2014年の年の瀬、東京で開催されたIngressのイベントで発表された「CHEERO × INGRESS POWER CUBE 12000MAH」(関連リンク)。ゲームとコラボレーションしたモバイルバッテリー、どうやらこのきっかけを、筆者のFacebookのふとした投稿が作っていたようです。
筆者のふとした書き込みから
Ingressとコラボしたモバイルバッテリーが誕生
思いついたアイディアは、できるだけ自分の中にとどめず、インターネットの世界に放った方がいいというのが個人的な考え方です。「アイディアの放牧」などと呼んだりしますが、脳の中からインターネットに情報として存在させることは価値があるとも思います。
思いつきレベルのアイディアなら、きっと他の人も考えたことがあるでしょうし、同じアイディアを実現させる仲間が見つかるかもしれません。一方で、誰も気づかなかったシンプルなアイディアである場合もあり、これは自分で暖めたいところ。その選別はすぐに分からない事が多いものです。
そう言われると、少し慎重になるでしょうか。とはいえ、自分でできないことならなおさら放出してしまった方が良いのです。Ingressの半年前のそんな体験を、1つご紹介しておきましょう。発端はFacebookに7月21日に書き込んだ1つの投稿でした。
ちなみに東智美さんは、cheeroブランドを手がけるティー・アール・エーに所属している友人で、Facebookでもつながっています。
cheeroは、モバイルバッテリーを中心としたスマートフォン・タブレット向けアクセサリを小回り良く投入しているメーカー。そしてIngressは、本連載でもご紹介したGoogle「Niantic Lab.」が世の中に送り出すスマホ用の位置情報陣取りゲームです(関連記事)。
このゲーム用に、ぜひバッテリーをデザインしてほしいという提案でした。
自治体がIngressに取り組みだした昨今
何でそんな事を言い出したのかを説明する前に、Ingressの概要と昨今の動きについて紹介しておきましょう。
緑と青の陣営に分かれて、リアルな街の中に出現したポータルを自陣のものとし、ポータルを3点結んでできる三角形がカバーする人口で競う、世界規模のゲーム。ポータルは人が集まる場所、歴史的な場所など、その土地を深く知る手がかりとなる場所が多く、散歩する際にも新たな発見があります。
人が街を歩くこと、そして発見してもらえることから、日本でも自治体が街おこしの一貫でIngressを取り入れている例も増え始めました。
先手を切ったのが岩手県です。活用を検討する中で「県下のポータルが少ない」という問題点を解決するため、ポータルをゲームに申請することをイベント化しました(PDFへのリンク)。これにNiantic Lab.が応えて、通常申請から半年かかる申請を優先処理したそうです。
その後、茨城県、東京都中野区、神奈川県横須賀市などが、自治体としてIngressに取り組んでいます。
また、12月13日には「Darsana Tokyo」といわれる、Ingressオフィシャルのイベントが開催されました。制限時間内に計測エリアの勢力を競うイベントでしたが、対象となるエリアは襟裳・上海・グアムという3点を結ぶ緑の巨大なフィールドに沈み、呆然と立ち尽くすしかありませんでした(※コントロールフィールドの中で、新たなリンクやフィールドを作れない)。
次に日本が主戦場として行われる世界規模のイベントは、3月28日の京都。詳しくはIngressのイベントページを参照してください(関連リンク)。
Ingressとcheeroの関係は
さて、筆者がなぜ7月に、Ingressの文脈でcheeroについてFacebookで言及したかというと、Ingressはスマートフォンのバッテリーを消耗するからです。常時ディスプレーON、しかも3Dグラフィックスを使用します。同時に位置情報をGPSとWi-Fiから計測する部分もバッテリーに響きます。
バッテリーの持ちがこれまでのiPhoneと比べて驚異的で、平凡な1日を過ごす場合には外部バッテリーが不要になりつつあるiPhone 6 Plusですが、朝の日課となった1時間半のIngressウォーク(Ingressしながらのウォーキング)だけで10~15%ほどのバッテリーを消費します。
つまり、Ingressのプレイとスマホ必須の日常生活を両立させるためには、外部バッテリーが不可欠だったからです。そこで、デザイン性を重視したバッテリーを手がけていたcheeroの東さんに声をかけたというわけです。
そこからの展開がまた面白かったです。Facebookのポストには、60件のコメントが付き、緑あるいは青が欲しいという意見や、スケッチが投稿されるなど、瞬時に盛り上がりました。カルビナが付いて欲しい、光らなければダメ、など要望も積み上がっていきます。
結果、cheeroを運営するティー・アール・エーの社長もメンションがつけられ、「これから動きます」と実現に向けて動き始めたのでした。
(次ページでは、「Ingressの世界観を壊さない製品を実現する」)
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