任天堂のプログラミングゲームやばい、無限に遊べる 「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」やってみたレポ

文●盛田 諒(Ryo Morita) 編集● ASCII

2021年05月28日 09時00分

ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング
2021年6月11日(金)発売
希望小売価格
ダウンロード版 2980円
パッケージ版 3480円
任天堂

https://www.nintendo.co.jp/switch/awuxa/

※パッケージ版には、ゲームをしていないときでもノードンたちの機能や使い方が確認できる「ノードンふりかえりカード」が同梱されます

●アクション、シューティング、謎解き、レース……1本で色々なゲームが作れる

 0歳児と4歳児の保護者をしてます盛田諒ですこんにちは。

 任天堂がNintendo Switch向けのプログラミングソフトを出すんですよ。ニュースを見たときは「ふーんビジュアルプログラミングか〜」と知ったような態度をとってましたが、発売前に遊ばせてもらったらめちゃくちゃ楽しかったんですわこれが。

  「ノードン」というプログラミングブロックを使ってゲームを作っていくんですが、ノードンを「グイーン」とひっぱって「ポン」とつなげるだけで楽しいし、すぐゲームとして遊べるのも楽しい。あくまでゲームとして楽しめるように完成されてるんです。

 思い出したのはRPGツクールです。いやそこはスーパーマリオメーカーとかNintendo Laboだろって、アスキーなのでお許しください。

 教育用のプログラミングアプリって、あくまでプログラムの大枠を知ることが目的で、やることは「キャラクターをゴールまで連れていってあげよう」という単調なものも多いんです。そこから好きに作っていいよという話になった途端に難度が上がって挫折するのもよくある話。その点本作は「ゲームを作ることを楽しむ」という目的がバシッと決まっていることもあり、ガイドにそってゲームを作るだけで十分楽しめるんですね。

 簡単なゲームを作って、ちょっと手を加えるだけでまったく新しいゲームにできるのも面白いところ。本当に夢中になって作りこめます。

 さらにさらに、これ1本でアクション、シューティング、謎解き、パズル、レースなど本当に色々なゲームがつくれるんです。これが2980円ってすごいですよ。お父さん買うわこれ。

●USBマウスも使えるビジュアルプログラミング

 あらためて本作は、ナビゲーションに従って謎の生き物「ノードン」をつなげてプログラミング体験を楽しむソフト。ゲームモードはチュートリアルにあたる「ナビつきレッスン」、本番にあたる「フリープログラミング」の2つです。

 ノードンの一種である「スティックノードン」と「ヒトノードン」をつなぐと、Nintendo Switchの「スティック」操作でゲーム内の「ヒト」を動かせるようになるなど、直感的な操作でプログラミングが体験できます。

 基本はタッチ操作によるビジュアルプログラミングで、コードを書く場面はありません。TVモード使用時にはUSBマウスを使ったプログラミングも可能。

 「ナビつきレッスン」では、7つのレッスンを通じて色々なゲームをプログラミング可能。ナビゲーションつきなので、誰でもゲームを完成させられ、プログラミングのしくみやテクニックを身につけられるという内容です。

 応用編の「フリープログラミング」では、自分で描いたキャラクターを操作できるようにしたり、絵を描いて背景にしたり、BGMをつけたりと自由なプログラミングが可能。つくったゲームはインターネットやローカル通信で友だちと共有できます。

 ユーザーのつくったゲームに、ゲームの中で「いいね」やコメントをつけたりはできません。どうしてもやりたければSNSやゲームの外でどうぞ〜ということのようです。任天堂らしい割り切りだなと感じました。

●マリオブラザーズのようなゲームをつくる

 今回つくったのは「ナビつきレッスン」レッスン1「二人対戦!おにごっこバトル」。マップ上で追いかけっこをするマリオブラザーズのようなゲームです。

 レッスン1は7つのステップに分かれていて、かかる時間は目安で約40分。レッスンが進むにしたがって内容もレベルアップしていき、レッスン7では完成するまでに約90分ほどかかるとのこと。やりがいがありますね。

 レッスンを始めるとあらわれるのはボブというキャラクター。ボブのナビゲーションにしたがって「あれやって」「これやって」をこなしていくことになります。

 ノードンは「入力」「中間」「出力」「モノ」とカテゴリーにわかれ、最初に使うのがモノの中の「ヒトノードン」。置くとゲーム画面にヒトがあらわれます。

 しかしそのままではヒトは動きません。そこで「入力」から「スティックノードン」を召喚。スティックノードンの「ポート」と、ヒトノードンの「左右」と表示された「ポート」のあいだをゴムひものようなワイヤーでびよ〜んとつなぎます。

 これでヒトが左右に走れるようになりました!この時点で「おお〜走った走った!」とテンションが上がります。われながらちょろすぎでは……。

 こうしてどんどんノードンを追加してプログラミングをしていきます。むずかしいことは一切なし。あらゆる場面でボブのわかりやすいナビゲーションが入り、ノードンがかわいくしゃべるので、絵本でも読んでいるように楽しく進められます。

 ヒトがゲーム画面で走ったり飛んだりできるようになったら、今度はステージづくり。「モノノードン」からシンプルな直方体を召喚し、ヒトノードンの足元に置きます。

 そのままだと重力にしたがい落下してしまいます。ここで「設定」という概念が登場。モノの「ふるまい」を変更し、「動く」「こわれる」などをオフにします。

 これでヒトが落ちない床ができました!

 しかしただの直方体ではステージにならないので、これをびよ〜んと伸ばします。

 これでステージの床ができたので、今度は壁に。そこで「コピー」という概念が登場。作った床をコピーして、縦長にします。これで壁ができました!

 同行していた角川アスキー総合研究所の遠藤諭さんは「PowerPointみたいな?」と言っていましたが、本当にパワポ感覚でトントン作れるのが楽しいです。

 足場などを組んでステージができたら、同じようにヒトノードンをコピーして対戦相手のオニを作り、対戦相手とぶつかったら「こわれる」ように設定を変更。

 そのままではオニに絶対勝てないので「球を発射ノードン」を置き、球がぶつかったらオニを含めたヒトが「こわれる」ように設定して、ゲームの骨組みを作ります。

 こうして次々に新しい「ノードン」を使ってゲームを作っていきながら、「アタマいいな〜〜」と感心させられたのは、自然と新しい概念が身につくことでした。

 たとえば入力ノードンに含まれる「モノがこわれたしゅんかんノードン」は、ゲームをリセットする「リトライノードン」とつなぐと、ヒトノードンにダメージが加わって「こわれた」とき自動でゲームがリトライされるプログラムができます。

 「もしAがBなら」という条件指定を「しゅんかん」と言い換えることでわかりやすくしてるんですよ。「な、なるほどー!」とオタク的に叫んでしまいました。

 そんなこんなでワーワー言いながら遊んでいるうちにゲームが完成!

 ステップを終えるたびにノードンたちが「すごい!」「才能あるんじゃない?」とベタぼめしてくれるので承認欲求も満たされます。いやーそんな本当のこと言わなくても!

 任天堂の担当者によれば、とにかく「意地でも最後までゲームを作ること」をコンセプトに、いかに挫折せずにユーザーを完成まで導くかに腐心したということ。

 親切設計に加え、ゲームを完成させて遊ぶまで、すべての工程で気持ちよく操作できるのもポイントだなと感じました。「やらされてる感」が全然ないんです。

 思えばスーパーマリオも、ボタンを押して動かすのが気持ちいいから面白いわけです。マリオの動きがぎくしゃくしていたらきっと大ヒットはしなかったでしょう。

 担当者は「これまで様々な娯楽を作り続けてきた任天堂のノウハウが詰め込まれているんです」とも話していました。最初に飽きられたら最後までやってもらえないですしね。ああ、ゲームをつくるってそういうところなんだな〜と納得しました。

●理想的なプログラミング入門

 いま子ども向け市場は右を見ても左を見てもプログラミングです。

 小学校でのプログラミング教育が必修化され、文科省調査によれば今年度内に生徒一人一台端末の整備をする自治体は99%に達する予定。

 プログラミング教室は小さな町でも見かけるようになり、「Scratchをベースとしたプログラミング体験ができるアプリ」はあらゆるデバイスで提供されています。

 そんななか、本作はいわゆるプログラミング教材とはちょっと方向が違っています。

 「本作は学校教育に対応した製品ではなく、独自のゲームプログラミング体験によって、楽しみながらプログラミング的思考に触れられるソフトです」とわざわざパンフレットに書いているとおり、直接お勉強になるものではありません。

 しかし、こんなに夢中になれるプログラミングソフトはこれまでで初めてでした。

 今回の体験中、ナビつきレッスンでつくった鬼ごっこのキャラクターを巨大化させて、「巨大なボスと戦うゲーム」をつくれないかなと思いたんですね。

 そこで試しにヒトの移動スピードを遅くして、足場を飛んで、ドシドシ追いかける巨人から逃げる設定にしてみたら、それだけでもうめちゃくちゃ面白いんですよ。

 そこから「どう逃げるか」「どう戦うか」「中ボスも作れないか」などと考えはじめたらもう止まらなくなり、無限に作りこんでいけそうな勢いでした。

 すべてがそうですが、プログラミングも夢中になることが始まりだと思います。

 「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」は夢中になるという点において理想的なプログラミング入門用ソフトといえるんじゃないでしょうか。

 というわけでまずはPython独学に挫折したお父さんがやりこんでみようと思いました。4歳児くんはちょっと待っててね〜〜!

   

書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ。4歳児と0歳児の保護者。アスキーキッズで「ほぼほぼ育児」「ベビもの」連載。Facebookでおたより募集中

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