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Windows情報局ななふぉ出張所 第25回

事業拡大にいろいろなものが追いついていないFREETEL

2016年03月19日 10時00分更新

文● 山口健太 編集●KONOSU

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 3月9日、FREETELブランドを展開するプラスワン・マーケティングは2016年になって早くも2回目となる発表会を開催し、新製品やサービスを披露しました。

FREETELが2016年2回目となる発表会で新製品やサービスを発表。

2つ折り型の「MUSASHI」や参考出展した「REI」など端末の品質もどんどん上がっている。

 いま、SIMフリー市場の中でもっとも注目すべき事業者である一方で、なにかと世間を騒がせることも増えています。

LINE無料サービスと「通信の秘密」

 FREETELが新たに始めたのが、LINEなどのメッセンジャーアプリの利用が無料になるというサービスです。FREETELのSIMカードは使用した容量によって段階的に料金が上がるため、LINEトークでのテキストや写真、スタンプが無料になれば、多くのユーザーにとって料金節約につながります。

 一方で、「通信の秘密」という点では疑問が残るサービスです。FREETELはLINEによるメッセージや写真の内容を見ることはないとしているものの、「あるユーザーがLINEを使っているかどうか」を識別するだけでも、通信の秘密を侵害するからです。

 筆者が驚いたのは、FREETELが既存ユーザーに対しても、自動的にこのサービスを適用したという点です。サービスの提供にあたってやむを得ず通信の秘密を侵害する場合でも、ユーザーの同意があれば問題ないとされています。ただ、FREETELのユーザーは、LINEの使用状況を知られることに同意しているのでしょうか。

 FREETELはその実装について、「パケットの中身を見ているのではなく、大手ネットワーク機器メーカーによるDPI装置のシグネチャ情報を利用している」と説明しています。

 しかしその「シグネチャ情報」とユーザーを結び付け、パケットを無料化している主体はFREETELです。「メーカーが提供する機能を使っている」のが事実だとしても、ユーザーの同意を取るべきことに変わりはないはずです。

「ネットワーク中立性」のジレンマ

 今後、MVNO市場では「LINE無料」のような特定サービスの無料化がトレンドになるでしょう。一方で、米国を中心に話題になっている「ネットワーク中立性」の議論では、通信事業者は特定のサービスを優遇してはならないとされています。

 普通に考えれば、「LINEの無料化で通信料金が下がるのだから、ユーザーに不利益はないはずだ」と思いたくなるところです。しかしLINEのように有力なサービスを優遇すれば、それに代わる新しいサービスが生まれる余地がなくなることが問題視されています。

 新しいサービスが出てこなければ、市場における競争が減ることを意味します。そうなれば価格は高止まりし、機能向上のペースも落ちることになり、長期的にはユーザーに不利益をもたらします。

 とはいえ、FREETEL自体も挑戦者というポジションにあります。大手キャリアが支配する携帯電話市場はもちろん、MVNO市場においてもFREETELはまだ上位とはいえません。MM総研の調査では、2015年9月末時点で第4位のビッグローブが25.5万回線で、FREETELはそれ以下とみられます。

囲み取材で増田薫社長は、FREETELの契約回線数には言及しなかったものの、そろそろ上位に顔を出せるのではないかと期待を寄せた。

 少なくとも小規模な事業者は、ネットワーク中立性の議論にとらわれず、自由にSIMカードを設計してもよいのではないかと筆者は考えています。

急拡大するFREETELの世界進出

 国内向けの発表会では語られなかったものの、FREETELは海外進出にも注目です。MWC 2016には昨年より大型のブースを出展しました。

モトローラやデル、アップルでの実績豊富なイアン・チャップマン-バンクス氏。年内にもチリやペルー、コロンビアなど南米への進出を計画中とのこと。

 一般に、海外出展した日本企業のブースといえば、スタッフも来場者も日本人ばかりになりがちです。しかしFREETELは海外事業を統括するイアン・チャップマン-バンクス氏を中心に、モトローラやデル、アップルなどから元同僚や元部下などのツテをたどって、海外拠点の従業員を増やしているとしています。

 その一方で、3月14日からドイツ・ハノーバーで開催された「CeBIT 2016」にもブースを構えたものの、肝心のスタッフの姿がありません。会期初日は準備が間に合わなかったのかと思いきや、2日目になっても無人のままでした。

CeBIT 2016のFREETELブース。1日目、2日目と訪れてみたが、スタッフの姿はなく、ブースが使われた形跡もなかった。

 事業が急拡大する一方で、FREETELはいろいろなものが「追いついてない」感があるものの、今後の成長が楽しみな企業のひとつであることは間違いありません。


2016年3月23日追記:記事中で指摘した内容について、プラスワン・マーケティングから以下のような回答がありました。
(筆者としては、既存のFREETEL SIMユーザーにも一律で「LINE無料化」を適用することは通信の秘密の侵害に相当し、かつサービス提供の上でやむを得ない「正当業務行為」の範囲を超えているのではないか、との指摘に対して)
「ご指摘いただいた件、当社ではあくまで課金・非課金の対象となるデータ通信履歴の取得にすぎず、正当業務行為に該当すると理解しておりますが、ご指摘及び電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインを踏まえ、対処させて頂きます。
具体的には、まずユーザー様よりご希望を頂いた場合には、対象アプリの利用に関する通信履歴を記録・保存しない措置をとり、その旨サイト上などで明記します。
また追ってお申込み時及びMyPage上でお客様が選択できる仕組みを導入してまいります。」
 

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