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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第184回

ウクライナ難民とデジタルマネー

2022年06月20日 12時00分更新

文● 小島寛明

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 この記事が公開される2022年6月20日は、世界難民の日だ。

 ロシアによるウクライナ侵攻や、世界各地で起きている紛争を原因に、多くの難民が発生している。

 難民の保護と支援に対して世界的な関心を高めることが、世界難民の日の目的だ。

 日本国内でも、東京都庁やスカイツリーなど各地のランドマークが、ブルーにライトアップされる。

 難民という言葉を聞くと、難民キャンプや避難所に多くの人々が集まっている光景が頭に浮かぶが、デジタル化の進展で、難民に対する支援のあり方にも変化が生じている。

全世界で1億人が住まいを追われている

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、6月10日時点で、欧州全域で登録されたウクライナ難民は約481万人にのぼる。

 戦争の長期化で、ウクライナ難民の置かれた状況は深刻さを増しているが、地球規模に視点を広げてみると、さらに問題の根深さが浮かび上がってくる。

 6月16日にUNHCRが公表したプレスリリースによれば、2022年5月までに世界中で1億人以上が、迫害、紛争、暴力、人権侵害などを原因に避難を強いられている。

 主な原因と考えられているのは、世界的な紛争の拡大だ。

 アフリカ諸国やウクライナ、アフガニスタンなどで紛争が広がり、住まいを失った人たちをカウントしていくと、1億人という想像を超える数字に達する。

重視される現金給付

 緊急人道支援の分野では、紛争地から避難してきた人たちへの現金給付が重視されている。

 現金であれば、いま必要なものは何か、どんな食品を買うかなど避難者たちも自らの考えで決めることができるからだ。

 国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)のウェブサイトにはこんな記述がある。

 「現金給付では、危機の影響を受けた人たちが自らの希望と決定に基づき、家族のために準備し、優先順位をつけ、家族をケアすることを支援する。家賃、食費、教育費や医療費など幅広いニーズに対応できるようサポートする」

 ただ、コロナ禍で日本政府が支給した給付金でもさまざまな問題が明らかになっているが、現金給付には問題が付きまとう。

 ウクライナから隣国への避難者は、着の身着のまま逃げてきた人が多いはずだ。IDカードも、パスポートも持っていないというケースも少なくないだろう。そうなると、同じ人に複数回、現金を渡してしまうというミスが起きやすいのではないか。

 ウクライナの隣国ポーランドのUNHCRのサイトに、現金給付の規定が公表されている。

 支給額は避難者1人あたり、月に700ズロチ(6月17日のレートで約2万784円)、追加の家族一人につき600ズロチが支給され、少なくとも3カ月間は、UNHCRから現金を受け取ることができる。

 その際、UNHCRはウクライナからの避難者の指紋を集め、データベースを構築している。ウェブサイトに掲載された説明では、現金給付の重複を避け、別人が現金を受け取るのを防ぐことが目的だという。

 ウクライナからの避難者たちは、いったん隣国に逃れたとしても仕事や落ち着いた定住先を求め、さらに西側の欧州諸国を目指す人もいる。

 戦争が長期化する中で、避難者たちが置かれる状況も刻一刻と変化する。

 そうなると、どうやって正確に本人確認をし、継続的に支援を届けるかが課題になるのだろう。

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