産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、リチウムイオン二次電池用の負極材料であるチタン酸化物粉体の粒径制御を行うことにより、充放電容量が約1割向上する材料製造技術を開発した。
リチウムイオン充電池を製造する際の材料のひとつであるNa2Ti3O7粉体の粒子形態が、最終生成物の負極材チタン酸化物(H2Ti12O25、以下HTO)の形状に反映することに着目。Na2Ti3O7を粉破砕技術を用いて平均粒径約2μmとしたのち、熱処理/酸処理などの処理を行ってHTOを作成、負極材としてリチウムイオン充電池を製作・評価した。
粒径制御を行ったHTO電極を用いたリチウムイオン充電池の充放電容量は250mA/g(HTO電極あたりの容量)と、粒径制御していない場合の225mAh/gを上回る性能となった。この数値は結晶構造から理論的に導かれる容量の約90%に達しているという。また、実用に近い電極組成で評価したところ、粒径制御された電極素材では充放電レート特性も改善されることが分かった。
現在のリチウムイオン充電池の負極材料としてはチタン酸リチウム(Li4Ti5O12、LTO)が主に用いられているが、LTOの充放電容量は175mAh/gと低いためチタン酸リチウムと同程度の電圧で200mAh/gを超える高容量の酸化物負極材料が望まれ、HTO電極材の開発が行われている。今回の研究結果により、原材料の粉体加工という従来の製造プロセスの簡単な改良により高容量化、レート特性の改善ができることが判明し、EVやハイブリッド車用リチウムイオン二次電池の高容量化・低コスト化につながることが期待される。産総研では開発で連携している石原産業と協力して量産化技術を確立し、電池メーカーをはじめ産業界へのサンプル提供の準備を進める予定という。