佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第148回
強力なANCと高音質、さらに紫外線徐菌まで?
この高機能なら割安感も? オーディオテクニカ「ATH-TWX9」を試す
2022年09月12日 15時00分更新
効果的なANC、音調はオーディオファイル寄りに
注目のANC効果だが、環境最適化させてANCを効かせると、しっかりと音が遠ざかり、周囲の印象が柔らかくなるように感じられる。刺激成分が減った感じと言うべきだろうか。無響室にいるような効きが強すぎて不自然な感覚ではない。多少外音が残りつつも、不要な騒音が自然に軽減される感じである。外を歩いていても、わずかながら外音が自然に入るのであまり不安感がない。外でいったん最適化して屋内に戻った際、空調音が気になったが、再度最適化することで空調音が抑えられた。
ヒアスルー機能も自然に聞こえてかなり効果的だ。敢えて信号処理を通すことで、人の声を聞こえやすくなる効果もあるようだ。実際にレジで使用してみたが、店員とのやり取りにまったく不安がなかった。
試聴時は「iPhone 12 Pro」と組み合わせた。多機能の本機では、オーディオテクニカの「Connect」アプリを使用して設定するが、iOSもきちんと対応している。Connectアプリを使用すると、コーデックにAACが選択されているのが分かる。
音質についてはとても良好で、オーディオメーカーらしい豊かで厚みがある音が楽しめる。低音は深くパンチがある一方で、誇張感が少なく自然でありながら十分な迫力がある。高域と中域はかなりシャープだが、少しきつめなので聴き疲れはあると思う。ただし、試聴用にほぼ新品を借りているので、エージングの問題はあるかもしれない。中域はクリアで低域が被っている感じはしない。解像力も高く細かい音が良く聞こえる。
また、実際に聞いて、直径5.8mmの振動板はスピード感(音の立ち上がりの良さ)を重視した選択のためだとはっきりと感じられた。楽器音の明瞭感が高く、音鳴りの歯切れが良い。そして音色表現が多彩で、録音による差がわかりやすい。アコースティック楽器の鳴りが鮮明でボーカルもかなりはっきりと歌詞がわかる。
帯域バランスはとても良好でニュートラルだ。低域や高域に寄った再現ではなく、中音域志向であるように思える。従来のオーディオテクニカの音よりもオーディオファイル寄りにチューニングされているように思う。
360 Reality Audioの音源をAmazon Musicで探して聞いてみた。CD音源をダイレクトに聞くよりも音に広がりが出て、ステージから発せられる音を現場で聴いているような自然さが出る。広がりが三次元になるというよりも、イヤホンで聞いているという直接感が薄れて、スピーカー再生時のような部屋全体の響きを感じられるようになる。こうした空間を意識したオーディオ表現には相性が良いイヤホンとも言えるだろう。
全体的に音質はかなり優秀で、音楽用ワイヤレスイヤホンとしてはトップクラスの一つと言える。
ATH-TWX9は音質も高く、現在考えられる機能は全部載せたと言ってもいい贅沢な製品となっている。抗菌機能など、いま求められる機能が付加されている点もユニークだ。音質も機能も妥協したくないというユーザー向けの製品だと思う。
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