コミケ97の二次創作人気を調査&次回予想~VTuber、鬼滅他拡大

文●myrmecoleon 編集●ASCII

2019年12月24日 15時00分

約3万2530サークルが参加するコミックマーケット97での二次創作人気を調査!

コミックマーケット97は12月28日~31日
冬コミ初の4日間開催

 今年も2019年12月28日(土)から31日(火)にかけて、東京お台場の東京ビッグサイトで同人誌即売会「コミックマーケット97」が開催されます。来年の東京五輪の開催にともない東京ビッグサイトの東展示棟が使用できなくなったため、前回同様に従来の西展示棟と新設の南展示棟、遠隔会場となる青海展示棟を使用した4日間開催、約3万2530サークルが参加予定です。冬のコミックマーケットでは初の4日間開催となります。

 第2期第31回では「コミックマーケット96」に関しての記事を書きました。今回はコミックマーケット97のサークル数の動向をみていきます。

 これまでの回でも説明した通り、コミックマーケットではジャンルコードという仕組みがあり、これを目安にどういった分野のサークルがどれくらい参加しているかを調べることができます。

 過去3回の参加サークルの比率の推移はグラフ1の通り。今回は創作ジャンルと、後述の通りVTuber人気が拡大したことから、これを含む同人ソフト関連が特に増えています。

公開されているコミックマーケットWebカタログ・DVDカタログのジャンルコード情報を参考に、いくつかに区分けしたコミックマーケット95から97のサークル数の比率の推移

 この連載ではコミケの6~7割を占める二次創作サークルについて注目し、作品ごとのサークル数をカウントしています。数え方については以前の記事で細かく説明しましたのでそちらをご確認ください(第1期第39回の囲みコラム「サークルの数え方」参照)。

 今回のコミックマーケット97のサークル参加申し込み期間は2019年8月5日から19日まででした。このため今回のデータは“2019年8月にコミックマーケット97に申し込んだ同人サークルがどのような作品に関する同人作品の頒布を予定していたか”が反映された数字となります。

 現在のものではありませんし、あくまでコミックマーケット内での参加の規模を見ているものです。コミックマーケットは比較的参加者の年代が高いこと、関東圏の参加者の割合が多いこと、海外のサークルは参加しにくいことなどの偏りがあり、同人サークル全体の傾向を示すものでもありません。

 上記のような事情もありますが、コミックマーケットは最大の同人誌即売会であることから、一定の参考になると評価してご紹介しています。これらをふまえてご覧ください。

今回もFateがトップ維持、バーチャルYouTuberさらに増加

 上記の方法で調べたコミックマーケット97で多かった作品はグラフ2の通りです。参考にコミックマーケット96での数も載せています。前回から今回は会場の変更がないため全体のサークル数はほぼ同じです。

 トップは今回も「Fateシリーズ」。また「艦隊これくしょん」が大きく落ちて「アイドルマスター」が2番手に返り咲きました。「艦隊これくしょん」と「アイドルマスター」の入れ替わりは前回可能性を指摘した内容です。ついで「東方Project」、そして急増した「バーチャルYouTuber」が4番手に入りました。

コミックマーケット97のWeb・冊子・DVD-ROMの各カタログを参考に、各作品の二次創作サークルの数を概算したもの。調査方法は第1期第39回の囲みコラム参照。正確な数字は求めるのが困難のため参考程度に。グラフが青いのは男性サークル寄り、赤いのは女性サークル寄りの作品。中間程度のタイトルは紫とした。また参考に前回のサークル数を灰色で示している

 トップは前回と同じく「Fateシリーズ」でほぼ同規模です。「艦隊これくしょん」は大きく落とし、「アイドルマスター」もやや減少。

 今回も大きく増加したのは「バーチャルYouTuber」。後述の通り予想以上の拡大で800サークルを越えました。次回コミックマーケット98では単独ジャンルコードとなります。

 同じく増加を予想した「鬼滅の刃」も増えていますが、こちらは予想ほどは伸びなかったようです。

 前回の予想と結果をまとめると下記の通り。今回の全体サークル数に合わせて補正した予想値(上の青が上限、赤が下限)と今回の結果です。

 上方向に外したのは予想以上に増加した「バーチャルYouTuber」、減少を予想したが維持した「ユーリ!!! on ICE」、下に外したのは減少を予想したものの予想以上の減少幅となった「艦隊これくしょん」と「刀剣乱舞」、予想通り増加したものの予想ほど増えなかった「鬼滅の刃」が挙げられます。

 その他に「ガールズ&パンツァー」「VOCALOID」「TIGER&BUNNY」は予想の範囲ギリギリの結果となっています。

 サークル数予想としては20作品中15作品が的中。グラフを見れば分かる通りいずれもわずかな外れです。確実ではないものの、おおむね妥当な推定ができているようです。

前回の予想結果を今回の全体サークル数に合わせて補正したものと今回の結果の比較。上の青棒が予想した上限、赤棒が下限。〇がコミックマーケット96の結果。上限下限を越えたものは赤字、ギリギリ枠内のものは黄色

今回は男性向サークル減少、ジャンル別ではFateがトップ

 グラフ4で作品が該当するジャンルコードと、その他のジャンルコードで分けたサークル数をグラフにしてみました。

 ジャンルコード「男性向」は前回同様「Fateシリーズ」「艦隊これくしょん」「アイドルマスター」「アズールレーン」「グランブルーファンタジー」「ガールズ&パンツァー」の並び。次いで僅差で「ラブライブ!」と「ご注文はうさぎですか?」が並びます。

 「東方Project」で同様の傾向(男性向)のサークルは、これまでも紹介している通りジャンルコード「東方Project」内で主に申し込まれ、こちらは少ないです。最近ではほかのジャンルコードでも同様の動きが見受けられます。

 前回より男性向ジャンルのスペース自体が減少しており、全体にサークル数は落としています。作品サークル中の「男性向」ジャンルコードの比率も軒並み下がっています。比較的減りが小さい作品では「アズールレーン」と「ガールズ&パンツァー」が挙げられます。また「バーチャルYouTuber」は全体が急増したわりに男性向は増えておらず、男性向の比率は3%ほどと一般化しています。

 ジャンルコード全体の動きとしては、バーチャルYouTuberやVOCALOIDを含む「デジタル(その他)」が急増。ほか「創作(少年)」「創作(少女)」「オリジナル雑貨」「ゲーム(ネット・ソーシャル)」「ゲーム(RPG)」「スクウェア・エニックス(RPG)」「あんさんぶるスターズ!」「コスプレ」が増えています。特に「ゲーム(ネット・ソーシャル)」と「コスプレ」は継続しての増加。

 減っているジャンルコードとしては「アズールレーン」「艦これ」「刀剣乱舞」「ガルパン」「進撃の巨人」「ヘタリア」などの個別作品のほか、「ゲーム(その他)」と「ゲーム(電源不要)」が今回減らしています。

 ジャンルコード別のサークル数の細かい数字はブログにてすでに公開していますのでそちらをご参照ください。

グラフ2と同様、各作品のサークル数を、申込みジャンルコードについて通常誘導される該当ジャンルコード、男性向、それ以外(コスプレ等)で分けた積み上げグラフ

次回予想:トップは変わらずFate、鬼滅の刃が大きく拡大
バーチャルYouTuberは1000サークルに届く?

 今回もpixivのイラスト投稿数を参考に次回コミックマーケット98のサークル数の増減を予想してみます。なおサークル数の予想は、コミケ申し込み前のpixivの各作品の投稿数、pixiv投稿者中の海外投稿者の推定比率、中高生の推定比率、コミケ参加サークルのpixiv使用率、コミケの日程、過去の予想結果などを参考としています。

 今回は11月1日から12月18日昼までのpixivの投稿イラストのデータを使用しました。グラフ5ではここから予想した次回サークル数の範囲をグラフ3と同様の形式でまとめています。

 予想には次回の上位20作品に見込まれるタイトルを選んでいます。

 次回コミックマーケット98の申込みは12月18日から1月7日までですので、今期アニメの評価やコミックマーケット97中の発表などにも左右されますが、おおまかな傾向はつかめると思われます。

 今回増加が見込まれるのは「鬼滅の刃」と「ヒプノシスマイク」。いずれも2019年にヒットした女性人気の高い作品で、2020年の展開もすでに決まっています。

 特に「鬼滅の刃」はテレビアニメが放送されていた夏以降大きく人気が拡大し、今回pixivではFateシリーズを上回る数のイラストが投稿されていました。前回予想を若干外したため今回も確実ではありませんが、300サークル以上は参加するのではないかと予想されます。

 ほかでは「アズールレーン」「バーチャルYouTuber」も増加の可能性が高いと思われます。「バーチャルYouTuber」は1000サークル越えもありうる勢い。また「艦隊これくしょん」「東方Project」「バーチャルYouTuber」は予想の幅が重なるため、次回これら3~5位が入れ替わるかもしれません。

 「Fateシリーズ」は減少が見込まれますが、次回もトップは間違いないと思われます。ほか「ラブライブ!」「ユーリ!!! on ICE」「TIGER&BUNNY」「黒子のバスケ」は減少の見込みです。

 なお、こちらの推定は全体の比率に対して行なっているものです。次回も全体のサークル数はあまり増減しないと思われますが、若干の調整はあるかもしれませんのでご了承ください。

 また次回コミックマーケット98は東京五輪に伴う会場の問題から5月の開催となりました。5月開催のコミケは特別開催のコミケスペシャルを除けば2度目、前回は1980年のコミックマーケット14で40年ぶりとなります。春開催も1989年のコミックマーケット35以来です。これまでと開催時期が大きく異なることから、こちらの予想にも影響はあるかと思いますのでご了承ください。

次回コミックマーケット98の作品別サークル数の予想と今回コミックマーケット97の結果の比較。上の青棒が予想している上限、赤棒が下限。●がコミックマーケット97の結果

イベント告知

 コミックマーケット97にサークル参加します。スペースは12月30日・3日目月曜の南ム-10aです。ニコニコ動画統計データハンドブックの最新版を出します。その他マンガ図書館やVTuberについての同人誌を発行しています。新刊・既刊はCOMIC ZINに委託中。ご興味があればどうぞ。

筆者紹介:myrmecoleon

 趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。コミケ・ニコニコ動画・pixiv・deviantARTなどの調査を行ない、『ニコニコ統計データハンドブック2017』など同人誌としてコミケで頒布。2014年に自身の企画で「次元の壁をこえて 初音ミク実体化への情熱 展」を開催。元明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β実行委員。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった著作に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)など。画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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