2月14日、シスコシステムズはモバイルデータトラフィックの動向について調査する「Cisco Visual Networking Index(Cisco VNI)」についての発表会を開催した。昨年に引き続き、米シスコのロバート・ペッパー氏が調査のハイライトをパワフルに説明した。
モバイル分野で日本は世界をリードする
今回発表されたCisco VNIは、2013年~2018年のモバイルデータのトラフィックをグローバルで調査したもの。説明会で登壇した米シスコ バイスプレジデント グローバルテクノロジー政策担当 ロバート・ペッパー氏はまずモバイルデータトラフィックの概況について説明した。
ペッパー氏によると、2018年のモバイルデータトラフィックは現在の約11倍にあたる年間190エクサバイトに拡大するという。これは世界中の人が1年間で毎日15枚の画像を送信した場合に生じる42兆枚の画像、毎日1本ずつビデオを送信した場合に生じる4兆本のビデオクリップに相当するとのことだ。
こうしたトラフィック爆発の背景としては、「モバイルユーザーの増加」「モバイル接続の増加」「通信の高速化」「モバイルビデオの増加」などが挙げられる。ここでペッパー氏が指摘したのは、モバイルの分野で日本は世界をリードする立場にあるという点だ。2018年には世界のトラフィックの実に11%以上を日本が占めると予想されており、これは米国を77%、西ヨーロッパを320%上回るという。
2G/3G/4Gなどのネットワークタイプ別の接続数も、日本の4Gへの移行はスピーディ。接続数で3Gと4Gが逆転する時期は、米国は2017年なのに対し、日本は1年早い2016年に訪れると予想されている。トラフィック面では、2018年には日本のモバイルデータトラフィックの90%近くを4Gが占めるようになるという。また、デバイスタイプで見ると、やはりスマートフォンの増加が著しく、タブレットやM2Mのシェアも上昇。日本では「フィーチャーフォン」と呼ばれる既存の携帯電話のトラフィックは、2018年には1%にまで下落するという。
そして、これらモバイルデータトラフィックの増加を牽引するのは、もちろんビデオだ。この傾向は昨年も言及されていたが、2018年には全体の67%をビデオが占めることになるとのこと。通信事業者にとっては、膨大なトラフィックの処理と付加価値ビジネスの確立が大きな課題になる。
オフロードの浸透とM2Mの台頭
3Gや4Gなど“マクロセル”のオフロードの実態についての調査も披露された。モバイルデータのトラフィックの増加により、多くの通信事業者はWi-Fiネットワークにマクロセルのトラフィックをオフロードするようになっている。Cisco VNIによると、こうした現在50%というオフロード率は、2018年には58%に拡大。Wi-Fiと3G/4Gなどのデュアルデバイスの普及により、オフロードが急ピッチで普及している実態が明らかになった。
興味深いのは、ユーザー像の変化だ。2010年にはトップ1%のユーザーがトラフィックの全体の半分以上(53%)を占めているのに対し、2013年には10%にまで下がっているという点。アーリアダプターがすでに標準的なユーザーとなっているというわけだ。
ペッパー氏が、モバイルデータトラフィック増加を牽引する要因としてもう1つ挙げたのはM2M(Machine to Machine)だ。M2Mの接続数は2018年までに一気に6倍に拡大し、3G接続の半分はM2Mによるものになると予想されている。特に身の回りに付けるウェアラブル端末は、2018年までにトラフィックも36倍にまで拡大すると見込まれている。
パケットビデオとの協業も発表
また、同日シスコシステムズは、NTTドコモの米国子会社であるパケットビデオとの協業を発表した。さまざまなビデオコンテンツをマルチデバイス・視聴期間無制限で配信する「メディアクラウド」のプラットフォームを、シスコのVideoscapeソリューションで構築。米国の業界団体で構築されたコンテンツ配信エコシステムである「UltraViolet」を採用したサービス提供を検討しているという。サービス提供は2014年下半期を予定している。