いくつかに分類したユーザーグループの割合や行動などの推移を分析する「コホート分析」が、Googleアナリティクスで手軽にできるようになりました。2回に分けて、Googleアナリティクスによるコホート分析の手順と活用方法を解説します。
Googleアナリティクスの「ユーザー」メニューにある「コホート分析」レポートでは、コホート(ユーザーグループ)は「ユーザーを獲得した日付(≒新規ユーザーとしてアクセスした日付)」によってのみ分けられます(第1回)。今回は、Googleアナリティクスのセグメント機能を使って、もう一歩踏み込んで分析してみます。
流入別の定着率の違いを「コホート分析」レポートで比較しよう
サイトを訪問したきっかけが「リスティング広告」のユーザーと「ソーシャルメディア」のユーザーの2つのコホートを作り、新規ユーザー全体と比べたときの定着率(ユーザー維持率)に差があるか分析します。
コホート分析用のセグメントを作る
セグメントを細かく分けすぎて、コホートのサイズが小さくなると、「ユーザー維持率」がぶれやすくなります。たとえば、コホートのユーザー数が1000人であれば、ユーザー維持率の1%は「10人」です。数値を比較したり判断したりできる単位でセグメントを作りましょう。
ユーザー、集客、行動、コンバージョンレポート上部の「セグメント」もしくは、アナリティクス設定のビュー設定にある「セグメント」から、「新しいセグメント」を作成します。 「最初の訪問時の参照元」を指定するには、以下の図のように、セグメント機能の「シーケンス」にて「ユーザー」を選択し、「シーケンスの開始」を「最初の通過地点」にして、参照元や流入チャネルを指定します。
すべての新規ユーザーを対象にした「すべてのセッション」と、今回作成した2つのセグメントを「コホート分析」レポートで表示します。指標は「ユーザー維持率」を選択します。傾向を比較したいので、コホートのサイズは「月別」を選択します。
流入別の定着率を比較すると、「リスティング広告経由」のユーザーは「すべてのセッション」に比べてやや低く、「ソーシャルメディア経由」のユーザーではさらに低い傾向があります。リスティング広告では出稿キーワードの見直し、ソーシャルメディアではランディングページの見直しやファンになってもらうための工夫が必要だとわかりました。
従来のアクセス解析では、直帰率が高いページに対して直帰率改善の施策を実施しましたが、直帰率が低くても再訪が少なければサイトは成長していきません。コホート分析ではユーザーの定着率でページを評価することで、サイトを改善、成長できます。
3カ月以上の長期間にわたるユーザー行動を把握する
BtoBビジネスのように、初回の訪問から最終コンバージョンまでが長期間にわたる場合は、3カ月以上の期間での分析が必要です。Googleアナリティクスの「コホート分析」レポートは、直近の約3カ月間までしかさかのぼれない制約があり、長期間にわたるユーザー行動の分析はできません。
セグメント機能を使ったコホート分析なら、6カ月間や1年間といったより長期にわたるユーザーの定着率や、コンバージョンに至るタイミングを分析できます。また、期間をずらしながら分析するため根気のいる作業が必要ですが、コホート分析レポートにはない以下のような軸でも分析できます。
- 訪問モチベーションの変化の状況
- 流入チャネルや検索キーワードの変化
- ランディングページの変化
- 閲覧コンテンツの変化
- コンバージョンのタイミングやその際の行動
- 何カ月後にコンバージョンに至ったか
- コンバージョンの際の流入チャネルや閲覧コンテンツ
- ECサイトで各月の新規ユーザーの月別購入金額推移から次年度の売上予測
セグメント機能を使った具体的なコホート分析の例をいくつか紹介しましょう。
年間でユーザー定着率を分析する
特定の月に初めて訪問したユーザーの1年間の定着率を分析します。
利用するセグメントの作成
セグメント機能の「最初のセッションの日付」の項目を利用して、新しいセグメントを作成します。
「最初のセッションの日付」の項目で、「2014年3月1日から3月31日」のように1カ月分の期間を指定し、「初回訪問月が2013年3月」のセグメントを作成します。
コホート分析をExcelで作成
「初回訪問月が2013年3月」のセグメントをレポートに適用し、レポートの対象期間を月単位で分析すれば「初回訪問月が2013年3月」のユーザーの各月のユーザー数やコンバージョンの状況がわかります。
特定の条件でのコホート分析
特定の施策やキャンペーンで絞り込むことで、サイトの特徴を捉えたコホートも作成できます。たとえば、セグメント機能の「シーケンス」と「最初のセッションの日付」の各項目を組み合わせれば、「3カ月間にわたって実施したキャンペーンで獲得した新規ユーザーを各月で分けて、その後の定着率や行動の変化を比較分析する」といったことができます。
コホート分析特有のレポートをExcelでビジュアライズするのは大変なので、下図のように各月の状況のサマリーを表や箇条書きで一覧にするだけでも、訪問モチベーションや閲覧コンテンツなどの変化を把握できます。
コホート分析から改善につなげる方法
コホート分析で特定属性のユーザーが運営側の期待どおりに行動しているかを大まかに把握すると、期待と結果の乖離を埋めるための改善策を検討できます。また、特定属性のユーザーに対するパーソナライズやターゲティングも検討できます。
具体的には、以下のようなアクションが考えられます。
- リテンション(再訪問)を誘発したのはコンテンツか集客要素か習慣か → 期待と結果の剥離
- メールやソーシャルメディアなど直接コミュニケーションが取れる方法を活かして適切なリテンションを誘発できないか → ターゲティング
- リターゲティング広告はどういったアプローチがふさわしいのか → ターゲティング
- サイト内の動線設計はリテンションやアクションに関係しているのか → パーソナライズ
特定のコホートに最適なアプローチを実施し、定着率の向上や安定した購入につなげていきます。
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コホート分析は、Googleアナリティクスの機能拡張のおかげで積極的に取り組めるようになりましたが、実際には根気のいる作業が必要です。コホート分析は「時間の経過に伴うユーザーグループの行動の変化の分析」ですから、新しく登場した「コホート分析」レポートではあくまで表面的な傾向しかわかりません。セグメントを切って特定グループの変化を深掘りしたり比較したりして、これまで見ていた数字だけではつかみきれなかったユーザーの「変化」を把握しましょう。