国内でも展開されている、定額音楽ストリーミングサービス「Amazon Music HD」のWindows向けデスクトップアプリケーションが“バージョン: 7.11”となり、新機能が追加された※。結果、「排他モード」や「WASAPI」といった言葉が話題となっている。
ただし、この名称になじみのない読者も多いと思うので、PCオーディオの基礎編として、Windows オーディオシステムの排他モードについて解説する。
編注:すでにAmazon MusicをPCにインストール済みの場合や、ブラウザー版のAmazon Music HDサービスからアプリをダウンロードした場合の最新バージョンは7.10.x。
“バージョン:7.11.x”を入手するには、Amazon.co.jpで「デスクトップ版 Amazon Music(Windows)」を検索して入手したうえ、「ゲーム&PCソフトダウンロードライブラリ」からソフトをダウンロードし、再インストールする必要がある(2020年3月15日現在)。
WASAPIには、排他モードと共有モードがある
まずは、排他モードとは何かを端的に説明しよう。排他モードというのは「ほかを使えなくする」という意味だ。利点はそれゆえに高音質となること。欠点はPCのオーディオ再生機能を1つのアプリケーションで占有してしまうことや、再生に使うアプリケーション側で、音量を変更できなくなることだ。
この排他モードはソフトウェア的には「WASAPIの排他モード」と呼ばれる。WASAPI(Windows Audio Session API)とは、Windows VistaからWindowsのオーディオ処理システムに導入されたAPIのひとつだ。API(Application Programing Interface)とは、アプリケーションがOSの機能を呼び出すために使う命令や関数の一種だと思えばいい。
さて、WASAPIには、排他モードのほかに「共有モード」もあり、こちらが標準状態だ。なぜ共有モードが標準かというと、PCは様々な音を扱う必要があるからだ。PC上で動作するものは、音楽再生アプリケーションだけではなく、動画再生アプリケーションの音声トラックもあれば、システムの警告音もある。これら様々なプログラムが仲良くオーディオ出力機能を共有して使えるようにするのがOSの役割だ。
しかし、これらの音のサンプリングレートやビット数はばらばらだ。最終的に、データを単一のフォーマット(例えば48kHz/16bitなど)にまとめなければ、DACなど音を出すハードウェアに出力できない。
この“まとめる処理”を担当するのが「ミキサー」と呼ばれるOSの機能だ。ただしこの処理には、それなりの計算力が必要である。そのため、Windows XPなど過去のOSでは、ミキサー処理に固定小数点計算を利用するなど、処理を簡易化していた。また、このミキサーがレイテンシー(処理の遅延)や音質の劣化を招き、ハイレゾ出力ができない原因にもなっていた。
この連載の記事
-
第287回
AV
Roon ARCがCarPlayやAndroid Autoに対応、車内で音声操作を -
第286回
AV
MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは? -
第285回
AV
新感覚のオーディオイベント「REB fes」を体験、自分だけのストーリー実現に悩もう! -
第284回
AV
JBLによる2つの新提案「LIVE BEAM 3」と「Fit Checker」を体験してきた -
第283回
AV
グーグル、プロも驚く音楽生成AI「Music AI Sandbox」を開発 -
第282回
AV
液晶をタッチして操作する、Volumioの新ネットワークプレーヤー「Motivo」 -
第281回
AV
HIGH END Munich 2024出展製品から、気になるエントリーオーディオをセレクト -
第280回
AV
水月雨がオーディオファン向けスマホを開発、複雑になりすぎたスマホ高音質再生への問いかけ -
第279回
AV
Chordの積み木型オーディオシステムが面白い、「Suzi」と「Suzi Pre」 -
第278回
AV
さすがにSpotifyもロスレス対応しそう、Redditユーザーがさらに解析結果をリーク -
第277回
AV
スマホがLE Audioに対応していなくても、なぜAuracastを使えるのか? - この連載の一覧へ