このページの本文へ

DXに向け、現場発のデジタルアダプションを実現する

課題は社員リテラシより使いにくいシステム テックタッチのDAPの強みとは?

2021年12月28日 13時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2021年12月8日、テックタッチはDAP(デジタルアダプションプラットフォーム)についての勉強会を開催した。登壇したテックタッチCEOの井無田 仲氏は、DAP市場が起こった背景やサービスの特徴、そしてテックタッチが提供するDAPの強みや事例について解説した。

テックタッチCEOの井無田 仲氏

マニュアルや社員研修でのデジタルアダプションはもはや限界

 テックタッチはWebシステムの従業員向けナビゲーションであるDAPを提供する。金融業界出身の井無田氏が金融システムの使いにくさを憂い、起業したのがきっかけだ。

 2019年のサービス開始から2年しか経っていないが、トヨタ自動車、三菱UFJ銀行などそうそうたる日本のエンタープライズ企業が導入済み。導入規模も大きく、三菱UFJ銀行は3万3000人、IHIは2万人のユーザーが利用しているという。「あらゆるシステムにおいて、マニュアルはすでに限界が来ており、ナビゲーションを使った従業員教育に興味を持つ企業は多い」と井無田氏は語る。

 DAPの市場が創出された背景には、世界と企業の取り巻く環境の変化が挙げられるという。変化が激しく、将来の予測が難しい時代となったことで、企業は変化に追従できるアジャイルな組織、データに基づいた客観的な判断が必要になった。こうした中、ITは単なる便利な道具ではなく、データ収集と高度なオペレーションを実現するための必須のツールになっている。

 必須となったITツールを「ユーザーがあまることなく使いこなしている状態」がいわゆる「デジタルアダプション」。しかし、今までのマニュアルや社内研修、サポートへの問い合わせでは、このデジタルアダプションを実現できないというのがDAPに至る課題感になる。「マニュアルは作るのが大変なわりに、あまり利用されない。そもそもある場所がわからなかったり、画面を見ながら操作を理解するにはわざわざ印刷しなければならない」と井無田氏は指摘する。特に昨今のクラウドサービスは進化も激しいため、新しいユーザーインターフェイスや操作性に追従していくのはきわめて難しい。

 これに対して、テックタッチのようなDAPはマニュアルや社内研修ではなく、問い合わせに頼らず、Webシステム(SaaSや社内Webシステム)の利用方法をリアルタイムにナビゲーションできる。「必要な教育をユーザー主導でできるのがDAPの根本的な思想」と井無田氏は語る。

テックタッチとは?

使いこなすのが難しいSaaSを誰でも使えるように

 たとえば、営業・顧客支援ツールとして高いシェアを誇るSalesforce(セールスフォース)。高機能で、さまざまなことが可能だが、複雑で使いこなすのはなかなか難しい。「Salesforceはなかった時代を想像できないくらい、われわれのオペレーションの中に深く埋め込まれているサービス。でも、恥ずかしながら、使いこなすのに1年近くかかった」と井無田氏は指摘する。

 今まで外部SIerがユーザーにあわせて画面やナビゲーションを設計してくれていた日本企業にとって、システムに業務をフィットさせるSaaSはまだまだ不慣れな存在。外資系企業の用語と社内用語がマッチしないというのも課題点だ。「使いこなせていない理由を伺うと、みなさん『うちの社員のリテラシが低いから』とおっしゃいますが、われわれからすると『使いにくいシステムこそ課題』。そこを解決し、誰でも使えるようにするのが本筋だと思います」と井無田氏は断言する。

使いにくいシステムこそ課題

 こうした課題を解消するグローバルのDAP市場は上場企業も1社出ており、数十のプレイヤーがソフトウェアライセンスだけで数百億円の市場を形成しているという。国内のDAP市場も拡大を続けており、ITRの調査によると2020年度は前年度比4倍の成長幅を誇るという。「製造業、金融業、建設業界などがリードし、コンタクトセンターも一気に伸びてくると思う」と井無田氏は語る。

 こうしたDAPの1つであるテックタッチはプラグインをインストールすることで、Webシステム上にナビゲーションレイヤーを形成することができる。井無田氏はSalesforceを例にしてデモを披露する。

 まずエンドユーザーは操作案内を画面上から呼び出し、やりたい操作を選択すれば、Webシステム上にオーバーラップする形でガイドが表示される。クリックすべきメニューがポップアップや吹き出しが表示されるほか、データの入力ルールや入力制御(バリデーション)も可能なので、入力漏れやミスもなくすことができる。「ガイドの指定したメニューしかクリックできないようにする制御も可能なので、ユーザーは迷わず、一本道で目的までたどり着くことができる」と井無田氏は語る。

テックタッチによるガイド

現場部門の担当者がノーコードでガイドを作成できる

 テックタッチの強みは、こうしたガイドやナビゲーションを、ユーザー企業自身がノーコードで作ることができる点だ。Webブラウザにプラグイン(Editor)を導入し、アクティブなページ上で該当箇所を指定し、ポップアップや吹き出しなどをドラッグ&ドロップで挿入。こうして作った複数のステップをフローチャートのようにつなげることでガイドは完成する。「導入時に操作説明を行なうのですが、60分×2回の講習でほぼ操作可能になります」と井無田氏は語る。

 テックタッチが想定する設計者はエンジニアや情シスのようなITに強い人間ではなく、業務の課題や重要性を理解した現場部門の担当者。ユーザーの課題感を元に、現場でガイドを作っていけるのがテックタッチの世界観だ。「ホワイトカラーが自らの改善で、生産性を上げていくことができるツール」(井無田氏)。その他、海外・国内問わず幅広いSaaSへの対応、金融業界前提の高いセキュリティ、多言語対応などが特徴になるという。

 導入効果は企業によってさまざま。経費精算や勤怠管理、ワークフローでの導入では、操作手順を迷わないため、生産性向上に寄与する。ただし、DAPが効果を発揮するのは、高い理想を掲げつつ、なかなか使いこなせていないSalesforceのようなSFA/CRM、SuccessFactorのようなタレントマネジメント、WorkdayやSAP HANAのようなERPなど。ユーザー自身がツールを100%使いこなすデジタルアダプションを実現することで、本来ツールが想定している効果をきちんと上げられるというのが、テックタッチの導入効果と言える。

 なお、2021年12月21日にはPC操作/データ入力の自動化を可能とする「テックタッチ オートフロー」を提供開始し、RPA機能も取り込んでいる。実際、先行導入した積水化学工業では購買システムクラウド「Coupa」のデータ入力の一部を自動化しているという。こうした自動化という観点でも成長が楽しみなサービスだ。

■関連サイト

カテゴリートップへ

ピックアップ