今年は1.4万人超が参加登録、日本MS「de:code 2020」が開幕
文●大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp
2020年06月17日 07時00分
日本マイクロソフトでは2020年6月17日から6月30日まで、開発者向けイベント「de:code 2020」をオンライン開催する。それに先立ち、6月16日には報道関係者を対象にイベント概要などを紹介する説明会を開催した。
オンラインでも100以上のブレイクアウトセッション、ブース展示を開催
de:code 2020は、米マイクロソフトが今年5月に開催した開発者向けイベント「Microsoft Build 2020」の内容を中心に、マイクロソフトのプラットフォーム全般に関する最新技術やトレンド、今後注目すべきイノベーションを学べるセッションなどを提供するデジタルイベント。オンラインでの参加登録をすれば無料で参加できる。
通常のWebサイトからセッション動画の視聴や資料ダウンロードを行う方式に加えて、今回はFIXERが開発した「cloud.config Virtual Event Service(ccVES)」を用いて、バーチャル空間内でセッション会場やEXPO会場(ブース展示会場)を体験する方式も用意されている。
セッション会場では、基調講演のほかテーマ別の8トラックで合計108のセッションが用意されており、参加者はそのすべてをオンデマンドストリーミング形式で視聴できる。会期初日の6月17日には40セッションが公開され、その後、開催期間を通じて段階的にセッションは公開されていく。公開後のセッションは、オンデマンド配信によって会期中いつでも視聴が可能だ。
またバーチャル空間のスポンサーEXPO会場では、紹介動画コンテンツの視聴や資料ダウンロードだけでなく、参加者と出展者が「Microsoft Teams」を通じてコミュニケーションできるといった仕組みも用意されている。そのほか、参加者どうしの交流を目的としたコミュニティイベントや、「意外な開発者やスペシャルゲスト」によるセッションの公開も予定していると説明した。
「de:code 2020そのものが、Azure開発者により作り上げられたイベントになった」
日本マイクロソフトによると、例年開催してきたリアルイベントのde:codeは参加者2000人強の規模だが、今回は6月16日午前の時点ですでに1万4000人の事前登録があったという。日本マイクロソフト セントラルマーケティング本部の白戸順子本部長は、今年のde:codeがデジタルイベントとして開催されるに至った経緯を説明した。
当初は今年のde:codeもリアル会場での開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴いデジタル開催への移行を決定。およそ2カ月強の準備期間中、セッション動画の収録から開発に至るまで、関係者間をTeamsでつないで作業を進めてきたという。
「リモート環境下でDevOpsを取り入れ、自宅や遠隔拠点から開発。Azureの機能を最大限活用した。スタッフやスピーカーも自宅などでコンテンツを制作し、オンライン共同活動という新たな仕組みで準備を進めた」(白戸氏)
de:codeがバーチャル空間で開催されるのは始めてのことだ。このバーチャルイベントプラットフォームも、もちろんMicrosoft Azure上で稼働している。白戸氏は「de:code 2020そのものが、Azure開発者によって作り上げられた、開発者のためのイベントになった」と表現する。
「インパーソンによる開催の良さをそのままに、デジタルに最適化した空間で新たな体験を楽しめる。リアルな会場では数週間もの長期開催はできないが、バーチャルイベントであればそれも可能になる。デジタルならではのエクスペリエンスを体験できる、大型デジタルイベントを目指す」(白戸氏)
日本マイクロソフトでは、バーチャルイベントについて「地方からの参加者を含めて、より多くの人が参加できるのが特徴」としており、会期中のいつでもコンテンツを体験できる点もメリットとして挙げる。出展者にとっても、リアル会場のような参加者数制限がなくなるため、より多くのリードを獲得できるメリットがあるという。
その一方で、イベント後の参加者間の交流やハンズオンについては、現状ではまだリアル会場のような体験ができないという課題もある。これについては「これまでの取り組みのなかで、イベントの特性ごとに『デジタル化したほうがいいもの』『デジタルでは難しいもの』がわかってきた」と述べ、イベントの目的や参加者の状況などを含めて検討していくことが必要だとした。「バーチャルイベントは、今後のニューノーマル社会への貢献が期待できる」(日本マイクロソフト)。
FIXERがAzure上で開発したイベントサービスを採用、大規模イベントにも対応
今回のde:code 2020は、FIXERがAzure上で開発、運用するバーチャルイベントサービス、cloud.config Virtual Event Service(ccVES)を使って開催される。FIXERは、Azureマネージドサービスパートナー(MSP)として最高位の認定資格である「Azure Expert MSP」を取得しており、金融分野などのAzure活用案件で高い実績を持つ。
説明会に出席したFIXER 代表取締役社長の松岡清一氏は、「わたし自身も毎年de:codeで多くの人に出会えるのを楽しみにしてきた。そうした有意義な機会を、バーチャルでも実現したいと思って開発したサービス」だと述べ、より多くの参加者に3D空間で出会ってもらいたいと語る。
「ccVESは数十人規模でアジャイル開発を行った。de:code 2020には予想以上の参加登録があり、現在、クラウドを活用して設備の拡張を行っており、コンテンツの安定運用に向けた準備をしている。そこが苦労した部分」(松岡氏)
ccVESが実現するバーチャルイベント空間は、基本的に「ラウンジ」「EXPO」「セッション」の各会場で構成される。
サインインした参加者が3Dアバターを選択すると、まずはイベントの起点となるラウンジに入ることができる。ここは“参加者をもてなす場”と位置づけられており、セッション一覧や出展企業一覧、さらにイベントに関するツイートなど、イベントのブランディングを行うための柔軟なデザインが可能になっている。なお、他の3Dアバターも表示して視覚的なにぎわいを演出するが、数千人、数万人規模になるとアバターが“混雑”してしまうため、表示は数十人規模に抑えているという。
EXPOはブースが立ち並び、出展企業のコンテンツ視聴や資料ダウンロードを提供するエリアだ。バーチャル空間のため、展示会場の面積に縛られず出展ブース数を拡大できるメリットがある。同社 Azureビジネス本部 部長の田中啓之氏は「de:code 2020での展示方法は出展各社でさまざま。用意したコンテンツを視聴してもらったり、ミニセミナーを開催したり、Teamsでの直接のコミュニケーションを前提としているブースもある」と説明する。
セッション会場も会場の広さに縛られることがなく、Azureインフラの活用で数万人規模での同時視聴にも対応できる。バーチャル空間内を移動してスクリーンを好きな角度から見たり、近づいて聞くことも可能。また、参加者側には聴講したいセッションが同時間帯にあっても後から聴講することができるメリットが、講演側にとってはセッション終了後のアンケート集計が迅速にでき、生の声を収集できるメリットがある。
なおccVESの認証基盤には「Azure Active Directory B2C」を採用。また、イベント主催者は、個人情報を保護しながらユーザーや出展社、セッション別の行動ログを取得することができるため、人気コンテンツ分析などのデータ活用も期待できるという。
なお、ccVESはB2B向けサービスとして開発されている。業務PCやスマートフォンなど、必ずしも3Dビューを快適に利用できる業務デバイス環境ばかりではないことから、通常のWebサイト(2Dビュー)経由でも同じようにイベント参加できるよう設計されている。
ccVESの今後の展開について、FIXERの松岡氏は、今年下半期には常設ワールド(ショールーム)機能を追加してパッケージ化したうえで、2021年1月以降には物販/決済機能、常設空間への広告表示機能などを追加していく計画だと説明した。すでに、年内に開催される複数のエンタープライズデジタルイベントで採用が見込まれているという。利用価格は、今回のような数万人規模のイベントの場合、Azureのプラットフォーム使用料とソフトウェア提供料を合わせて数千万円から提供する予定だという。
今回、既存のデジタルイベントサービスではなく新規開発したものを採用した理由について、田中氏は「国内外のさまざまなものを検討したが、B2Bに特化したイベントプラットフォームが見当たらず、さらにウェビナーを超えるようなサービスを提供できるものもなかった」と説明した。複数のAzureパートナーに声をかけた結果、FIXERが提案したccVESが今回のニーズにマッチしており、さらに発展性も期待できると考えたという。
なお日本マイクロソフトでは、今年9月までのイベントについてはすべてオンライン開催することを決定している。それ以後については、社会情勢や新型コロナウイルスの感染収束状況などを見て決定するとしている。
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