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代金回収や収益認識を自動化する新サービスも投入

サブスクリプションとプロダクト販売の統合管理を実現 Zuoraが新サービス投入

2021年09月30日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2021年9月29日、クラウド型のサブスクリプション管理サービスを提供するZuora Japan(ズオラ・ジャパン)は新サービスの発表会を開催。既存のビジネスモデルとサブスクリプションを統合する「Unified Monetization」や、収益のリアルタイムな認識を可能にする「Zuora Revenue」の国内販売を発表した。

米Zuora チーフプロダクト&エンジニアオフィサーのスリ・スリニヴァサン(Sri Srinivasan)氏

ますます拡がるサブスクリプションジャーニーを包括的に支援

 発表会に登壇した米Zuora チーフプロダクト&エンジニアオフィサーのスリ・スリニヴァサン(Sri Srinivasan)氏は、「サブスクリプションジャーニー」のあらゆるフェーズをカバーしてきたとアピール。迅速な対応が必要な立ち上げフェーズからサブスクライバーを増やすための最適化フェーズ、自動化を用いてサービスの拡大・成長フェーズ、そして成長を維持しつつ、プラットフォーム、データ、エコシステムで業界を牽引するリードフェーズまで、創業から10年以上をかけ1000社以上のユーザー企業とサブスクリプションビジネスを伴走してきたという。

サブスクリプションジャーニーを支援

 サブスクリプションエコノミーは拡大を続けており、コンシューマーを対象とする企業の75%は、2023年までになんらかのサブスクリプションサービスを提供すると言われている。一方で多くの企業は、サブスクリプションサービスと従来型のプロダクト販売をうまく組み合わせたいと考えている。成長が早くレジリエンスが高いサブスクリプションサービスと、ブランド力や資本力を持つプロダクト販売のそれぞれベストな部分を組み合わせて、包括的に提供したいと考えているのが現在の企業だ。しかし、サブスクリプションの管理はZuoraを使えても、従来型のプロダクト販売は既存のERPや財務会計システムが用いられているため、そのままではコストも増大し、管理も複雑になる。

 両者を統合するのが、主力サービス「Zuora Billing」に新たに搭載される「Unified Monetization」になる。Unified Monetizationでは、サブスクライバーに関わるデータソースを単一プラットフォームに集約し、統一した注文や請求体験を提供するもの。新たに提供されるSDKにより、Zuoraの導入は30%迅速化し、コーディングの時間も80%短縮されるという。

 両者を統合するとどうなるか? たとえば、スポーツイベントの動画配信を手がけるDAZNはサブスクリプション型のビデオストリーミングに、ライブイベントのチケットというプロダクトを組み合わせ、Sports as a Serviceとして提供している。一方で、従来プロダクト販売を主体としていた自動車会社のフォードは、電動自動車というプロダクトにEV充電サービスを組み合わせて、Mobility as a Serviceとして提供している。

サブスクリプションのDAZNやプロダクト販売主体のフォード

 スリニヴァサン氏は、「サブスクネイティブの企業はすべてをas a Serviceで提供したいと考えている。一方、多くの百年企業はディスラプトされる側になるか、自らがディスラプトするかを検討する時期に差しかかかっている」と語る。

AIで回収を促進するZuora Collect、収益認識を自動化するZuora Revenue

 サブスクリプション事業の大きな課題の1つは、実は代金回収だ。効果的な回収手段を持たない企業やキャッシュやサブスクライバーを失う。未払い請求では平均3%の利益が逸失となり、カードの期限切れや残高不足などによるユーザーが意図しない解約(パッシブチャーン)は解約全体の2~4割を占めるという。

 これに対してAIを活用して請求業務を簡素化するのが「Zuora Collect」になる。35以上のペイメントゲートウェイ、20以上の支払い方法をサポートしたZuora Collectでは支払いが滞っている決済から、最大20%のキャッシュを回収するという。また、解約リスクを最小化し、ネットのリテンションも最大13%向上できたとのことだ。

Zuora Collectによる代金回収の効率化

 さらにZuoraは収益認識にもメスを入れる。つまり、会計から収益をいつ、どうやって認識するかという問題だ。たとえば、ITアプライアンスを提供しているRiverbedはハードウェアプロダクトとクラウドサービスのサブスクリプションをパッケージ化しているが、会計的にはプロダクトの収益は単発で、サービスの収益は分割して計上されてしまう。また、ショット単位の利用料でレントゲンをサービスとして提供しているシーメンスヘルスケアは、利用が発生したときのみ収益を認識しなければならない。さらにウェディングサービスからスタートして企業買収を繰り返すxo groupは、契約数の多いセールスチームを統合した収益認識が必要だった。いずれにせよ収益認識の過程は複雑だ。

ビジネス変化による収益認識の複雑さ

 しかも、多くの企業は収益の計算を手作業で行なっているため、大きなコストと手間がかかっており、サブスクリプションのような新しいビジネスの大きな障壁となっている。

 たとえば、Hitachi Ventaraは50~60人の専門スタッフを擁しているにも関わらず、複雑なトランザクションに締め処理の遅延に悩まされていたという。また、Polyは重要な財務データが月末まで把握できないため、分析や洞察が行なえず、迅速なビジネス判断ができなかった。さらにRiverbedは、コンプラアインスの観点でも人為的なミスが大きな問題となっており、製品のポートフォリオが急速に拡大したことで、監査リスクが高まっていたという。

 こうした課題に対して、第4四半期(2022年初旬)で提供される予定の「Zuora Revenue」は、サブスクリプション、プロダクト、サービス、利用など、あらゆるマネタイズモデルでのリアルタイムに収益を認識できる。IFRS第15号に対応した収益認識の自動化により、コンプライアンスと監査のリスクを最小限に抑えることも可能だ。さらにマイクロソフトとの連携により、サブスクリプションに特化したデータウェアハウスを構築。サブスクライバーのエンゲージメントと収益状況をリアルタイムで可視化できるという。

マイクロソフトとの連携により、サブスクリプションに特化したDWHを構築

 今回の新発表により、既存のサブスクリプション管理のプラットフォームを基盤としたZuoraのサービスは、サブスクリプションとプロダクト販売も含めた収益化を管理するZuora Billing、効率的な回収を実現するZuora Collect、リアルタイムな収益認識を実現するZuora Revenueに拡大。ユーザー企業のサブスクリプションビジネスを包括的に、ディープに管理できるプラットフォームとして成長している。

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