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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第603回

チップ売りからソリューションに切り替えたETA Compute AIプロセッサーの昨今

2021年02月22日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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チップを売るビジネスから
ソリューションを売るビジネスに

 さて、2018年にこのTENSAIチップことECM3531を発表したETA Compute。2019年にもArm TechConにブースを出していたので「去年からなにかアップデートあった?」と聞いたら「特にない」という返事が返ってきたあたりは、やはりチップ売りに切り替えてもそうそう顧客がつかめなかった、ということであろうか。

CNNは目を引くアプリケーションであるが、それこそFFTやデジタルフィルターなど旧来の用途向けももちろんカバーする、と幅広くアピールしているのがポイント

 そうこうしているETA Compute、2020年にふたたび方針が変わる。後継製品としてECM3532チップをすでにリリースはしていたが、新たにSynaptics(液晶のコントローラー大手:スマートフォン向けのタッチコントローラーや指紋認証などのソリューションを提供する)から1250万ドルのシリーズCの投資を受け、同社のTENSAI FlowというTENSAIチップ向けソフトウェアをSnapticsに独占ライセンスすることを発表した。

 いわばこれまでのチップを売るビジネスから、ソリューションを売るビジネスに鞍替えした形だ。引き続きチップの販売は続けるとしているが、核になる技術を1250万ドルでSynapticsに売り渡したというのが正確なところか。

 Synapticsは自社製品にAI/MLベースのアルゴリズムを組み込むに際し、ETA Computeの低消費電力チップ技術や高効率ML処理技術が大いに役に立つと判断したからと思われる。ただ、だからといって会社を丸ごと買収するほどのコストは支払えない(同社は累計で3100万ドル超の投資をファンドから受けている)というあたり、わりとギリギリの値段な気がする。

 独立系スタートアップ企業がAI対応を標榜したところで、なかなか一本立ちするのは難しい、という昨今の半導体業界を象徴するような動きになっている感じである。

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