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メールアドレスだけで使えるSage MakerやAWS Amplify StudioのFigma連携など

re:Invent 2021の新サービスはスタートアップの開発にどのように寄与するのか?

2021年12月14日 12時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2021年12月14日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンは先頃開催された「AWS re:Invent2021」の新サービス・新機能のうち、スタートアップ向けのサービスを紹介した。それぞれの事業フェーズにおいて新サービス・新機能がどのような価値を提供するのか、デモを交えて披露された。

メールアドレスの登録だけで使えるAmazon Sage Maker Studio Lab

 説明会に登壇したのはアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 技術統括部 部長 塚田 朗弘氏。最初に説明したのは、機械学習を簡単に試すことができる「Amazon Sage Maker Studio Lab」になる。

デモが披露されたAmazon Sage Maker Studio Lab

 シードと呼ばれるスタートアップの初期フェーズでは、MVP(Minimum Valuable Product)/PSF(Problem Solution Fit)と呼ばれる最小限のプロダクトでアイデアと実現方法を素早く評価し、検証することが求められる。この段階を機械学習という観点で支援するのが、AWS re:Invent 2021で発表された「Amazon SageMaker Studio Lab」(パブリックプレビュー)になる。「機械学習を事業のコアテクノロジーとしたスタートアップは年々増加している。とにかくモデルを速く、簡単に検証できることが一番重要になってくる」と塚田氏は語る。

 Amazon Sage Maker Studio Labの最大の特徴は登録の容易さで、必須項目はメールアドレスだけ。クレジットカードやAWSアカウントの登録は不要になる。また、サービスのバックエンドで動作するCPUやGPU、ストレージなどもあらかじめ用意されており、ユーザーセッションごとに12時間のCPUか、4時間のGPUかを選択すればよい。さらにGitもインストール済みのため、ハンズオンやチュートリアルにも向いている。

 登録を済ましてログインしたら、JypiterLabの環境が開くので、Gitからノートブックをコピー。コーディングしたものをそのままGitのリポジトリに保存したり、プロトタイプをSage Makerに持ってきて本格的に構築することも可能。

 対象となるのは大学の研究チームや起業前後のMLエンジニア。実際、東京工業大学情報理工学院では機械学習の講義で使われており、講義用のサイトに「Open Studio Lab」というボタンが表示されるので、講義資料をAmazon Sage Maker Studio Labから取り込んで、そのまま学習できるという。

Amplify StudioではFigmaと連携 Redshiftのサーバーレス版も投入

 続くAWS Amplify Studioは、最小限のコーディングでフルスタックアプリケーションを開発できるビジュアル開発環境だ。

 事業・機能開発の初期フェーズでは、CEOやデザイナーがまず「Figma」のようなプロトタイピングツールを使って、アイデアを検証することが多い。その後、検証されたアイデアをエンジニアがアプリケーションとして実装し、MVP/PSFに進むのだが、この際のデザイナからエンジニアの引き継ぎを容易にするのが、AWS Amplify Studioの新機能であるFigmaとの連携だ。

 AWS Amplify Studioでは、最小限のコーディングでWebアプリケーションのUIを作成でき、Figmaとの連携によって開発者とデザイナーとの共同作業を可能にする。データモデリングやサンプルデータの作成もGUI上で実現しており、バックエンドのDynamoDBに対してアップデートをかけることができる。今回の新機能では、既存のFigmaプロジェクトを取り込み、各パーツに対してデータをバインドすることも可能になった。AWS Amplify UI Kitというコミュニティ開発のコンテンツも利用できる。

AmplifyにFigmaのプロジェクトを取り込める

 そして、新サービスのAmazon Redshift Serverlessは、サーバーやクラスターを立てることなく利用できるデータウェアハウスになる。

 ユーザー増加を目指すPMF(Product Market Fit)と呼ばれるフェーズでは、ユーザーの拡大のため、データドリブンなフィードバックサイクルを構築する必要がある。このフェーズで役立つのがAmazon Redshift Serverlessで、CTOと少人数の開発チームであっても、インフラを管理することなく、あらゆる規模の分析が可能になる。料金に関しても、コンピューティングとストレージの秒課金で、最大値を設定しておけるため、予算管理も容易になるという。

 そして、成長期に必要なサービスとして最後に紹介されたのが、クラウドインフラをコードで定義するAWS CDK(Cloud Development Kit)の新機能。こちらで紹介されたのは、指数関数的に成長するサービスのスケーラビリティ、柔軟性、拡張性を確保するためのAWS Amplifyとの連携だ。add customコマンドの追加により、Amplifyが対応していないリソースでもAWS CDKで記述することで、簡単に追加できるようになった。

 最後、塚田氏はスタートアップの事業フェーズごと用意された最新サービスにより、スタートアップの開発が飛躍的に加速するとアピールした。

スタートアップにおける事業フェーズごとの開発

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