ソニーとボーズの“これだけは外せない”ワイヤレススピーカーをチェック!

文●鳥居一豊

2015年10月06日 12時00分

iPhoneでワイヤレスオーディオを楽しむことをおススメする本特集。この特集を掲載するにあたって、どうしても外せない製品がある。ソニーの「CAS-1」とボーズの「SoundTouch 30 Series III」だ。

正直、その実力と比較して話題性があまり高くない気がしてならない。そこで今回はこの2製品を集中的に紹介していく。

デスクトップで本格的な音楽を楽しむ
ワイヤレス時代のソニー「CAS-1」

ソニー「CAS-1」

9月に開催されたヨーロッパのエレクトロニクスショーである「IFA2015」で、初のお披露目となったソニーのCAS-1。10月17日発売予定で、予想実売価格は8万6000円前後だ。

型番は「Compact Audio System」の略で、まさにそのままズバリのネーミングだ。本体、スピーカーとも高さ178mmのタテ型スタイルで、机の上などで手軽に使えるサイズのコンポ。

機能的には、Bluetoothに対応するほか、USB端子を2系統装備し、PCのオーディオデバイス(USB DAC)として利用可能。CDプレーヤーやFM/AMチューナーはなく、オーディオ機器ならたいがい備えているアナログ入力さえない。ワイヤレス音楽再生やPCとのUSB接続という現代的な音楽再生スタイルに特化している。

Bluetoothでは、独自の高音質コーデックの「LDAC」と、iPhoneなどと親和性が高い「AAC」にも対応。ワンタッチでペアリングができるNFC対応は当然。PCとの接続時では、最大192kHz/24bit、DSD音源は2.8MHzまでリニアPCM変換で対応している。

圧縮音源やCD品質の音源をハイレゾ相当の音質にアップスケーリングする「DSEE HX」も搭載。このあたりのフィーチャーはソニーの最新モデルとしては当然の内容だ。

スピーカーアンプ部の基板

最大の特徴は、音質に徹底してこだわった作り。専用設計のアンプ部は、同社のフルデジタルアンプである「S-Master HX」をベースとした新設計のもので、アンプ部は左右対称設計となっている。

左右対称とは、ステレオ音声の左右のチャンネルのアンプ回路が対称となっていることで、左右のアンプの動作にズレがなく、理想的なステレオ再生が行なえるもの。

ピュア・オーディオでは当然の設計だが、ミニコンポなどでは省スペースにたくさんの機能を詰め込むこともあり、こうした設計ができない製品が多い。このあたりをしっかりとやっていることがポイントで、デジタルアンプ部は2つのチャンネルの構成がきれいに2つ並んでいるのがわかる。

ここまででも十分にマニアックなのだが、オーディオマニアがさらにニヤリとするもうひとつのポイントは、背面のスピーカー端子の配列。

背面の接続端子。Bluetoothのペアリングボタンやヘッドホン用のゲイン切り替え、USB A端子と電源端子などがある。スピーカー端子の配列に注目

普通は左+/左-/右+/右-の順とすることが多い。この理由は接続時に間違えにくいからだ。しかし、CAS-1は、左+/左ー/右-/右+と回路設計そのままに対称の配列になっている。内部の回路基板の設計はユーザーには見えない部分だが、せっかくの対称設計をアピールしようという、技術者の矜持を感じる(ただし、配線の間違いには注意)。

(次ページに続く、「本格的なヘッドフォンアンプにもなる!」)

本格的なヘッドフォンアンプにもなる!

本体正面。上が電源スイッチで、下にあるセレクターはBluetooth/USB A/USB Bの3つが選べる。中央がボリュームで、下にはUSB B端子と、削りだしの真ちゅうで強化されたヘッドホン出力(ステレオミニ端子)がある

現代のオーディオ装置としてヘッドホンでの再生にもこだわっている。ヘッドホンアンプ部は同社のポータブルヘッドフォンアンプである「PHA-2」(実売5万2000円)と同じオペアンプ「TPA6120」を採用。DACも「PCM1795」として、ほぼ同等の実力を備えている。

ヘッドフォンアンプ部の基板

しかも、その基板は独立構成。(スピーカー用の)アンプ側とヘッドホンアンプ側の2枚の基板で構成されており、電源部もそれぞれ独立して備える。

さらに、おたがいの発するノイズを遮断するため、スピーカー駆動時とヘッドホン駆動時では、未使用のアンプ部の電源をカットするようになっている。どちらか一方しか動作させないことでノイズの影響が及ばないようにしているわけだ。

2枚の基板が対向配置されている

この2枚の基板は、右側面と左側面に対向配置となっている。これを箱状に組み立てられるインナーシャーシに強固に取り付けられる。

こうした構成も実に贅沢な作りだ。このほかにも、ボリュームはビット数を間引いて音量を小さくするのではなく、パルスの振幅を制御して音量を調整することで情報量を劣化させない「パルスハイトボリューム」を採用。

ちなみにこれは、ソニーが以前製品化していたハイエンドオーディオ用のフルデジタルアンプ(TA-DA9100ESなど)で採用されていた技術だ。

こだわり抜いたスピーカー

スピーカー部の前面と背面。コンパクトな2ウェイスピーカーとしてオーソドックスなデザインだ。脚部の真ちゅう製フットが大きなポイント。背面のスピーカー端子はカバーを外せばバナナプラグの使用も可能だ

スピーカーにもこだわりが満載だ。ユニットは14mmソフトドームトゥイーターと62mmカーボンファイバーコーンウーファーによる2ウェイ構成で、再生周波数帯域は60Hz~50kHzとなっている。

デスクトップに置いて使う(つまり近接して聴く)ことを主眼とし、ユニットの歪みを低減することを徹底している。ニアフィールドリスニングでは耳に届いてしまうわずかな歪み感をなくし、ノイズ感のない晴れやかな音を追求している。

スピーカーの透過イメージ。中央をバスレフポートが貫く

バスレフポートは開口部を底面とし、フレア状に広がる形状とすることで風切り音の発生も抑制。徹底して静粛性を追求した。

エンクロージャーは当然ながらリアルウッド。側面や天面、底面は9mm厚のバーチ合板、バッフル面と裏面は12mm厚のMDF板を使用。ちなみにCAS-1はホワイトとブラックの2色があるが、スピーカー部はホワイトは塗装による仕上げで、ブラックは黒に近いウッドの突き板仕上げだ。

底部にはバスレフポートがある。前方のスパイクは長いものと交換が可能

そして、このクラスのスピーカーには珍しく、底面にはスパイクも備える。真ちゅう製の本格的なものだ。このスパイクは交換が可能で、前側用に背の高いスパイクが付属する。こちらを使うとスピーカーが約8度上を向き、デスクトップでの再生時に机の面の反射を避けることができる。

スピーカーに下に置く、スチール板も同梱

さらに、スピーカーの足元に敷く、スチール製のスピーカーベースも付属。これは、設置する机などの材質に影響されずに本来の実力を発揮させるためのアクセサリー。底面から放射されるポートの低音を効果的に拡散させる役割も持つ。

付属のスピーカーケーブル

付属するスピーカーケーブルにもこだわる。デスクトップに置いて使うのに適した1.2mの長さで、よくある付属のスピーカーケーブルと違って折り目が残らない「ゆるまき」で同梱される。コンパクトに折り畳まれたケーブルは折りぐせのせいで見た目も悪いし、少なからず音質への影響もある。そこまで細かい対策が施されているのだ。

(次ページに続く、「ボーカルの浮かび上がるような音離れのよさが気持ちいい コンパクトで緻密な音場再現」)

ボーカルの浮かび上がるような音離れのよさが気持ちいい
コンパクトで緻密な音場再現

本体部の天面には、ハイレゾ対応を示すHi-Res AUDIOのロゴシールが貼られている

試聴は我が家の試聴室で行なった。試聴距離は設計時に想定したという75cm前後として、ノートPCの両側にスピーカーを置くような現実的な使い方に近い配置としている。まずは手持ちのiPod touchでBluetooth再生を行なったが、スピーカーが近いにも関わらず、スピーカーから音が出ている感じのない音離れの良さが印象的だ。

ポップスを聴くとボーカルがフワっとスピーカーの間に浮かび上がり、音像の厚みや実体感のある再現になる。その少し奥にギターやべース、ドラムなどが配置され、立体的なステレオイメージが得られる。

音場の広がりの豊かさと、個々の音像の定位のよさがきちんとバランスしている。ニアフィールドで聴いていることもあり、スケール感こそややコンパクトになるが、その分緻密にステージが再現される。

音色も、中高域の充実感と高域のしなやかな鳴りが特徴で、自然で爽快感のあるサウンドだ。低域はずっしりと来るような重みはやや軽めになるが、ドラムのアタックの力強さなが不足することもなく、物足りなさは少ない。

ちなみに、PCとUSB接続してハイレゾを含む音源も聴いてみたが、情報量はさらに増し、クラシックならばホールの美しい響き、ボーカルの豊かなニュアンスがさらに出てくる。こちらの実力の高さもかなり立派なものだ。

特にボーカルは絶品で、まさに手の届く距離に自分の好きなアーティストが現われたような感覚になる。ワイヤレスのBluetoothの再生もなかなかのものだが、本機のユーザーとなったならやはりハイレゾも試してみてほしい。

大音量が出せない環境でも安心!
小音量モード「LVM」で聴きやすい

付属のリモコン。左下に「LVM」のボタンがある

特筆したいのは、小音量再生のための「LVM(Low Volume Mode)」。これは小音量時に不足しがちな低音や高音の不足を補うもの。スピーカーの出力音圧レベルに合わせ、音量によって変わる人間の耳の聴感特性に合わせた最適な周波数特性の補正が行なわれる。

これも、ソニーの高級AVアンプが搭載していた「サウンドオプティマイザー」をベースにした技術だ。ただし、スピーカーの出力音圧レベルを測定する機能は持たないため、他のスピーカーとの組み合わせでは十分な効果が得られない。

CAS-1は本体部とスピーカー部、それぞれ単体での発売の要望もあったが、Low Volume Modeが十分に活用できないためにセットでの販売のみとなっている。それだけ、小音量時の再生を意識した製品ということだ。

単に音量を絞ってみると、その分だけ特に低音の伸びが失われ、ドラムのパワー感だけでなくボーカルも細身になるし、音楽全体がこじんまりとしてしまう。

そこでLow Volume Modeをオンにすると、ぐっと低音感のパワーが出て、音楽の痩せた印象が消え去る。絶対的な音量は小さいので、大音量時と比べればややスケール感はコンパクトになるが、魅力であるボーカルの音像の立体感は遜色ないものになる。

深夜でのリスニングやPCなどで他の作業をしながらBGM的に音楽を鳴らすような使い方では聴き心地もよく、快適に使えるだろう。

セットで8万円という価格は、従来のミニコンポの相場からすると機能もシンプルで、相対的に割高感も感じるが、見方を変えて本格的なオーディオコンポと考えると、かなりリーズナブルな値段と思う。コンパクトでしかも高音質ということに大きな価値を見いだす人ならば、本機はとても魅力的なものに感じるはずだ。

(次ページに続く、「Bluetoothに加え、Wi-Fi接続にも対応 ボーズ「SoundTouch 30 Series III」 」)

Bluetoothに加え、Wi-Fi接続にも対応
ボーズ「SoundTouch 30 Series III」

「SoundTouch 30 Series III wireless music system」。幅は435mmと一体型スピーカーとしてはけっこう大柄なサイズだ

ソニーのCAS-1のようなセパレート型の構成は、スピーカーの間隔を自由に選べるので音場感の再現に有利だし、PCとの組み合わせを考えると設置の点でも便利だ。

とはいえ、今やスマホがあればPCレスでも音楽再生が十分楽しめる時代。配線など不要で使える一体型に魅力を感じる人も多いだろう。

ボーズの「SoundTouch 30 Series III wireless music system」(実売価格 7万4000円)は、そんな一体型モデルのハイエンドと言えるモデルで、BluetoothとWi-Fiに対応。一体型で良い音を快適に楽しみたいという人には要注目の製品だ。

ちなみに、本機はもっともサイズの大きなモデルで、シリーズにはよりコンパクトなSoundTouch 20 Series III、SoundTouch 10がラインナップされている。

背面にはLAN端子やUSB端子、オーディオ入力(ステレオミニ端子)などがある

本機の大きな特徴は、BluetoothとWi-Fiを内蔵すること。アナログ入力(ステレオミニ端子)も備えるが、基本的にはワイヤレスで音楽を楽しむためのシステムと考えていいだろう。

Wi-FiではインターネットラジオやNASなどに保存した音楽データの再生が可能。これらの操作は、スマホ(iOS/Android)、およびPC用の用意されたアプリ「SoundTouch App」で快適に操作できる。

こちらでインターネットラジオ局を6つまで登録しておくことができ、その後は本体の操作だけでも手軽に使うことも可能だ。

中央左寄りにあるタテ長の穴がウェーブガイドのポート。内部は複雑な形状のダクトを持っており、低音の再生能力を増強する

スピーカーは2つの高性能ドライバーを搭載。これに加えて独自の「ウェーブガイド・スピーカー・テクロノジー」を採用し、迫力ある低音再生と豊かな広がりのあるサウンドを楽しめる。

本体サイズ以上のスケール感
トータルでのバランスを重視した音

上面にある操作ボタン。プリセット登録した6つのインターネットラジオ局の切り替えやBluetoothなどの選択、音量調整が可能。下に見えるディスプレーは有機ELパネルを採用する

まずはBluetoothを試聴してみたが、これだけ大柄なモデルだからさぞかしパワフルなサウンドかと身構えていたが、出てくる音は想像以上に上質で豊かな音だった。

低音はサイズ以上のスケール感があり、同等かそれ以上のサイズのスピーカーと同じレベルの低音感がある。しかも、ことさらに低音をブリブリと鳴らすのではなくむしろ控えめに音楽を支える感じ。

だから、クラシックではバイオリンが奏でる主旋律に重ねてコントラバスが弾く通奏低音の関係性がよく出て、オーケストラの雄大なスケールと、個々の楽器の音色の細やかな再現が丁寧に再現された。

続いては、PCと接続してNASの音源を聴いてみたが、情報量が豊かになることで楽器の音色や声の質感がより豊かになる。

このところのボーズは、パワフルな低音ではなく、トータルでのバランスの良さを印象づけるモデルが増えてきていると感じているが、このモデルはその延長線上にあり、ボーズらしい聴いていて気持ちの良い味付けはあるもののかなりHi-Fi寄りのバランスで、繊細さや表情の豊かさがよく感じられる。

一体型のため、ステレオ的な音の広がりや音場感こそやや物足りない面もあるが、本格的なオーディオコンポのように目の前に置かない使い方でも、部屋中を気持ち良く音楽で満たすような鳴り方は、音楽を気軽に楽しみたいという人には親しみやすいものだろう。

(次ページに続く、「ダウンサイジングという新たな流れ でも音質は追求されていく」)

ダウンサイジングという新たな流れ
でも音質は追求されていく

今や音楽は、CDプレーヤーなどを使って手持ちのディスクを再生するのではなく、CDからリッピングしたデータをスマホのメモリーに保存して、手軽に再生するスタイルが主流と言っていい。

さらに、Apple Musicなどの定額制音楽配信サービスを利用すれば、CDをリッピングすることなく、膨大な楽曲をストリーミング再生で楽しめる。

しかもワイヤレスで快適に再生できる。ワイヤレス再生の場合は基本的にはCDと同等レベルの音質となるが、手元に置いたまま使いたいスマホでの再生として、ワイヤレス再生はとても便利だ。

従来、こうしたカジュアルなスタイルの音楽再生は、前回紹介したBluetoothスピーカーのようにサイズもコンパクトで使いやすさを重視したものが中心だった。しかし、デジタル音楽再生の普及と、デジタルアンプなどが急速に熟成が進んだこともあり、Bluetoothスピーカーもかなりのレベルの音質で楽しめるモデルが増えてきた。

これと同時に、本格的なオーディオコンポにも変革がはじまってきている。ダウンサイジングという新しいトレンドだ。これまでもミニコンポやマイクロコンポという、コンパクトなオーディオコンポはあったが、従来のアナログ回路主体のオーディオ設計ではサイズを小さくするのには限界があり、音質が犠牲になる。

そのため、現在のBluetoothスピーカーでも物足りないという高音質派にはあまりいいイメージがなかった。

そこに登場したのが、新時代のコンパクトなコンポーネントオーディオ。デジタルアンプなどを積極的に使いこなし、コンパクトなサイズでも本格的なオーディオ機器に匹敵する高音質を実現したものだ。今ではフルサイズのオーディオ機器を発売しているメーカーからも、積極的にコンパクトなサイズのモデルがラインナップされてきている。

旧世代のミニコンポなどと比べると、大きく異なるのは機能性。基本的にオーディオ機能はシンプルで、モデルによって多少の差はあるがCDプレーヤーもFM/AMチューナーも内蔵しない。その代わりにワイヤレス接続やPCとのUSB接続などができるというわけだ。

今やスマホやPCで多くの音楽コンテンツにアクセスでき、ラジオも聴取できることを考えれば、コンポ側がそうした機能を持つ必要はない。機能をシンプル化した分、音質をしっかりと充実させていることが大きな違いとなる。

そんな最先端のオーディオ製品を投入したソニーとボーズ。セパレート型と一体型というスタイルの違いもあって、マニアックにオーディオ鑑賞をしようというとソニーの方が優位になるが、音楽との付き合い方は人それぞれで、好ましいものを選べばいい。

ボーズも一体型でここまで表現力の豊かな音を楽しめるという点ではかなりの実力。どちらもワイヤレス主体で音楽を楽しむコンポとしては、よくできた逸品だ。

時代遅れじゃない!
進化するミニコンポを紹介!!

さて、次回はミニコンポを取り上げる。上の方で若干ネガティブな表現をしたが、CDやラジオも一通り楽しみたいという人はまだまだ多いし、高機能は大きな魅力。

こちらもやはり最新モデルはBluetoothやネットワーク対応、デジタルオーディオ技術の進化でその実力を大きく高めてきている。そんな最新鋭のミニコンポの実力をじっくりと紹介しよう。

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