5Gスマホ買ってもポイント1% 量販店で法改正の弊害感じた

文●石川温 編集● ASCII

2020年03月30日 09時00分

シャープ「AQUOS R5G」(編集部撮影)

 先週、3キャリアが相次いで5Gサービスを開始した。

 筆者は1月に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」という書籍を上梓していることもあり、「本を出してみたものの、実際、5Gサービスはどれくらい場所で繋がり、速度はどれくらいのものなのか」を試したくて、サービス開始初日に5Gスマホを買いに行った。

 ちなみに購入したのは、3月25日開始のNTTドコモが「Galaxy S20 5G」、3月27日開始のソフトバンクが「AQUOS R5G」だ。KDDIは3月27日から5Gをスタートさせているが「Xperia 1 II」の発売が5月以降ということで、しばらく待つことにした。

●「ポイントは1%になります」「法律が変わりまして……」

 発売当日、向かった先は家電量販店。25日はビックカメラ、27日はヨドバシカメラであった。

 仕事柄同じスマホを2年間、使い続けることはなく、新機種が出たら買い換えるというサイクルを繰り返しており、古くなったスマホは中古買取業者に売ったり、ネットオークションで処分している。そのため分割ではなく一括で買うようにしている。

 一括で購入するため、家電量販店で購入した方がポイントが付与されてお得なケースが多い。

 最初の5Gスマホ、しかも国内トップメーカーのハイエンド機種ということもあり、10万円を超えるのが当たり前となっている。少しでも財布の負担を減らすため、10%のポイントがもらえる家電量販店に足を運び、開店前に並んだのであった。AQUOS R5Gはソフトバンクで購入すると12万円を超える。1万円以上のポイントが返ってくるのは、かなりありがたい。

 幸か不幸か、25日も27日も、自分と同じく、開店前に並び、我先にと5Gスマホを購入するという人は皆無だったので(新サービスが始まるというのに誰も並ばないというのはなんとも寂しいが)、すんなりと機種変更の契約作業を進めることができた。

 1時間弱で手続きも終わり、いざ会計の段階になると店員さんから「ポイントは1%になります」という聞き捨てならないセリフが。聞き間違いかと思い、確認すると「1%です」とのこと。

 「家電量販店なのになぜポイントが1%?」と聞いてみたところ、「去年、法律が変わりまして」と申し訳なさそうに謝られた。

●ヨドバシカメラが最後まで抵抗したが、結局1%に

 その瞬間、「あ、そういうことか」とすぐに納得してしまった。

 実は2019年10月に電気通信事業法が改正され、端末販売と通信契約が紐づいている場合、端末の割引は上限2万円までという制限がついた。この金額はキャリアが設定するものだけでなく、販売店が設定する金額との合計とされている。

 ポイントを従来通り10%付与すると、他の割引施策と合算したときに2万円を超える可能性が出てくる。そのため、昨年秋から、携帯電話の販売において家電量販店では、ポイントの付与を10%から1%に変更したというのだ。

 店員さんによると「法改正で、ポイント付与率の改定に真っ先に動いたのがヤマダ電機。次にビックカメラ。ヨドバシカメラが最後まで抵抗していましたが、結局、1%になってしまいました」とのこと。

 今回、AQUOS R5Gは12万9600円であったため、1万3000円近いポイントがもらえると期待していたのだが、結局、もらえたのは1298ポイントしかなかった。

 店員さんも「昔は5Gみたいな新しいサービスが始まる時は大盤振る舞いな割引でお店も盛り上がったんだけどねぇ。キャッシュバックで何万円も出ていたし。今はがんじがらめで何もできないよねぇ」とぼやいていた。

●ポイント付与まで改悪させるのはやりすぎでは

 確かに、昔はキャッシュバックや実質ゼロ円など、羽振りのいいキャンペーンで店頭は賑わっていた。それによって、スマホが一気に普及したと言っても過言ではない。

 ただ、かなり行きすぎた割引施策であったことは間違いない。そうした割引を規制する流れになるのは仕方ないかもしれないが、家電量販店のポイント付与まで改悪させるというのは、法改正としてやりすぎなのではないか。

 高額なスマホを一括で購入する代わりに、ポイントをもらって他の電化製品を買うのに使うのを楽しみにしている人もいるはずだ。そうした庶民の買い物の楽しみ方を奪うために、わざわざ電気通信事業法を改正したのか。

 法改正で無理やり「端末の割引は上限2万円まで」というルールを作ってしまった故に、消費者に不利益にしかならない弊害が出てしまっているようだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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