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PCは1日4回だけど、スマホは1日19回使っている!

モバイルのパワーを解き放つ新プラットフォーム「Salesforce1」

2013年12月26日 06時00分更新

文● 大河原克行

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米セールスフォース・ドットコムは、世界最大のソフトウェアカンファレンス「Dreamforce 2013」を米サンフランシスコで開催した。今回のDreamforce 2013の中心的テーマとなったのは、新たなプラットフォームと位置づける「Salesforce1」である。

Salesforce2ではない理由とは?

 セールスフォース・ドットコムの会長兼CEO(最高経営責任者)であるマーク・ベニオフ氏は、開催初日の基調講演で、共同創業者であるピーター・ハリス氏などの幹部とともに、Salesforce1を発表。ベニオフ氏は、「Salesforce1は、新たなプラットフォームである。そして、『INTERNET OF CUSTOMERS(顧客のインターネット)』のためのプラットフォームである」とする一方、モバイル時代に対応したプラットフォームであることも強調した。

セールスフォース・ドットコムの会長兼CEO(最高経営責任者) マーク・ベニオフ氏

 Salesforceからの進化であれば、Salesforce2という呼称でもいいはずだが、米セールスフォース・ドットコム 戦略部門エグゼクティブ・バイスプレジデントのクラレンス・ソー氏は、「プラットフォームを一元化している点が競合との差になる。一元化したトラストプラットフォームであるという意味を込めた。そして、1つのアプリで広く対応できる環境を用意したという意味も込めた」と説明する。

 Salesforce1は、「Salesforce1 Platform」、「Salesforce1 Sales Cloud」、「Salesforce 1 Service Cloud」、「Salesforce 1 ExactTarget Marketing Cloud」で構成。モバイル対応のために、APIを10倍に増やし、213のコールメソッドを提供するなどの進化を図ったという。

 「あらゆるものがネットワークでつながる時代(コネクテッドワールド)において、企業が事業活動に最新のソーシャルおよびモバイルテクノロジーを取り込み、顧客との間に新たなつながりを生み出すことを支援する包括的なクラウドサービスがSalesforce1。企業の営業活動、カスタマーサービス、マーケティングのあり方を変革するとともに、ソーシャルおよびモバイルに対応した企業向けアプリケーションの構築環境を根本から変えるプラットフォーム」と位置づける。

2年前にはブラウザだけでカバーできると考えていた

 CRMアプリケーションやChatter、カスタムアプリケーション、AppExcahngeアプリケーションが、Salesforce1ひとつでつながるようになり、それをあらゆるモバイルデバイスから利用できるようになるという考え方だ。ベニオフ会長兼CEOは、「2年前に描いたモバイル戦略に課題があった」とし、Salesforce1では、その改善に力を注いだと説明する。

 そして、それを裏付けるようにソー氏は、「2年前にはブラウザだけで、すべてをカバーできると考えた。しかし、アプリが中核的な役割を果たしはじめ、モバイルアプリを作るためにレスポンスのいいAPIを用意する必要があった。リツールし、2年前に構築したAPIテクノロジーを積み上げ、これまでにやってきたものはすべて前進させた。コンシューマライゼーションの技術を取り入れ、フィードによるハイレベルのコミュニケーションを実現している」とする。

米セールスフォース・ドットコム 戦略部門エグゼクティブ・バイスプレジデント クラレンス・ソー氏

 ソー氏は、PCは1日4回しか利用していないのに、スマートフォンは1日19回、タブレットは1日12回利用している調査結果を示しながら、もっとも多く利用されているモバイルツールで、ビジネスアプリが利用できる環境が整うことを強調する。「これによって、文化が変わる。移動中でも仕事ができ、家のなかに仕事を持ち込まなくて済むようになる。しかし、朝起きて、スマートフォンを手を取ると、そこからすぐに仕事が始まる世界が訪れる」

 スマートフォンで仕事をすれば、家に仕事を持ち込まなくて済むのか、あるいは違うのか。働く人の意識によって、それは異なるのだろうが、Salesforce1は、その選択を迫るツールにはなるようだ。

新興国こそモバイルの力が発揮できる

 一方、オバマ政権で、米国初の連邦情報統括官(Federal Chief Information Officer)を務めた、米セールスフォース・ドットコムの新興市場担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのヴィヴェク・クンドラ氏が、日本人プレスを対象にインタビューに応じた。クンドラ氏は、世界最大規模のIT組織という言い方ができる米政府において、800億ドルを超えるハイテク分野への投資を統括管理してきた経験を持ち、「Cloud-First」政策の提唱者でもある。

米セールスフォース・ドットコムの新興市場担当エグゼクティブ・バイスプレジデント ヴィヴェク・クンドラ氏

 クンドラ氏は、セールスフォース・ドットコム入社への経緯について触れ、「政府CIO退官後、ハーバード大学で、自分がなにをやりたいかを考えた。その結果、一般の人たちの生活に影響を及ぼす仕事をしたいと考えた。その頃、セールスフォース・ドットコムのことは詳しくは知らなかったが、マーク(=ベニオフCEO)と会って話をすると、将来に関するビジョンで合意するところがあった。クラウド、ソーシャル、モバイルが、世界をどう変えていくのかという点でも同様の意見であった」とし、「その意思決定は正しかった。セールスフォース・ドットコムは、もっともイノベーション力を持った会社である」と表現した。

 また、日本の市場についても言及し、「日本の経済環境については楽観視している。私が過ごしたインドやタンザニアで、圧倒的なフランド力を持っていたのはソニーやキヤノン。米国でも同様だった。私の父は、自動車はトヨタカムリしか買わない(笑)」としながら、「アベノミクスで競争力をつけようという取り組みは理解できる。だが、競争力を持つためには若い人のクリエイティブなエネルギーを解き放つことが大切である。いまの問題よりも、これからどうなっていくかだ。過去10年の日本の状況は厳しかったが、これからの日本が、この10年を乗り越えていくことに期待している」とした。

 さらに新興国については、「70億人の世界人口のうち、先進国の構成人口はわずかである」と前置きし、「だが、ハイチでは65%がモバイル端末を所有している。家族という単位でみれば、100%に達している。モバイル技術は、取引の仕方を変え、ビジネスの手法を変革させるものになる。これが、リ・インベンションである。少数の人が、世界を相手にビジネスをすることもできる。ここにSalesforceの技術を生かすことができる」とし、新興国こそモバイルの力が発揮されると強調した。

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