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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第171回

SWIFT排除のロシア、中国と新たな決済ネットワーク構築?

2022年03月21日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 国際的な決済ネットワークSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出しを受けたロシアが、中国と新たな決済網の構築を検討しているという。

 2022年3月16日のロイターなど、各国のメディアが一斉に報じている。

 ウクライナへの侵攻を受け、ロシアの主要銀行7行とベラルーシの3行がSWIFTから除外された。

 石油・天然ガスなど一部の分野を除いて、ロシアは海外との取引が難しい状況になり、中国と連携する案が浮上したようだ。

 人民元の基軸通貨化を目指す中国にとっても、ロシアとの連携は有力な選択肢となりうるのだろうか。

 この動きに対してはすでに、実現に向けてはさまざまなハードルがあると指摘されている。

中国の決済システムCIPS

 ロシアの中央銀行が構築したSPFS(金融メッセージ転送システム)という決済ネットワークがある。

 おもにロシア国内の銀行間を結んだ決済ネットワークで、銀行間の送金などに使われている。

 このSPFSについてロイターは「(取引にかかる)時間、サイズ、複雑な送金の手続きといった制約がある」と指摘する。

 一方、中国には、2015年に稼働したCIPS(クロスボーダー銀行間決済システム)という決済ネットワークがある。

 人民元のみの決済に使われているシステムで、欧米の銀行や日本のメガバンクの中国法人などもCIPSに接続している。三菱UFJ銀行のプレスリリースによれば、同行の中国法人がCIPSに接続したのは2016年のことだ。

 中国政府は近年、人民元のクロスボーダー決済にはCIPSを利用するよう内外の銀行に促しているとされる。

 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは2020年8月、同社のウェブサイトに発表したコラムでCIPSの位置付けについて、次のように指摘している。

 「国際的な資金決済の多くが人民元建てで行われるようになれば、中国の貿易決済などの国際資金決済は、米国からの介入を受けることはなくなる。それを通じて米国の国際金融覇権から逃れることが、中国経済のさらなる成長にとっては必要となっているのだ」

中ロ決済システムの相互運用案が浮上

 ロシアがウクライナを攻撃し、同国の主要銀行7行がSWIFTから排除された経済制裁に対抗する措置として、中国・ロシア両国の決済ネットワークを相互運用する案が浮上した。

 ロイターによれば、ロシア下院の金融市場委員会のアナトリー・アクサコフ委員長が「ロシアと中国の金融メッセージング・システムの間で協力関係を構築することが必要だ」と述べたとされる。

 さらに、「そのような作業が行われていると認識している」とも述べたと伝えられる。

 報道の通りであれば、すでにCIPSとSPFSの相互運用に向けた作業が始まっていることになる。

現時点での見方は厳しい

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