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鳥居一豊の「コンパクトスピーカーが好き!!」 第12回

4K UHD Blu-rayやSACDの再生にも対応!!

待望かつ優れた実力の新進ディスクプレーヤー、MAGNATAR「UDP900」「UDP800」を検証 (2/4)

2024年04月01日 13時00分更新

文● 鳥居一豊 編集●ASCII

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どこかで見た覚えのあるOSDはエミライ提供の日本語フォントを使用

 機能的にみると、USB DAC機能のほかはほぼ同じUDP900とUDP800。

 日本仕様のGUI(OSD)は共通だ。OPPOのプレーヤーと似ているという印象を持つかもしれないが、実は総輸入元のエミライがOPPOの時と同じように日本語フォントを提供していることが関係している。また、OSDメニューなども使いやすいようにカスタム制作している。

 メニュー画面が似ていて、機能的にもかなり近いということで、MAGNETARのプレーヤーはOPPO製品のクローンなのではないかと思う人もいるかもしれない。だが、まったくの新開発である。

 MAGNETARとしてはOPPOを愛用していたユーザーが有力な購入者となるのはわかっているので、機能はもちろん画質・音質もしっかりと研究してきたというのが正しい。実際の開発はまったくのオリジナルだし、OPPOでBDプレーヤーの開発に関わったスタッフが参加していることもないそうだ。参考のため、筆者が所持するOPPOの「BDP-105DJP」のOSD画面も掲載するが、機能が異なるためかなり違っているのが分かる。

UDP900のトップ画面。OPPOのUDP-205と似た印象だが、細部はいろいろと異なる。

OPPO BDP-105DJPのトップ画面。機能の違いもありまったく異なるデザインだ。

 MAGNETOARとは中性子星の意味があり、トップ画面でも宇宙の写真をイメージとして使っているが、下部にあるコンテンツを切り替えると背景の写真も切り替わる。これはなかなか洒落ている。設定の各機能を見ると、フォントが同じなので似た印象にはなるが、メニュー項目なども整理されてより使いやすく改善されている。OPPO BDP-105DJPと比べるとかなり変わっているのがわかる。

下部のコンテンツアイコンを切り替えたところ。それぞれに異なる写真に切り替わる。

肝心なのは画質と音質。その実力を筆者所有機と比較視聴

 剛性のしっかりとしたシャーシの作りなどを見ていても、ディスプレーヤーを作り慣れたメーカーのもののように完成度が高く、とても新しい会社の第1号機には見えない。このあたりは、DVDプレーヤー時代からOEMメーカーとして活躍してきた実績があるため心配はないようだ。画質・音質などについても、OEM供給先のメーカー(特に日本メーカー)からの厳しい要望に応えてきた経験があり、画質・音質を向上するノウハウもかなり蓄積されているという。

 それにしても画質・音質は最終的には作り手の感性で仕上げる面もあるので、そのあたりは新興メーカーでは経験が足りないところもあるのではないか。と、発表会の時点では頭の硬い頑迷なマニアのようにも感じてしまったのは事実だ。取材機が自宅に届いて設置をしながらも、出来の良さのほれぼれとする一方で画質・音質に関しては期待と不安の入り交じった印象だったのは間違いない。今までになくドキドキする視聴取材だった。

UDP900の設定画面。メニュー項目や設定内容なども変化している。

OPPO BDP-105DJPの設定画面。フォントこそ共通だが、内容はかなり変化している。

インプレ1 THE FIRST SLAM DUNK

 映像ソフトをチェックしてみた。ひとつめはアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」。これは今一番お気に入りの作品で、作者本人のカラーイラストが動いているような映像も、Dolby Atmos音声で体育館に居る雰囲気が満点の音響も気に入っている。本作の主に試合中のシーンを見ていく。いずれもHDMIケーブルを2本使用して1本はプロジェクター(Victor DLA-V90R)に、もう1本はマランツのAV10に接続。パワーアンプはマランツのAMP10。スピーカーの我が家の常設システムであるB&W Matrix801 S3を中心とした8.2.4ch構成だ。

DP-UB9000の画質/音質:
 最初は参考用にメインのプレーヤーにしているパナソニックの「DP-UB9000」(廃盤)でチェック。イラストのような筆致を感じさせるユニフォームの陰影や絵の具らしいほんの少し沈んだ印象の色や肌と汗のタッチも鮮明。精細さは今でも十分な実力だ。ただし、輪郭の描線は硬めのタッチでもあり、ところどころでジャギー感が目に付くこともある。音響は体育館特有の音の響きやボールの弾む音、シューズが鳴らすキュッという音も明瞭でしかも定位は良好。音楽も十分にエネルギーが豊かだ。

UDP800の画質/音質:
 映像は色の再現やイラストのようなタッチの再現も含めて優秀。ほぼ同等という見え方だが輪郭の描線は若干ソフトにも感じる。そのおかげでジャギー感が気にならず、硬質なタッチの描線の感じがよく伝わる。音響は空間の広さが少し広がったように感じる。ボールの弾む音はやや細身になるが低音の沈む込みもふくめてしっかりと力強さもあり、スピードの速いドリブルでも音がもたつかずシャープでキレ味のよい音だ。印象としてはややタイトだが試合中のテンションの高さがよく出て、なかなか楽しい。

UDP900の画質/音質:
 まさに圧巻だ。傾向としてはUDP800に近いのだが、音のエネルギーが増して力強さがしっかりと出てくる。また周囲の応援の声がいろいろな人間の声で構成されていることがわかるなど、きめ細かな違いを描く分ける点でも優秀。空間はさらに広くなった感じで、選手同士がマッチアップするようなクローズアップしたカットと、コート全体を見渡すような引いたカットで音の響きを細かく調整していることもよくわかる。そして、オープニングでの音楽もエネルギーたっぷりでキレ味もするどい音でかなりのもの。ボーカルも実体感たっぷりだ。

インプレ2 ジョン・ウィック:コンセクエンス

 ソフトを変更して「ジョン・ウィック:コンセクエンス」。暴力がたっぷりのアクション大作だ。

DP-UB9000の画質/音質:
 高解像度で陰影の豊かな再現が見事。暗いシーンも多いが見通しはよく、暗部の再現性はとても優秀だ。ただし、マッチの火を吹き消すとアラビアの大地に切り替わるシーン(アラビアのロレンスのオマージュである)で、朝日が昇る様子をバックに現れるシルエットにわずかなりんかくの強調感がある。音の点では冒頭の打突の迫力と響きもしっかりと出るし、アクションシーンでの銃撃の迫力、音楽の迫力や音数の多いなかでも個々の音が明瞭に再現できるなど、基本的な実力は優れる。

UDP800の画質/音質:
 朝日をバックにしたシルエットの強調感がない。精細感を厳しく見比べるとほんの少しソフトな感触はあるがそのために不要な強調感が出るようなこともない。より自然な印象の映像になったと言える。暗部の階調表現も十分だし、大阪の街の毒々しいほどの原色のイルミネーションも鮮やかで暗部はしっかりと沈む。こちらも十分優秀だ。音の点ではやはり少し細身になる印象はあるが、迫力は十分。打撃の痛みを連想するような音もキレ味が鋭いし、重みも十分。よりスピード感のあるアクションに感じる。

UDP900の画質/音質:
 この機種となると、映像は強調感のない自然な精細感があり、表情の生々しさがより際立つ。暗部階調はごくわずかだが見通しが良くなったと感じるし、黒いスーツの生地がわかるような質感の表現も見事だ。色も毒々しい原色から汗で濡れた肌のきめまで自然で迫力ある映像が楽しめる。音はかなりのレベルで打突のインパクトの衝撃と響きの余韻がさらに深くなる。銃撃や打撃の音もより力強くなるし定位や移動感もスムーズ。音楽のやかましいほどの音量感とそこに重なるさまざまな音を明瞭に描き分ける点など情報量や空間感の再現が見事だ。

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