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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第277回

仮想通貨取引所の破たんで起きたこと。「史上最大」の詐欺、FTX創業者に禁錮25年

2024年04月02日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 仮想通貨(暗号資産)取引所FTXが2022年に経営破たんした事件で、米国の裁判所が創業者サミュエル・バンクマン・フリード被告(32)に禁錮25年の判決を言い渡した。判決には110億ドル(約1兆6600億円)という巨額の資産の没収命令も含まれている。

 バンクマン・フリード被告をめぐっては、FTXの破たん前に、顧客から預かった資産で別の仮想通貨や不動産を購入するなど、顧客の信頼を大きく裏切った行為が明らかになっている。こうした行為に対して、ニューヨークの連邦地裁が厳しい判断を下したことになる。

 この連載としては、創業者の犯罪行為に対する責任追及以上に、FTXの破たん後、どのような手続きが進んできたかに注目したい。日本では、比較的早期に返金の手続きが進められたが、米国をはじめとした海外では顧客の資産の返還は決着に至っていない。

史上最大の詐欺事件

 バンクマン・フリード被告に対する地裁の判決を受けて、捜査を担当したニューヨーク州南部地区のダミアン・ウィリアムズ検事は次のようなコメントを発表している。

 「サミュエル・バンクマン・フリードは史上最大級の金融詐欺を組織し、80億ドル以上の顧客の金を盗んだ」

 あらためて「史上最大」と言われる事件を振り返っておきたい。

 最盛期には世界で2番目あるいは3番目の規模とされた大手仮想通貨取引所の破たんは、2022年11月に明らかになった。

 主な舞台は、FTXと関連会社のアラメダ・リサーチだった。これまでの捜査と裁判の過程で浮上した事実は、世界中で繰り返されてきた、多くの巨額の詐欺事件を思わせる内容だ。

 FTXは取引所だが、アラメダ・リサーチは仮想通貨への投資や、仮想通貨関連のビジネスへの投資などを手掛けていた。アラメダ社が事業の失敗で巨額の損失を出した際、バンクマン・フリード被告は、FTXの顧客資産をアラメダ社に移し、返済に回した。

 顧客の資産は、バンクマン・フリード被告や幹部たちの高額の報酬、不動産投資、パーティーなどにも浪費された。被告が、アメリカの二大政党である民主党と共和党の政治家たちに対して、多額の政治献金をしていたことも明らかになっている。一連の捜査で、中国の政府高官に対して、4000万ドルの賄賂を贈っていた事件も明らかになった。

 バンクマン・フリード被告は破たん前、顧客たちに対して、顧客の資産は安全に分別管理されていると繰り返していた。これに対して検察側は、「80億ドル以上の顧客資産」を盗んだと指摘している。2024年3月末のレートで考えると、盗まれた顧客の資産は、日本円で1兆2000億円にのぼる。この金額を米国の捜査当局が「史上最大」と呼んでいる。

顧客資産の返還は

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