続すれば、YouTubeやNetflixを見て時間を潰すことができるのだ。

 ただ、スマートフォンをHDMIケーブルで接続して、Honda eのディスプレイに出力するとなるとケーブルがごちゃごやしたり、そもそも「スマホで見ればいいじゃん」ということに気がついてしまったのである。

コンセントに加え、HDMI端子、USBポートも備える。USB Type-Cのほうが良かった

 そこで、「Amazon Fire TV Stick」を購入。HDMI端子にぶっさしている。これにより、Fire TV Stickのリモコンを使い、Honda eの車内でYouTubeやNetflix、DAZNを視聴できるようになった。Honda eは車内を「リビング空間にする」というのがコンセプトにあったようだが、まさにリビングに近づいた感がある。

車内Wi-Fiはもう少し容量が欲しい

 Honda eは車内Wi-Fi機能も備わっている。どうやらソフトバンクの通信モジュールが内蔵されているようで、機能をオンにすることで車内でWi-Fiが利用できるのだ。

 ただ、1GBパック330円、2GBパック660円、3GBパック990円、5GBパック1650円という金額設定になっている。LINEMOなどと比べても妥当な料金ではあるが、車内で動画を楽しみたかったりするだけに、もうちょっと大容量でお買い得なパックも用意してほしいところだ。自分はスマートフォンで使い放題プランに契約しているため、車内ではテザリングでFire TV Stickにつないでいる。

車内Wi-Fiを利用できる。動画を思いっきり見たいので、大容量プランがほしいところ

アプリダウンロードでよりスマホっぽく

 また、Honda eはクルマ向けにアプリをダウンロードしてインストールできる機能が備わっている。ホンダが推しているのがディスプレイを2枚使って水槽のように魚を泳がせ、餌をやれる癒やし系アプリだ。便利な要素は一切ないが、時々、子供が魚に餌をあげて遊んでいる。

ホンダが提供する水槽アプリ。タッチパネルで魚に餌をあげられる癒やし系アプリ

クルマ向けのアプリストア。昨年春にHonda eを購入したときよりも配信アプリは増えている

ホンダが提供するスマートフォン向けアプリ。遠隔でエアコンの操作が可能

 実用系でいえばラジオのストリーミングサービス「radiko」も使える。Honda eにはFMラジオが装備されているが、radikoであればタイムフリーやエリアフリーで、過去の放送などを聴けるのが便利だ。ただ、操作系がイマイチで反応が鈍かったりもする。radikoを聞きたいのであれば、手元にあるiPhoneをApple CarPlayでつなぎ、車内のスピーカーに出力した方が操作も早く簡便だ。

Radikoアプリで様々なラジオを聞くことができる。操作性はイマイチ

 Honda eではスマートフォン向けにもアプリを提供している。「リモート操作」というアプリにより、離れた場所からでもバッテリー残量の確認やエアコンを入れるといった操作ができてしまう。実はHonda eには運転席のドア部分とダッシュボードの上にNFCのリーダーが備え付けられているので、AndroidスマートフォンをNFC部分にかざすとドアが開き、さらにダッシュボードのNFCにかざすと、Honda eの電源をオンにできるのだ(iPhoneの場合はパスコードを入力)。

ドア部分にNFCリーダーがあり、Androidスマートフォンをかざすとロックを解除できる

ダッシュボード部分にもNFCリーダーがあり、電源をオンにすることが可能

 アップルやグーグルではスマートフォンにクルマのキーの情報を入れられるようにしつつあるが、Honda eはまさにその世界観を先取りしているのだ。

 また、一般的なクルマと同じくスマートキーを持って近づくと、自動的にドアロックが解除される。その後、Honda eはクルマに乗り込むと乗車したことを検知して、自動でパワーがオンになる。あとはシートベルトを着用してDレンジボタンを押してアクセルを踏めば走り出す。

 つまり、スマートフォンを使うより、スマートキーのほうが「スマート」だったりするのだ。なので、スマートフォンを使ってのロック解除はほとんど使わなくなってしまった。

オンライン会議も車内から参加!
使い勝手も良く満足度は高い

 Honda eは走りも楽しいのだが、車内空間が飽きずにいつでも居られる感じが心地よい。電源と通信環境が充実しており、最近ではオンラインの記者会見などもHonda eの車内から参加していたりする。

「オッケー、ホンダ」と呼びかけると起動するAIパーソナルエージェント

 もちろんEVなので「バッテリーの残量が気になる」といったスマホらしい弱点も存在するし、「充電する場所に困る」といった問題にも直面する。

 しかし、遊びや仕事にかなり使い勝手が良く満足度はかなり高いといえるのだ。

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筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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